三人の絆
僕は傷だらけのためシルフィーに跨り、王宮まで歩いた。
王宮に着いてすぐ僕は手当てされた。優しそうな雰囲気のおじさんで、安心して手当てを受けた。
手際よく素早く手当てをされたからか、痛みはあまり感じなかった。鏡で確認すると、ほとんど包帯だらけでびっくりした。
また別の場所に連れて行かれるようで、僕はおじさんの後ろに隠れた。すると、おじさんも一緒に着いてきてくれることになった。
見慣れない広い廊下や豪華な装飾を見てドギマギしていると、おじさんが手を繋いでくれて落ち着けることが出来た。
今度は沢山のメイドがいる部屋に案内され、おじさんに近くにいてもらいながら、着替えや髪を整えられたりした。皆満足そうにしていた。
メイド達にお礼を言ってその場を離れ、またおじさんと手を繋いで、案内される。ドアから分かる豪華な装飾の数々におじさんの手を強く握り、立ち止まる。
おじさんが僕に笑いかけながら扉をノックし、中の兵に確認を取って部屋に入る。僕も恐る恐る中に入った。
これまた華やかな部屋で女性二人とリリアナ姫がいた。リリアナ姫は僕を見た途端、にこにこしながらこっちに歩み寄ってくる。
王家の人はどうにも苦手でついおじさんの後ろに隠れたが、おじさんが僕を押して、自己紹介を促す。
「はじめまして。僕はシュリヒト・ヴィレイン・シュテルケと申します。」女性二人に向けて挨拶。
「あらーそうなのね。私はこの子リリアナの母ディアナ。よろしくね。」
「私はキースビア、レナルドの母ソフィアよ。仲良くしてね。」
やっぱり公妃だからか、二人ともオーラがあって、あまりにも僕を見つめてくるもんだから、再び僕はおじさんの後ろに隠れた。
僕の母親とその父親がこの人達に何度も暗殺者など送ったり、毒を仕込んだりしてたらしいから、あまり僕をよく思わないだろう。
そんなことを考えていると、窓の外に潜んでいる何かの気配を感じた。大方母親が送った暗殺者だろうと思い、この部屋に公妃達を囲う大型の防御結界を張った。
それと同時に暗殺者を仕留めるために後ろにあるドアからこっそり出た。
ドアの外で待機している騎士達には、ないしょのポーズをして急いでその場を離れた。
僕はこの世界に来て、まだ試してないことがある。それは、人を攻撃するということ。前世怪我をさせられていたものの、自分自身人に致命傷を負わせる怪我をさせたことはない。
この世界では暗殺者というものが存在し、平気で人を殺していく。そんな奴等に狙われたら今の僕では甘さに足を救われ、あっという間にご臨終。
この世界で長く生きることができない。ましてや僕は僕自身を大切に思って守ってくれる大人や命をかけて守ってくれる護衛などいない。いざというとき守られるばかりじゃ駄目だと心に固く決めた。
正直、僕を狙っているわけではなさそうだから今回の暗殺者は殺さなくてもいいんだけど…。
暗殺者は三人。一人を肩車して、窓から中を伺っていた。こんな昼間っから動くなんて、なんて馬鹿な暗殺者集団なのかと思ったが、おそらく母親が送ったものだと思うと納得だ。
でも、よく見ると暗殺者の肩車されてる一人は、ガタイのいい二人に比べ、圧倒的に小柄というか…子供?背丈的に…間違いなく子供だろう。それにしては動きに迷いがない。小さな頃からこの仕事をしていたとみる。
無音結界を僕含め暗殺者を囲むように展開し、物体化させる。普通の結界では結界から出ようと思ったら出られるから。
それにいち早く気付いたのは子供らしき暗殺者。
「そこで何してるの?不審者。」
「…な、誰だてめぇ。」
「見られたからには坊っちゃん…ん?嬢ちゃん?…と、とにかく生きて帰れないからね。」
「…チッ。子供かよ。勘弁してくれ。」
一人は細見で一人は細見より少しガタイのいい感じの男達。
「ねーねーそこの細みのおじさん。そんな警戒しないでよ〜。ふふっ。僕ね。今ね。暇なの。遊び相手探してたの。だから遊んで。」
「…。かっ…。じゃー遊んだら黙っててくれるの?」
「おいハリク、ふざけんな。正気か?子供の相手してる場合じゃないだろ!この任務に失敗したら…。」
「……。」
「残念だけど、君達はこの任務遂行不可能だから。命が惜しいなら…僕に従ってくれるなら君達をギルドから買ってあげる。…そんなことより早く遊ぼ。暇。」
「…。それは分からないよ?それに俺達を買うなんて、随分思い切ったことを言うね。」
「子供だからって何言っても許されると思うな。俺達は今すぐお前を殺すことだって出来るんだからな。」
「君、自分が偉いとか勘違いしてんじゃねぇの?貴族か何かしらないけど、調子に乗るのもいい加減にしなよ。」
「んー。じゃー何?僕を殺すの?…。あっそうだ!じゃあ、もし僕を倒せなかったら僕に買われてくれる?いいでしょっ?」
「何言ってんだこのガキ。」
「あーあ。僕の好みの子なのに。せめて苦しまずに殺してあげる。」
気絶させようと僕の側に走り寄り、手刀を叩き込もうとする男。僕は物理防御結界を自分に展開する。
手刀が結界に跳ね返され、怯んだ男。その隙を見逃すことは勿論なく、身体強化で返り討ちにした。トドメに魔法でアイテムボックスからナイフを取り出し、首元に当ててやる。
他の二人は、その様子をポカンとした顔で見て固まっていた。
「ねぇー。僕の勝ちでしょ?買っていい?駄目?で、一人だけでいいから僕の仲間になってほしい。」
「あぁ、負けた。まさか負けるとは。貴族の癖にやるな。坊っちゃん。」
相手が負けを認めたことで、こっそり発動していた契約魔法が展開される。
「これで決まりだー!やった!」
「おい。お前何した?」
「これ、は…。契約魔法?」
「ほんっとどういうことだ。この子供。」
自慢気に契約魔法をこっそり展開してたことと、もし僕が買うのを拒んだら何かしらの罰が与えられることを伝えた。ちなみに何の罰が与えられるかは僕自身この魔法を使ったことがないので分からない。