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2話

 

 何故瑠璃がそんな事をするのか──理由は一つしかない。ユリとの関係に気づいている。それも確固たる証拠や物証があるはずだ。瑠璃は勘のいい子だ。少しの心の移り変わりに敏感に気付いているはずだ。直近の瑠璃とのコミュニケーションで何か間違いがなかったか記憶を辿るが、スマホの向こうの濁声に掻き消された。



「お前から借りたらポイント2倍って訳じゃないし、誰からでもいいんだよ」


「いくら借りた?」


「おっと、それはプライバシーの侵害だろ?」


「大した学もないくせに、ふざけた事言ってんじゃないよ! ユリは関係ないだろ!」



 怒りが収まらない──この感情こそが一番間違った判断をさせるものである事は知っている。母親に“学がない”と喚いたのはいいが、そのままブーメランのように返ってくる可能性がある。それを最小限に抑える方法はただ一つしかない。それは“我慢”だ。曲がりなりにも刑務所内で色々な本に出会ったおかげだ。何故なら、今この瞬間にそれを思い出す事が出来た訳だから。



「良い女だね。お前の女だろ? そして、あの事務員にも手を出していると私の勘ピューターが言ってるよ」



 図星ではあるが、そんな事よりユリに何を言っていくら借りたのかを聞き出す事が先だ。



「とりあえず、会って話そう」


「いいよ。私もこう見えて忙しい身でね」


「どういう意味だよ?」


「1時間、3万円でどうだい? 知りたい事が山積みだろ? 私はどっちでもいいけどね」



 本当に母親なのか、腹を痛めて産んだ子に対しての台詞とは到底思えなかった。お金が人を変える訳ではない、この人は生まれつきこういう人なんだと割り切るしかない。



「分かった。何処に行けばいい?」


「そうだね、出血大サービスだよ。お前のアパート近くに商店街があったろ?」


「あるね。ほとんどシャッターが閉まってるけど」


「いや、一件あるじゃないか。昔ながらの喫茶店がさ。薄汚れた」


「あとりえか?」


「あの店、あとりえっていうのかい。そこにしよう。1時間で行くよ」


「分かった。とりあえず、ユリにいくら借りたんだ? それはユリに返してくれ。こっちでそれも払うから」



 母親は魔女のような薄気味悪い声で笑った。

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