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聖女の力を隠して来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。  作者: 藍川みいな


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33/37

33、初めての夜



「今日はこの町で休むか。今回は、部屋は1つでいいよな?」


少し意地悪な顔をしながら、確認してくるジュード。結婚してから、私達はまだ1度も2人きりで寝たことがない。毎日レニーが私のベッドに入って来るから、2人きりの時間は滅多になかった。


町に入ると、沢山の冒険者で賑わっていた。

この町には冒険者ギルドがあるらしい。


「冒険者ギルドに、寄ってみるか?」


「行きたい!」


お店を開いてからは、依頼を受けることがなくなっていたから、ギルドに行くのは久しぶりだ。

ジュードは、強い魔物討伐の依頼だけ受けていた。アットウェルには結界が張ってあるけど、元々アットウェル国内に住んでいた魔物は国の中にいる。王子をやめても、国の為に頑張るジュードを誇らしく思う。


ギルドに入ると、リバイの冒険者ギルドと変わらない雰囲気で、少し安心した。場所は違うけど、何だか懐かしい。


「ハリアルの冒険者ギルドへようこそ! どのようなご用件でしょうか?」


話しかける言葉も同じなんて、マニュアルでもあるのか……


「私達は既に登録しているので、気にしないでください」


お姉さんは返事をした私ではなく、ジュードのことをじっと見つめている。


「あの……もしかして、ジュードさんですか?」


お姉さんの目が、ハートになってるように見える。


「そうだけど?」


「やっぱり! レッドドラゴンを倒した英雄!! 私、大ファンなんです! 」


今度は目をキラキラさせるお姉さん。

他にもドラゴンを倒していたんだ……


お姉さんが大声で言ったから、ギルドに居た冒険者達がいっせいにジュードを見た。


「……サンドラ、出よう」


「そうね」


結局、ゆっくりギルドの中を見ることは出来なかったけど、ジュードは凄いのだと再認識出来た。


ギルドを出て宿屋を見つけ、部屋を一部屋とった。部屋に入ると、ジュードが後ろから抱きしめてきた。


「……ギルドをゆっくり見られなくてごめんな」


ジュードはいつも私のことを考えてくれる。


「いつでも行けるんだから、気にしないで」


王子としてではなく、冒険者として認識されていた。しかも、英雄。

身分なんて関係なく、ジュードが認められている証拠。

こんなに素敵な人が、私の大好きな旦那様なんだ……


「今、何考えてる?」


私の心の声、聞こえてないよね……?


「あ、明日のこと……かな」


抱きしめてる腕が、少しだけ強くなる。


「嘘つきだな。惚れ直したんだろ?」


ジュードには、隠し事なんか出来ないみたい。


「そうだよ。私は毎日、ジュードに恋をすると思う。大好きで大好きで……凄く幸せなの」


ジュードは私を抱きしめる腕を緩めると、自分の方に向かせた。


「素直でよろしい……」


そう言って、優しくキスをした。


この日、私達は結婚してから初めての、素敵な夜を過ごした。




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