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8話

 

 2時間ほどグアンと飲んだ。後半はほとんど釣りの話しだったが、日々の悶々とした気持ちから少し解放された気がした。殺人罪で服役していた事をグアンが知ればどういう対応になるか読めなかったし、楽しい飲み会に水を差す理由もないので黙っていた。陽気で優しいグアンでさえ、そのままでいてくれる可能性は極めて低いと想像する。それほど罪深い事だ。本当に殺していればの話しではあるが──。ただ、世間的には本当の事にはそれほど興味はない。いや、そんな深くまでは追求しないものだ。目の前にあるもの、紙面に出るもの、或いはネットに流れるもの、それが真実で、絶対的なものである事は理解しているつもりだ。だからこそ、自分を知るものに、それでもそばにいてくれる人に依存していくのは必然だった。



 店を出てグアンは早々に帰って行った。まだ夜の9時前だ──拓哉はまだ残暑が厳しい夜の商店街を歩く。開閉式のアーケードではなく、淀んだ空気が商店街全体を更に蒸し暑く感じさせている。近年、ショッピングモールやコンビニの増加で閑散とした商店街は、ホスト時代と現在を表しているようだった。拓哉は立ち止まり、スマホを取り出して履歴から瑠璃を探す。



「……。」



 深い溜息がこだましそうなほど人気がない。拓哉はシャッターの降りている店の横に置かれたガチャガチャに近づく。



「このキャラ、集めてるとか言ってたな」



 拓哉はマジックテープの黒いコインケースから100円玉を取り出した。



「確か、緑色のがまだ持っていないとか言ってたな」



 拓哉はレバーを回す前に賭けをした。一発勝負で、もし仮に緑色のキャラ付きキーホルダーが出たら、瑠璃に全てを話そうと──。


 拓哉は勢いよくレバーを回した。“ガチャガチャ”と大きな音を立てて丸いカプセルが出てきた。



「……嘘だろ。出ちゃったよ」



 緑色が出た。カプセルも緑色で、告白の後押しをしているように感じた。些細な事だが、最近では一番と言っていいぐらい嬉しい出来事だ。拓哉は勢いそのままに瑠璃に連絡した。



「……」



 8コール目で瑠璃が出た。



「……もしもし?」


「あっ、あのさっ! 出たんだよっ!」


「何が出たの?」


「一発で出たんだっ! 欲しいって言ってた緑色のガチャガチャ!」



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