35、結婚式
結婚式まであと2日。
王都に入り、この国の現状を知った。
貴族は何よりも優遇され、平民は食べるものにも困っている。小さな国だから、国民の負担が大きいのだろう。
それに、この国は奴隷を使うことを容認しているようだ。ボロボロの服を着て痩せ細った子供を、何人も見かけた。奴隷を使っているのは、貴族達だ。
この国は、腐っている。
「サンドラ……」
目立たないように、フードを被って歩いていたのに、私の名を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、そこにはエヴァン様が立っていた。
「エヴァン様!? どうしてここに!?」
前に会った時よりも、かなり痩せている。たった数ヶ月なのに、別人のような容姿。あんなにキラキラだったのに、容姿を気にしている様子はない。
「ロックダムとこの国がしたことを聞いて、償いたかったんだ」
まさか、エヴァン様がそんなことを思っていたなんて……
「サンドラの為を思ってくれたのは、感謝します。ですが、俺はあなたを許せません」
ジュードが、エヴァン様に詰め寄る。
「ジュード王子……ですね。許されないことをして来たのは、分かっています。信じていただけるとも、思っていません。俺は、ロックダムを見捨てましたし。ただ、2人ともこの国から出た方がいい。この国は、サンドラを利用するつもりです!」
本心から言っているのだと感じたのか、ジュードはエヴァン様への警戒をといた。
「分かっています。受けて立つのが、サンドラですから心配はいりませんよ」
ジュードの言葉に、エヴァン様はまるで憧れの人を見るような眼差しを向けた。
「……勝てそうもありませんね。最後まで見届けます」
エヴァン様はそう言って、私達の前から去っていった。
結婚式当日。
結婚式が行われる広場に、沢山の人が集まっていた。既に気付かれているかもしれないが、ギリギリまで姿は見せない。
「何があっても、俺が守るから」
ジュードは私の手を握り、力を込めた。
「ありがとう、ジュード」
ジュードの手を握り返す。
ジュードが隣に居てくれるだけで、何でも出来そうな気がする。
結婚式が始まる5分前、ジュードが変えてくれた髪の色を元に戻した。銀色に戻すのは、本当に久しぶりで、まるで自分じゃないように思えた。
「やっぱり、綺麗だ」
初めて髪の色を褒められたあの日のことを思い出す。きっとあの時から私は、ジュードに惹かれていた。
私達は、用意されている席へと歩き出した。
「王女様!?」
「王女様よ! 何て美しい……」
どうやら私は、母によく似ているみたい。
用意された席に座ると、もうすぐ式が始まるというのに、貴族達が次々に挨拶しに来た。
アンナとバーク伯爵が姿を現しても、誰もそちらを見ない。結婚式なのに、少し気の毒になって来た。
「聖女様! お会い出来て光栄です!」
皆揃って同じことを言ってくる。
自分達で王族を皆殺しにしたくせに、どうしてそんなことを言えるのか……
きっと私が全て知っていることを、この人達は知らないのだろう。
誰も見ていない結婚式が進み、国王の挨拶が始まった。
「今日は、本当に素晴らしい日だ。バーク伯爵とアンナの結婚に加え、王族であるサンドラ様がこの国に戻られた! 皆、サンドラ様に盛大な拍手を!」
結婚式はそっちのけで、私の紹介をする国王。
アンナの顔が、どんな魔物よりも恐ろしい表情になっている。
私は立ち上がり、国王を見た。そして……
「私はあなた方のしたことを、全て知っています。それでも、私をこの国の王族とお認めになるのですか?」




