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聖女の力を隠して来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。  作者: 藍川みいな


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34/37

34、決意



初めての2人きりの夜を過ごしてから、ジュードとの距離が更に近付いたような気がする。

結婚した時にはレニーとティアが居て、夫婦というより家族として暮らして来た。それも幸せだったけど、ジュードと一緒にいる時のドキドキも心地好くて幸せ。



8日でヒルダの国境に到着した。ジュードのスピードも私に合わせているからか、早くなっていた。ヒルダは王都が5つの町で囲まれている。つまり、町が6つしかない小さな国だ。

結婚式が行われる王都まで、私達なら1日で行くことが出来る。


「早く着きすぎちゃったかな」


国境の町に入ると、辺りを見渡しながら休めそうな店を探す。王都よりもここの方が情報を集めるにはいいと思ったからだ。


「サンドラが早すぎるからだ。ゆっくり新婚旅行を楽しみたかったのに」


いじけた顔をするジュード。

ジュードの方が女の子みたい。だけど、そんな風に思ってくれて嬉しい。


「帰りは、ゆっくり帰ろう」


「よく言うよ。帰りは、レニー達に早く会いたいって、サンドラは全速力で帰ると思う」


それは、否定出来ない……

レニーとティアと離れているのは、やっぱり寂しい。


「さあ! あのお店で食事をしよう!」


誤魔化すようにジュードの腕を掴んでお店に入る。

店に入ると注文をし、これからのことを話し合う。


「今日はこの町に泊まろう」


「そうだね。あまり早く王都に入っても、監視されそうだし、少しでも情報は集めたい」


招待状を見る限り、アンナの結婚相手はヒルダの伯爵らしい。

この国に入った時、結婚式が行われることは大々的に発表されていて、国民までも参加出来る結婚式だと知った。伯爵の結婚式なのに、随分大事(おおごと)になっている。


「俺も結婚式行きたかったな~」

「俺もだよ。バーク伯爵のお相手は、ヒルダの王族の妹なんだってな」


隣の席についた男性2人が、アンナの結婚式のことを話し出した。私達は何気ない顔をしながら食事をし、隣の席の話に聞き耳を立てる。


「元王族が、生き残っていたとはな。ロックダムのヤツら、この国の王族を皆殺しにしやがって!」

「ロックダムは、壊滅したらしいな。自業自得だ」


国民は、この国の貴族がロックダムに手を貸したことを知らないんだ……


「アンナ様のおかげで、この国に聖女が来るという話だし、また魔物に怯えなくてすむ日が来るんだな」


アンナは、私がこの国に戻ることでも約束したんだろうか……


「勝手だな」


ジュードは話をしていた2人の男性を睨みつけた。


「ジュード!?」


見つかったら困ると思って、立ち上がって男性達の元に行こうとしているジュードを必死に止める。


「……行こう」


思いとどまってくれたのか、そのままお店を出て行ったジュードを追いかける。

店の外に出ると、ジュードは私に頭を下げた。


「ごめん!」


私の為に怒ってくれたのに、謝る必要なんてない。ジュードの手を握り、笑顔を向けた。


「嬉しかった。でも、私は大丈夫。この国は、私が終わらせる」


国民が悪くないことは分かった。

だけど、この国はもう国として存在してはいけない。聖女がいないと終わってしまう国なら、また聖女を求めて悲劇が繰り返されてもおかしくない。


私はこの国で生まれたわけではないし、この国に関わって生きて来たわけでもない。それでも、この国の王族としてやらなければならない。



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