17話
「何て書いてあるの?」
事務所の蛍光灯が切れかかっていて、メールをチェックするという普通のシュチュエーションなのに、妙な緊張感を与えている。
「やばくない?」
瑠璃がスマホを覗き込んで見ようとしたが、スマホをポケットに押し込んだ。
「何? どうしたのよ」
「あなたの正体知ってるんだから、無視しないでよって」
「えっ! えっ! どういう意味?」
拓哉は瑠璃に説明した。この間、仕事で出会った女性の事について。
「さっき電話かかってきたんだ。商店街歩いてたら」
「出たの?」
「出た。そしたらその人だった。たこ焼き買わなきゃと思って直ぐに切ったんだ」
「邪気にしたからかな。ていうか、モテすぎじゃない? どうなってんの」
何も持っていない拓哉にとってルックスはこれ以上ない武器である。イケメンというのは、目鼻立ちが良くてそこそこ背が高ければ成立するが、拓哉には独特の“色気”というものがあった。それは本人には分からないもので、女性ならほとんどが感じるであろうセックスアピールという名の鎧を纏っていた。
「何で、バレたんだろう?」
「拓哉の事が気になったから検索したんでしょ。私もしたし」
「仕方ないよね。それは。いつかは誰かにそうされると思っていたし」
「デジタルタトゥーとか言われてるわ。でも、かなりスクロールしたけど、なかなか例の記事には辿り着かなかったわ」
「じゃあ、相当調べたって事?」
「そうなるわね。でもいいじゃない。その人にバレたところでさ」
瑠璃の言う通り一度しか会った事ない、しかも仕事関係でもう二度と会わないような関係性の女だ。臆する事などないはずだが、決して気持ちの良いものではない。何より、彼女は一体何がしたいのか謎であった。
「前科をバラすって意味かな?」
「分かんないけど、彼女的には拓哉につけ込む絶好の材料を見つけたって事なんでしょう」
「抱いてほしいって事?」
「抱いてほしいというより、とりあえず会いたいんじゃない?」
ホスト時代の思考が抜け切れずにいた。女性の性に対する欲は、男の比ではない事をあの頃に身をもって体験済みだ。たまたま縁のあったお客達がそうだっただけかもしれないが、積極的な女性は大体が性欲お化けだという固定観念を拭えないでいた。




