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聖女の力を隠して来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。  作者: 藍川みいな


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30、ロックダムの最後



―ロックダム王国の王城―


「なぜだ……なぜエヴァンは戻って来ないんだ!?」


「いい加減にしてください! 兄上は逃げたのです!」


国王とオスカーは、王城の地下に1ヶ月もの間隠れていた。食料も残りわずか……地下から出て、この国から魔物に見つからずに逃げ出すか、このまま地下でエヴァンがサンドラを連れて戻るのを待つかの選択を迫られていた。


「もう、食料がありません。父上が兄上などを信じるから、こんなことになったのです!」


「お前が、サンドラを無理やり連れて来たのが悪いのだ! あのようなことをせず、エヴァンがサンドラを迎えに言っていれば……」


この1ヶ月間、そばにいたのはオスカーなのに、国王の頭にはエヴァンしかいない。


「父上、ここを出ましょう! 魔物の襲撃から、もう1ヶ月経っています。魔物の数も減っているはずです!」


ずっと地下に隠れていた2人は、地上の様子を全く知らなかった。この国は、魔物の住処になっている。食料も豊富で敵もいないのだから、当然のことだった。


その時、1階から物音が聞こえた。この地下は、場所が分かる者にしか見つけられない。その地下の、入口が開いた。


「ち、父上!! 助けが来たのです!」


「エヴァンか! エヴァンが戻って来たのだな!!」


ゆっくり階段を降りてくる足音が聞こえる。この足音は、間違いなく人間のものだ。

1階から降りてきたのは、サンドラの父であるオデット男爵だった。


「何しに来たのだ!? 貴様に用などない!!」


エヴァンだと期待していた国王は、期待はずれの人物の登場に声を荒らげた。


「オデット男爵、僕達を助けに来てくれたのですか?」


オデット男爵は、右手に剣を持っている。その剣には、魔物の血がベッタリ付いている。


「助け? ふざけるな。誰がお前らなど助けるか!」


虚ろな目で国王を見る、オデット男爵。


「誰に向かって口を聞いているのだ!?」


怒りが抑えきれない国王を、オデット男爵は持っていた剣で斬りつけた!


「父上!?」


腕を斬られて膝を突く国王に駆け寄るオスカー。


「き……さま……っ」


国王は膝を突いたまま斬られた左腕を押さえ、オデット男爵をキッと睨みつける。


「あんたのせいで、俺はこうなった。あんたに無理やり人を殺させられ、気味の悪い女と結婚させられ、子供まで作った。全て、あんたの言う通りにして来たのに、男爵だと!? ふざけるな!!」


オデット男爵は、魔物と戦い続けてここまで辿り着いた。1ヶ月もの間、国王を殺す為に必死で生きていた。

妻ローレンが魔物に襲われていても、助けようとはせずに見捨てた。この国に尽くして来たのに、あっさり切り捨てた国王へ復讐することしか考えていなかった。


「何を言うか! この役立たずが!!」


国王がそう叫んだ瞬間、オデット男爵は国王の胸に剣を突き刺した!


「…………ち、父上」


胸を刺された国王はその場に倒れ込み、オスカーは腰を抜かした。


「役立たず……か……」


サンドラに言った自分の言葉を、オデット男爵は思い出していた。


オデット男爵が入って来た時に、開けっぱなしにしていた地下の入口から、魔物が次々に侵入して来る。オデット男爵は持っていた剣を捨て、3人はそのまま魔物達の餌食になった。


その時、サンドラの結界がロックダムを包み込んだ。そして、この国は魔物の国となった。




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