14話
瑠璃の化粧直しは想像以上に長く、その間に要らぬ妄想とあの事件の真相を事細かく話したい衝動が頭の中を支配していた。瑠璃も察してくれているのか、あまりその件についてふれてこないこれまでだった。話したところで、無罪になる訳ではない。他人に荷物を背負わせるだけになるかもしれない。それでも瑠璃には分かってほしかった。自分は無実であると。
「もう完全にメイク落とした。口紅しか持ってきてなくて」
拓哉は目を奪われてしまう。鋼の鎧を纏ったような雰囲気から一転、生まれたままのその素顔はとても16歳のそれとは思えないほど大人で美しい。
「大人だよね。とても16歳とは思えないよ」
「ちょっと拓哉、本当にホストだったの?」
「何で?」
「何でって、歳より老けて見えるって事でしょ?」
「そっそうじゃないよ。化粧してるより綺麗だなって」
「老けてる?」
拓哉は返答に困ったが、『老けているというより大人びている』と言おうとしたが、それはつまり“老けている”という事に気づいた。
「老けてる?」
「老けてないよ。そのまま16歳かな」
「それも何か嫌だ!」
「どう言えばいいんだ」
拓哉の苦笑いに瑠璃は微笑んだ。ただ困らせたかっただけなんだろう。瑠璃悪戯な笑顔が抑えていた気持ちを加速させた。
「瑠璃ちゃん、話し聞いてくれる?」
「いいよ」
神妙な面持ちの拓哉を見つめる瑠璃。一言一言丁寧に分かりやすく話した。どんな小さな事でも嘘はあってはならない。ありのまま、そのままを瑠璃に伝えた。
「うちの運送会社、あそこの車じゃなくて良かったわ。絶対、一生買わないんだから」
「社長が気を使ってくれてじゃなくて?」
「お父さんの友達が別の車の営業マンなの」
「そうなんだ」
「お父さんの友達がその会社の営業マンだったとしたら、拓哉の事があってもそこで購入してると思うわ」
敏生がそういう男である事は十分承知していた。義理人情に厚く、思いやりがある素晴らしい人格者だ。犯罪者である自分の事もこうして面倒を見てくれている。拓哉はふと我にかえった。




