31、結婚!?
無事に結界を張り終えて、我が家に帰って来た。
玄関を開けて中に入ると……
「遅かったな」
「え……え!? どうして!?」
ジュードが出迎えてくれた。
まるでずっと一緒に暮らして来たかのような彼の態度に、私はホッとした。
「宿屋のおばちゃんが教えてくれた。ちょっと留守の間に、まさか家を買ってるとは思わなかった」
ずっと会いたかったジュードが、いきなり現れてびっくりしたけど凄く嬉しい。
ロックダムが嫌いだったとはいえ、あの国が魔物の国になってしまったことは少しだけ悲しい。アリーとの思い出の場所も、なくなってしまった。
「ジュードのおかげで買えたから、ジュードの家でもあるよ」
ドラゴンはジュードが倒したから、報酬はジュードのおかげで貰えた。
私の言葉に、ジュードは笑顔を浮かべた。
「俺の家でもあるのか……それなら、良かった。
これからプロポーズしようと思ってるから、受けてくれたらそのまま俺も住めるな」
今……なんて?
プ、プ、プ、プ……
「「プロポーズ!?」」
隠れて話を聞いていたレニーとティアの声がハモった。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんは、結婚するの?」
レニーは目を輝かせながら、私達を交互に見てくる。
「我は認めません!」
ティアは少し不貞腐れているようだ。
この状況でプロポーズは、無理なんじゃ……
「うるさいぞ、お前ら! 俺はサンドラが好きだ! 大好きだ!! 一生守ることを誓う! 文句あるか!?」
2人がいるのに、大声でそんなことを言われて、恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
ジュードはお構いなしに、私の手を取った。
「返事は?」
目を真っ直ぐ見つめながらそう聞かれて、こくんと頷いていた。
「よっしゃーー!!!」
聞いたことがないくらい大きな声で喜ぶジュード。変わったプロポーズだったけど、ジュードらしい。
「でも、ジュードは王子様だよね? 私なんかでいいの?」
私はもう、令嬢じゃない。
暗い顔になる私の手をジュードは握りしめ、その手を引っ張った。そして、気付いたらジュードの胸の中にいた。
「父上には、許可をもらった。俺は、王子をやめてきた」
「王子をやめたって……」
「俺はただの冒険者ジュードになった。勘違いするなよ? これは俺がずっと望んでいたことだ。 そしてこれからは、サンドラの夫だ」
ジュードは、ずっと冒険者としてこの国の人達を守って来た。王子の身分がなくなっても、それは変わらない。逆に言えば、王子のままでも良かった。王子の身分を捨てたのは、きっと私の為。
私に気をつかわせない為の、ジュードの優しさ。だから、私は何も言わない。
ジュードの胸に顔をうずめる。
「……あちちちだね」
「我は認めません!」
2人がいることを忘れていた。
ものすごく恥ずかしくなり、勢いよくジュードから離れた。
その様子を見て、声を出して笑っているジュードを私は睨みつけた。
「ジュードが、これから毎日ご飯を作ってくれるわ!」
この家で、唯一まともに料理を作れる人がいた!
「本当!? やったあ!」
「我は……許します!」
2人の喜んでいる顔を見ていると、なんだか複雑。
「……まだ料理が苦手だったか。仕方ないな」
ジュードは呆れた顔をしていたけど、頼られるのが嬉しそうにも見えた。
結婚式は、町の広場で行うことになった。
町の人達が準備をしてくれて、フーリン伯爵やラルフ、冒険者の人達にセリアさん、依頼で救った人達まで沢山の人達がお祝いに駆け付けてくれた。
「「「おめでとう!!」」」
こんなに沢山の人達がお祝いしてくれて、本当に幸せで……幸せ過ぎて、まるで私の人生じゃないように思えた。
「みんな、サンドラが大好きなんだ。俺もな」
ジュードには、私の考えていることが分かるみたい。私の旦那様は、本当に素敵な人ね。
「とっても綺麗! さすが、あたしのお姉ちゃん!」
「サンドラ様……うぅ……我は、サンドラ様の幸せなお姿を見ることが出来て感激です!」
レニーもティアも、こんな私と一緒に居てくれてありがとう。これからも、ずっと一緒だよ。
結婚式の翌日、 私達はお店をオープンした。




