4話
「社長、雰囲気変わりましたね」
「そっ、そうか? ちょっと身だしなみに気をつけようかと」
少し痩せたように感じた。無精髭を生やして、着古した作業着のイメージだったが、ホスト時代とまでは言わないが、肌色のサマースーツをそれなりに着こなしている。
「女すか?」
「……。瑠璃には内緒な」
「すでにバレてるかも」
「マジっ? あいつ、何も言わないけど」
「久々じゃないですか? 女とか」
「取引先の人だけどさ。 成り行きっていうか」
「どんな人すか?」
拓哉は詳しく聞こうとする。瑠璃に詳細を伝えようと考えているからだ。敏生は、刈り上げた頸を掻きむしっている。
「どんな人って、愚問だろ? 素晴らしい人さ」
茶を濁す敏生にさらに拓哉はさらに詰め寄る。
「素晴らしいとかじゃなくて、何歳であるとか、見た目とかの話しですよ」
「だから、素晴らしい歳下の女性さ」
「歳下ってどのぐらいです?」
「お前、結構ガッツくよな? どうした?」
「いえ、どんな人か気になっただけで……」
敏生は拓哉の耳元に顔を近づけて言う。
「25歳」
「嘘でしょっ? めちゃくちゃ若いじゃないですか? 犯罪ですよ」
“犯罪”という言葉を発した直後、敏生は気まずい表情を見せる。犯罪を犯してはいないが、拓哉は前科者である。拓哉自身も、言った直後に前科の事よりも、16歳でしかも目の前にいる敏生の娘に手を出している事に天を仰ぎたくなる。
「25歳は立派な大人す」
「おっ、おうよ……。どうだ? 女紹介しようか?」
瑠璃の顔が直ぐに浮かぶ。合コン等に行くぐらいなら瑠璃と微睡んでいたい。
「いいですよ。色々と気をつかわないといけないし」
「……。確かにな。仲良くなればなるほど色々と辛いよな。すまん」
深々と頭を下げる敏生に対して罪悪感が蘇る──フタをして大きな岩を上に乗せて閉じ込めていたそれはいとも容易く飛び出てきた。とてもじゃないけれど、瑠璃との事は言えない。かと言って墓場まで持っていく事も出来ない。今は付き合っているが、その後の事を考えると黙っている訳にはいかない。だが、口に出してしまうと絶妙なバランスで保たれていた関係性が、音もなく崩れさるのは目に見えている。




