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15話

 

 敏生には返しようもないぐらいの恩がある。面会にも何度も来てくれた。励ましの言葉も数えきれないほどもらった。思えば、人生の半分以上世話になっている敏生に対して、一番やってはいけない事ではないかと思った。目の中に入れても痛くないほどの一人娘を、ましてや人殺しの前科があるような人間に髪の毛一本触れて欲しくないはずだし、2人で飲んだ時にも言われた。『瑠璃には手を出すなよ』、『仮にあいつが惚れるような事があってもだ」と。それは当然の事だと理解したし、恩を仇で返すような事は人として仁義に反するとその時は思った。しかし、瑠璃に対するこの気持ちがはたして恋というものなのかは分からないが、かけがえのない存在になりつつあるのは間違いない。



「20代の拓哉なんて関わってしまったら……」


「関わってしまったら?」


「私も正気じゃいられないと思うし、独占欲を止められないと思う。今でも十分だけど」



 最後の言葉が口籠っていて聞こえ辛かったが、どんな事を言ったのか理解できた。仮に前科がなかったとしても、相手は16歳だし、完全に犯罪である。30代半ばの中年など、どんな親でも大反対するはずだし、あってはならないのだ。



「その相手の人も私ぐらいの年代だよね?」


「うん。17歳」


「鬼畜だよね。控えめに言っても」


「すいません。あの頃は何も考えてなかった」


「バチが当たったのよと言いたいけど、強烈すぎるバチだしね」



 因果応報──そんな言葉さえ知らずに生きてきた。皮肉にも刑務所の中で知る事になる。沢山の本は読んだが、その言葉がとくに胸に刺さった。何より、今置かれている状況の意味を知りたかったし、納得したかった。



「ひとまわり以上歳下の私が言うのもなんだけど……」


「何?」


「前を向いていくしかないよ」


「……。そうだね」


「だって生きてるんだし、その人はたこ焼きを食べる事さえできないし、中年でもカッコいい拓哉を見る事もできなんだから」


「……」


「ていうか、私が『前を向いて』とか一番人生で使った事ない言葉でびっくりしてる」


「瑠璃ちゃん、面白い」


「お父さんも凄く嬉しそうなんだ。最近」




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