6話
「タクヤ、トラック」
「ん? 大型免許持ってないよ」
「ナクテモダイジョウブ」
話しによると、中距離のドライバーがいないと社長である敏生が言っていたようだ。
「聞いてないけどな」
「シャチョウ、タクヤシンパイシテル」
「心配? 何かやったかな? 記憶にないけど」
バイク便のみだと月給も安い──中距離だと今の倍とまではいかないが、10万円は多くもらえる。グアンに誰かいないか相談していたらしい。拓哉に相談しないのは敏生の優しさだった。交流が広く深くなると、それだけ他人と関わる事も多くなり、懸念している事が明るみになる可能性があるからだ。目の前で焼き鳥を食べているグアンも、例の件は知らない。
「チュウキョリラク。ヤッテミテ」
新しい4tトラックがガレージにあった事を思い出す。新車でドライブも兼ねての配達は気分転換になると少し憧れていたところだった。
「明日、社長に言ってみるよ」
「タクヤモサイキンクライ」
「そうか? そうでもないよ」
好きでもない女と“寝る”以外の欲を満たしている事は、側から見れば羨ましい事かもしれない。だが、そうしたくて選んだ訳ではない。全ては瑠璃と距離を置く為だった。皮肉にもその事がじわじわと心を蝕んでいく事になるとはその時は考えもしなかった。
今からでも遅くはない──16歳の少女に泣きつけばいい。お父さんを裏切れないから、わざとよく分からない女と関係を続けていると。正直に思いの丈をぶつければいい。
「……出来る訳ないか」
「ドウシタ? ヤキトリタベナイナラモラウ」
「遠慮しないで食べてよ」
瑠璃を愛しているのか──まともに会話をしなくなってから、毎日のように考えていた。“愛する”という事がどんな事かが分からない。今のこの感情が仮に愛だとするなら、間違いなく瑠璃を愛していることになる。女を金儲けの道具にしか見た事がない拓哉にとって、まさしく“因果応報”である。
「胸が苦しくてさ」
「ダイジョウ? クルシイ? オミズ!」
先程の店員がグラスに水を入れて持ってきた。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「ありがとう。大丈夫」




