3話
「お父さん、彼女いるのにデレデレしてほんと気持ち悪い」
「デレデレしてる? 普通の対応だと思うけど」
「鼻の下伸ばしてさ。気持ち悪いよ。男って」
拓哉は伝票を瑠璃に渡す。社長が来月から全てスマホのアプリで行うと言っていた。無くしたり、破けたりする事もこれからはない。瑠璃が言うにはそういう発想自体、若い女がいる証拠だと言っていた。紙のコストダウンにもつながるとしたり顔で言われた時は心から引いたとボヤいていた。
「拓哉っ! ちょっと来いよ」
「はい。今行きます」
社長に呼ばれて行かない訳にいかないし、ずっとキッチンにいる事自体不自然だ。
「ちょっと行ってくる」
「ムカつく」
瑠璃が腕を掴んで離さなかったが、振り解いてテーブルへと向かう。
「遅かったじゃないか。伝票無くしたのか?」
「そっ、そうなんです。すいません。でもありました」
「そうか。とりあえず、こちら代官山で紅茶とかハーブティーを取り扱ったお店をされてる」
「そうなんですね。オーナーさんですか?」
彼女は照れくさそうに前髪を整える。この間も真正面から見た彼女の顔に懐かしさを感じていた。何処かで会った事があるといった曖昧な記憶ではなく、子供の頃、縁日で初めて食べたりんご飴の甘さのような、今でも覚えている確かなものような感覚だ。彼女が特別綺麗だからそう感じただけだと言い聞かせた。ホスト時代の性が抜けきらないのもあるはずだ。
「これからうちに配達をお願いしたいそうだ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「いえいえ。誠実そうな会社ですし、お願いしようかと」
話しによると、荷物をほどくと商品の箱がへしゃげていたり、あり得ない損傷があったりして困っていたと話す。
「よく動画サイトでもありますよね」
「そうなんです。証拠はないですが、おそらくそうかなと」
「何の話しだ?」
社長の敏生だけ蚊帳の外である。拓哉は最近の配達事情を説明した。
「そんな事ありえないだろ。荷物を投げ捨てたり、蹴ったりするなんて」
「社長、ありますよ。見た事あります。ほら、隣駅のB配送とか」
「B配送は忘年会とかやった事あるぜ。そんな会社じゃないけどな」




