24、今度こそ高い依頼料を
翌朝、レニー達と朝食をしていると、エヴァン様が当たり前のように、私達が座っているテーブルに座った。
朝から完璧な容姿のエヴァン様に、笑いが込み上げてきた。従者が誰もいないのに、服も髪も完璧……ご自分でやったのかと、おかしかったのだ。
「お兄ちゃん、すごぉい! 朝からキラキラしてる~!」
レニーの言葉に、いっそう笑いが込み上げて来る。必死で笑いを堪えながら、エヴァン様の顔を見ると、澄ました顔をしながらメニューを見ている。レニーに褒められて? 満更でもないようだ。
「エヴァン様は、冒険者になるおつもりなのですよね? でしたら、見た目よりも、魔法の練習でもしたらいかがですか?」
レニーがエヴァン様なんかを好きになったら、悲し過ぎる!
「あ……すまん。そうだな。思慮が足りなかった」
素直に謝るエヴァン様。少し意外だった。
「サンドラ様、今日も我とレニーは留守番ですか?」
私が依頼を受けにギルドに行くと、レニーとティアがエヴァン様と一緒に過ごすことになる。ティアが居れば、心配はないと思うけど……
「今日も留守番をお願い。
エヴァン様、一緒にギルドへ行きませんか?」
ここにエヴァン様を置いて行くよりは、連れて行った方がいいと判断した。
「本当か!?」
すごく嬉しそうな顔をするエヴァン様。ギルドまでは一緒に行くけど、そこからは別行動する。エヴァン様に合わせていたら、依頼をこなす事が出来ない。
「ギルドに登録くらいは、しておいた方がいいかもしれません」
追放された話を、信じたわけじゃない。国王様は、エヴァン様を大事にしていた。エヴァン様だけを大事にして来たから、オスカー様の性格が歪んだのだろう。
「そうだな! 支度して来る!」
朝食も食べずに、部屋に戻って行った。あんなに完璧に容姿を整えて来たのに、あれ以上何を支度するというのか……
「お兄ちゃん、朝から忙しいね。ゆっくりご飯を食べればいいのに」
「レニーはいい子ね。朝ごはんはしっかり食べなきゃね」
「サンドラ様! 我も、朝食をしっかり食べます!」
ティアはテーブルの上で、シッポを振りながら頭を撫でてくれるのを待っている。ティアには感謝してるし、沢山撫でてあげよう。
ティアの頭をわしゃわしゃ撫でていると、朝食が来た。
「食べようか」
「はぁーい! いただきまーす」
「我は幸せです!」
朝食を食べ終え、宿屋の入口でエヴァン様を待っていると、ようやく支度が終わったのか、満足した顔でやって来た。
「待たせたな」
ものすごくキラキラした鎧を着ている……
「却下。着替えて来てください」
「何故だ!?」
エヴァン様は自分の鎧を見ながら、納得がいかないという顔をしている。
「まず、そんな目立つ格好をしている人と一緒にいたくありません。それから、今日はギルドに登録するだけなので、鎧はいりません。それから、騎士じゃないんだから、そんな立派な鎧いりません。それから……」
「わ、分かった! 着替えて来る!」
急いで着替えに戻って行ったエヴァン様。これから先が、思いやられる。
着替えを終えたエヴァン様が、落ち込んだ様子で歩いて来た。そんなにあの鎧が着たかったのか……
「行きますよ。エヴァン様は、馬に乗ってついてきてください」
いつもより速度を落として、エヴァン様に合わせながらリバイまで向かう。この人は、レニーよりも手がかかる。
やっと冒険者ギルドに到着して、中に入る。
「サンドラ様!」
「嬢ちゃん!!」
中に入った瞬間、ダンカンさんと自称Aランク冒険者の1人が待ち構えていた。ダンカンさんはまだ分かる。だけど、自称Aランク冒険者はどうして?
「昨日は助かった! 嬢ちゃんのおかげで救われた命を、お嬢ちゃんの為に使いたい! だから、仲間にしてくれ!」
「僕も、サンドラ様の盾になります!」
どうして、自己犠牲前提なのか……流行ってるの?
「あー、間に合ってます」
足でまといが増えたら迷惑。
「サンドラ様……」「嬢ちゃん……」
そんな泣きそうな顔をしても無駄。ティアやレニーなら可愛いけど、大の男がやっても可愛くない!
「なんなら、俺の盾にしてやってもいいぞ?」
「「うるさい! 黙れ!! キラキラ野郎!!」」
「何だと!? 俺を誰だと思ってるんだ!?」
構っていたら日が暮れてしまいそうなので、さっさと依頼を受ける事にした。
依頼が貼ってある掲示板を見ていると、ものすごく視線を感じる。どうやら、昨日のことが噂になっているようだ。気にしてたら何も出来ない。早く依頼を受けよう。
キラーアント討伐……金貨10枚。レアアイテムの納品……金貨5枚。洞窟の魔物の一掃……
金貨100枚!?




