表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の力を隠して来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。  作者: 藍川みいな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/37

23、エヴァン



エヴァン様は、ジュードが迎えに来てくれた時会場にいた。私達は、ロックダムを2週間程で抜けたのに、エヴァン様も同じくらいのスピードでここまで来たことになる。

エヴァン様には、ほとんど魔力がない。ということは、馬車ではなく馬に乗って来たとしか考えられない。しかも、ほとんど休憩せずに。

あの傲慢だったエヴァン様が、そこまでして追いかけて来たことが信じられない。

それに、気付かなかったけど、エヴァン様はレニーとティアが座っているテーブルに座っていた。いつの間に、仲良くなったのだろう……


「サンドラ様、お帰りなさい。エヴァン様が、お父上からの手紙をお持ちしたとのことで、お連れしたのです」


お父様からの手紙?

あのお父様が、自ら手紙なんて書くはずがない。エヴァン様は、何を考えているの?


「サンドラ、少し2人きりで話せるか?」


嫌だけど、話さなければ帰ってはくれない。


「私の部屋へどうぞ」


部屋に入り、ドアを閉めると同時に、


「何しにいらしたのですか? 手紙など、ただの口実ですよね?」


エヴァン様の顔を見た瞬間から、言いたかった事を言った。

そんなもので、騙されるとでも思ったのか……


エヴァン様は驚いた顔をしながらも、静かにソファーに腰をかけた。


「お前が俺に、そんなにハッキリものを言うとはな。確かに、手紙は口実だ。俺はただ、お前に謝りたかった」


謝りたかった……ですって?

私が本当は聖女だったから、無能扱いしてすまないとでも言うつもりなのか。

そんな事で謝られても、何の意味もない。


「謝罪は結構です。お帰りください」


もう話すことはないと、ドアノブに手をかけ、部屋から出て行こうとした瞬間、ガタンと音がして振り返った。


「すまなかった!!」


振り返った私の目に映ったのは、深々と頭を下げているエヴァン様の姿。あの傲慢でわがままだったエヴァン様が、誰かに頭を下げることなどありえないことだった。


「頭を上げてください。どんなに頭を下げられても、ロックダムには戻りません」


「俺は、ロックダムを追放されたんだ。お前を連れ戻しに来たわけではない。お前が、冒険者になったと聞き、俺も冒険者になりたいと思ったんだ。仲間に、なってくれないか?」


エヴァン様が冒険者!?

まさかそんなことを言い出すとは、思ってなかったから、かなり意表を突かれた。


「エヴァン様に冒険者は無理です。失礼します」


「待て! 待ってくれ! 俺には、サンドラ以外に頼れる人間がいない。何と言われようと、俺は冒険者になる! お前がいなかったら、俺はすぐに死んでしまうかもしれないぞ? お前はそれでも、俺を見捨てるのか!?」


この人は、本当にあのエヴァン様なのか……


「死にたくなかったら、冒険者にならなければいいのです。私には、関係のないことです」


「サンドラ!!」


まだ引き止めようとするエヴァン様の声を振り切り、そのまま部屋を出た。

エヴァン様を放って食堂に戻った私は、レニーとティアと、そしてラルフと一緒に夕食をとることにした。


「エヴァン様は、どうされたのですか?」


「さあ? 私には、関係ありません。食事にしましょう!」


料理を注文していると、エヴァン様が食堂に降りて来て、私達の座っているテーブルに座った。


「ここのオススメは何だ?」


諦めて帰ると思ったのに、そのつもりはなさそう。


「ここはね、何でも美味しいよ!」


レニーは無邪気に答える。


「何でもか、それなら沢山食べなくてはな~」


何だろう、その話し方は……

だけど、レニーが楽しそうに笑っている。


「あたしも沢山食べる~」


「お、真似したな~」


本当に、いつの間にこんなに仲良くなったのか……


食事が終わると、ラルフは検問所に戻って行った。レニー達と部屋に戻ろうとすると、エヴァン様は笑顔で手を振りながら『おやすみ』と言った。あの様子だと、ここに宿を取ったようだ。


部屋に戻り、着替えをすませると、既にレニーはソファーで眠っていた。


「ティア、レニーを任せ切りにしてごめんね」


レニーの隣に座り、寝顔を見ながら、ティアを膝の上に乗せる。


「我は、サンドラ様の下僕です。それに、レニーが大好きなので、謝ることはありません」


レニーやティアと一緒にいたいけど、お金が足りない。なるべく早く稼いで、のんびりお店をやって行けたらいいな。


それにしても、エヴァン様は何を考えているのか……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ