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2話

 

 改札を出たすぐに寂れた商店街のアーケードがあり、そちらの方へと歩いている。右側のポケットが振動で揺れた。


『今、お尻見てなかった?』



 瑠璃からのメッセージが届く。振り返ると、例のジャージ姿でこちらを見ていた。拓哉は立ち止まらずに歩き続ける。瑠璃も白いベースボールキャップを深々と被り、少し離れて尾行している。



「大丈夫? もうすぐよ」



 先頭を行く彼女が振り返る。着いて来てるかが心配になったのかどうかは分からないが、何歩か歩くと振り返っては話しかけてきた。



「ここはね、地元なの。2年ぶりぐらいに帰って来た感じ」


「そうなんですか」


「桐敷さんは生まれは何処?」



 返答に困る。正直、転々としていたし、一つの場所に長くいなかった。生まれどころか、母親の顔もよく思い出せないでいる。


「多分、東京です。おそらく」


「何それ。ウケる」



 駅から5分ほど歩いただろうか、寂れた商店街をくぐり、反対側のアーケードを出た。


「ここよ。落ち着いて話せそうでしょ?」



 案内されたのは、場末のスナックであった。築何十年かは分からないが、年季の入った長屋の一角に“シンドローム”と書かれた黒い看板が見えた。夜の帷に怪しげに光るピンク色の看板にホスト時代の己の姿を見た気がした。女が先に中に入る。ずっと隠れていた瑠璃が出てきた。



「あの人、何回も振り返るから隠れてたよ」


「確かに。途中で気配を感じなくなった」


「とりあえず、入って。近くにいるから」


「分かった。隙を見てメッセージするよ」



 拓哉は何度も回した事で金のメッキが剥がれたドアノブに手を当てた。



「いらっしゃい」


 店内は薄暗く、とても狭い。大人5人ぐらいが座れば箱詰め状態になるL字カウンターの中にベースボールキャップの女がいる。



「何か飲む?」


「いや、ここは?」


「ここ? 実家よ。お母さんは今蒸発中」


「どういう事? 意味が分からない」



 話しによると、しばらく店をお願いしたいと連絡があったらしい。


「勝手よね。2年ぶりの電話だったかな。突然かけてきてそんな事言うのよ」


「……分かります。母親ってどこもそうなんですかね」

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