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5話

 

 ホスト時代のように、瑠璃を喰い物にするつもりなど毛頭ない。いつもジャージ姿で、その美しさをひた隠しにしているが、瑠璃の魅力に気づいた男達がアプローチをかけてくるか不安で仕方がないぐらいだ。だが、そういった“想い”等も敏生には関係ないだろう。真剣に向き合っているとか、愛しているとか並び立てられても、前科者である事が全てで、愛娘には一歩も近づいて欲しくないだろうから──。仮に瑠璃の同世代で、敏生が気に入った男が現れたとしたら、静かに身を引こうと考えている。その為にも、瑠璃に入り込まないよう強力なストッパーをいつも心の何処かで探していた。


「とりあえず、今日は残業お疲れ様。明日また頼むな」


「お疲れ様です」



 タイムカードを押してアパートに戻る。いつも簡易的なシャワーを浴びて帰るが、中距離の仕事の時は運転が仕事で、汗をかく事がほとんどなかった。バイク便は肉体労働ではないが、フルフェイスのヘルメットと、会社のライダースーツを着ている為、配達が終わる度にシャワーを浴びたくなるほど汗だくである。



『……虚しいな』



 瑠璃との関係が深まれば深まるほど虚無感に襲われる。ふとした時にその闇はやってくる。勝手に去って行くのを待つのみの不毛な時間、自力ではどうする事も出来ない。アパートのドアを開ける。薄暗い室内灯をつけた時、スマホにメッセージが届いた。


『冷たいね……。ヤリ捨てなんだね』



 拓哉は、瑠璃と付き合い始めてからベースボールキャップの女とは一度も会っていなかった。何度かいつ会えるのかというメッセージが届いていたが、既読無視をしていた。何処にでもあるような身体だけの関係で、はっきりした“別れ“の言葉など必要ないと思っていた。連絡を返さない事がその答えであると察して欲しかった。拓哉はしばらくスマホの画面を見つめていた。会う気もないし、無視し続ければ諦めてくれるだろうとスマホをポケットに押し込んだ。



 いつか来るであろう瑠璃との別れ──ベースボールキャップの女は強力なストッパーである事は間違いない。二股ではないが、繋ぎ止めておくと圧倒的な孤独を回避出来ると思ったが出来ずにいた。別れの日が来ないかもしれないという密かな期待が僅かだがあったからだ。

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