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5話

 

「いっいや、苗字が違うじゃない」


「変えたの。川嶋の力を借りたくなかったから。本名は川嶋ユリよ」



 雷に打たれたような衝撃が拓哉を襲った。まるで、バラバラだったジグソーパズルが瞬時に完成してしまったような感覚──。



「それでか……」


「何が?」


「初めて会った時に、何処かで会った気がしたから」



 ユリは言う。「桐敷さんが気になって色々検索したのよ」



 拓哉が若い頃にはなかったスマホ──刑務所を出た瞬間から頭にあった。どれだけ目立たなく行動しても無意味な世界であると。大切な人、大切な場所、大切なものが沢山出来れば出来るほど怯えて生きていかなければならない事は百も承知だったが、まさかあいりの姉と出会い、好きになるとは思ってもいなかった。



「桐敷さんが話してくれた事が真実だと思う。妹は殺されたんじゃないって知ってたから」



 当時、祖父である会長、父親である社長の話しを聞いて知っていたとユリは語る。警察の話しでは、自殺、あるいは無理心中の可能性が極めて高いと。気が収まらない二人は、権力をふりかざして殺人罪に追いやった。その話しも当時盗み聞きしたと語る。



「……何とも言えないな。分かっていたけど、改めて聞くと複雑だよ」


「私、あいりから聞いてたから。好きな人がいるって」



 ホストである事を姉であるユリにだけ話していた。両親に話したところで一蹴されて終わりだし、八方塞がりだと。



「好きな人と死ぬのって言ってたけど、その時は信じなかったわ」


「冗談だと思うよね」


「そうよね。でも、いつも寂しそうだった。あの子も私と同じなのよ」


「何が?」


「川嶋自動車の娘って事で、良い意味でも悪い意味でも色眼鏡で見られてきたから」



 あいりは自分が川嶋自動車の娘である事は一言も話さなかった。聞いていれば、あの頃に拓哉ならお金をもっと引き出させていたはずだ。普通の女子高生にしては金まわりがいいとしか思っていなかった。“売り”をしているかもしれないと思った事はあったが、それならそうと願ったり叶ったりだと──。



「ホストには絶対に近づかないでいよう」


「何かごめん」


「何で謝るの? 謝らなければいけないのはこっちの方だわ」

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