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11話

 

「今回の事は関係を続けるなら許すわ。あの子にも黙っててあげる」


 彼女に許しを請う必要もない。何故そんな上から目線なのかも分からない。自身とのセックスをそう簡単に手放す事など出来ないと思っているのか──。



「結局、過去をバラすとか言って脅したじゃないか? 今回もそれをネタに瑠璃に言いつけるんだろ?」


「瑠璃? 瑠璃って名前なんだ。16歳でしょ? 自分が何やってるか分かっての? 淫行よ! 淫行!」


「けっ、結婚しようと思ってるんだ。だから淫行じゃない」



 彼女は馬鹿にしたような高笑いをする。周りの客が注目するぐらい大きな事で──。



「結婚? あなたが? 殺人の前科があるあなたが? 笑わせないでよ」


「夢さ。ささやかだけど、夢を見る権利ぐらいあるだろう?」


「ないわよ! ないない」



 彼女は右手を大きく振る。まるで臭いもの嗅いだ時のように。



「すっ、すいません。アイスコーヒーをお持ちしました」


「……」


 店員が入るタイミングが分からず、立ち往生している事に気づいていた。間髪入れず、全てに否定的な攻撃ばかりを受けていると、低姿勢でいる事が馬鹿馬鹿しく思えた。



「関係の清算には慣れたもんだろ? 今までだって愛人契約を何度も破棄したりされたりしてきただろうし」


「こっちから願い下げがほとんどよ」


「この間、手切れ金受け取ってたじゃないか? 他にもいるんじゃないのか?」


「いないわよ。あなたと出会ってからはない。だから、あなたもその子供なんとかしなさいよ」



 ”子供“とは瑠璃の事だろう。その言葉に怒りを覚える。瑠璃はこんな理不尽な事は言わないし、人の弱みにつけ込むような事は言わないし、やらない。


「瑠璃は脅迫なんかしない。あいつはそんな事はしない」


「あの子の何を知ってるの? 16で30後半の男と付き合う時点でおかしいと思わなきゃ」


「何もおかしくない。愛し合ってる事は間違いない」


「その子供呼んで3人で話しをしようよ。それがいいわ」



 そんな要求には断じて応じられない。瑠璃は今日の事は知らないし、会っている事自体に嫌悪感を示すだろうから。ましてや、3人でこの不毛なやり取りや時間を過ごさせる訳にはいかない。

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