5話
「バイク便の併用はちょっと無理だな。瑠璃も事務に専念させたいし。求人出すよ」
「そうして頂けるとありがたいです」
「仕事も増えたし」
「社長さん、お給料もアップしてあげて下さい」
「考えておきます」
中距離トラックに乗るようになり、給料も上がった。何より精神衛生上とても良い日々を過ごしている。都内まわりで身も心も疲弊していた初期の頃より、仕事が楽しくて仕方がない。
「まだ入ったばかりなのに、最近給料上げて頂いたのでこれ以上望むとバチが当たります」
「そうかそうか。待遇がいいか。そりゃそうだろう」
敏生は得意気に女性を見ながら話す──瑠璃が鼻を伸ばした顔が気持ち悪いと言っていたが、本当に伸びているように見えた。気持ち悪いとは思わないが、あんな顔で女性と話してる男は残念である。
「お父さん、そろそろ準備があるんで帰ります」
「あっ、ごめんなさい。遅くまでどうもすいませんでした。とてもアットホームな職場で羨ましいです。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ長いお付き合いよろしくお願いします」
敏生は深々と頭を下げる。つられるように拓哉も頭を下げた。これからは、静岡ルートの時は少しバタバタするかもしれない。荷物も、神経を尖らせて運ばないと信用を失うだろう。彼女を駐車場まで見送り、家路に着いた。何もない部屋に帰っても寂しさは今はない。仕事も順調だし、瑠璃との関係も良好と言える。ただ、ベースボールキャップの彼女の事だけが一つ棘のように心に刺さっていて、突然不安感に襲われる事があった。ファミレスで話し合いをして一週間が経つが、まだ連絡はない。別日にホテルに行こうと言われたが、連絡は今のところない。なければないで何かよからぬ事を考えているのか、或いは、もう他にそういった関係の男が出来たか──。拓哉は、後者である事を切に願う。彼女にはそこまで悪い事をしたという自覚はないが、傷つけた事には変わりはない。刑務所を出た瞬間から、もう悪戯に他人を傷つけたりする事はやめようと心に誓ったはずだが、人と人が関わると想像の一つ上を行く事ばかりだ。そんなつもりでなくても、深刻化する事も多々ある。今回の事も、例の事件の事も。
『今電話大丈夫?』
スマホにメッセージが届く。瑠璃からだ。




