7話
ラーメンのスープも冷房のせいもあってかすっかり冷めてしまっている。彼女がどういう人なのか一日では判断がつかないが、過去をネタにゆすられる事はないと確信した。瑠璃の時もそうだが、何処か影のあるそんな女性に立て続けに出会うのも何かの因果なのかもしれない。
「何? まさかお金とか取られるとか思った?」
「……多少は」
「まさか。私もないところからは取らないわよ。色男、金と力は何とかって言うじゃない」
「確かに。貧乏ではある」
「着ているものとかで分かるよ。服、買ってあげようか?」
「いいよ。ホストじゃないんだから」
「いいのよ。お金だけはあるんだから。何気ない未来は手に入らないけど」
彼女の一言に頷く。『何気ない未来』そんな普通の権利さえ持てないほどの十字架を背負わされている現実と向き合う日々に少々疲れていた。
「後ろついて来てた女の子、あれ誰なの」
「えっ?」
「しらばっくれて。バレバレよ」
沈黙が何よりの証拠になってしまうが、上手く返答できない。まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。拓哉は娘と嘘をつこうとしたが、謎のブレーキがかかった。
「まだ子供じゃない?」
「お世話になってる会社の社長さんの娘です」
「そうなんだ。高校生ぐらいじゃない?」
「16歳です」
「若いっ! その時は考えもしないけどさ、若いっていいわ」
「あなたも若いじゃないですか。20歳そこそこで」
「もう終わりよ。女は花なのよ。分かる? 男性諸君」
彼女は吸わないタバコにまた火をつけた。
「タバコ吸わないですね。何で火をつけるんですか?」
「分かんない。落ち着くのよ。指に匂いがつくじゃない? それが好きなの」
拓哉は瑠璃の事を考える。蒸し暑い中、1時間以上待たせている。懸念していた事にはならないという安心感からか、多少の睡魔に襲われている。
「あの子、あなたが好きなの?」
「どうですかね」
「あなたも好きなんでしょ?」
「ある訳ないでしょっ! 親子までとは言いませんが歳が離れていますしっ!」
また彼女は不的な笑みを浮かべる。その顔が妙に色っぽく目を伏せた。
「割と常識人なのね。関係ないじゃない。あの子は今すぐにでもあなたに抱かれたいと思っているわよ」




