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6話

 

 六畳一間のアパート──リサイクルショップで買った白い1ドアの冷蔵庫から缶ビールを取り出す。半分ほど一気に飲み干した。喉が渇いていた訳ではない。ただただ自責の念に駆られていた。前科者という足枷がなければ、もっと幸せなはずだと──。実際は無実の罪で服役した訳で、何をどう後悔すればいいのかも分からない。色々な本や、歴史上の人物の格言、座右の銘等、頭では理解して当てはめるが、問題が直面すれば何の役にも立たなかった。生きるという事は”欲“とどう付き合い、向き合っていくのかである。持ちすぎても無さすぎても駄目だ。もっとお金持ちになりたいであるとか、もっと認められたい訳でもない。そんな虚栄心の類ではなく、ただ瑠璃と笑っていたいだけ、ただそれだけだ。そんな些細な事も許されない罪を犯してしまったのだろう。本当に殺していたのなら──。


 拓哉は缶ビールの残りを飲み干し、右手でそれを握り潰した。何一つ悪い事はしていない。『女を喰い物にしたじゃないか』と言われるかもしれないが、それが仕事だったし、それをしないとどんどん序列が下がるだけだった。学歴も家柄も何もない拓哉にとって、あのホストクラブでNo.1になる事が生きる証だと信じて疑わなかった。


 運が悪い──そうであるなら、一体どんな事を前世で行ってきたというのか。もちろん、そういうものがあると仮定しての話しであるが、例えばあったとしても、それを知る術はない。何度も噛み砕いた”念“は、事あるごとに綺麗に再生してしまうので手に負えない。



『あなたも私をゴミみたいにすてるの?』



 ポケットの中のスマホが何度も揺れていた。根負けして拓哉は一言だけ返した。



『ごめん。好きな人が出来た』



 事実を送るしかないと考えた。本当の事であるし、別に彼女とは付き合っていた訳ではない。いつかのカレーショップで食事している時に言われた『好きな人が出来れば言ってね』という言葉を送信した直後に思い出した。



『ズルいっ! 自分だけ酷いじゃない』



 直ぐに返信された内容を見て、『話しが違う』と返そうと思ったが別の言葉を考える事にした。何度か身体を交わすうちに情が湧くのは自然な事だし、1ミリもそんな感情がなかったと言えば嘘になる。『好きな人が出来れば言ってね』という台詞も、その時、額面通りに受け止めてはいなかった。




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