21、意外な訪問者
キマイラはトドメをさそうと、3人に近づいて行く。
さすがに目の前で人が殺されるのは、寝覚めが悪い。
キマイラが足を振り上げ、鋭い爪で3人を攻撃しようとした瞬間、光の鎖でキマイラの身体を拘束した。
「これ以上、あなたに好き勝手させるわけにはいかない」
両手を天にかざし、拘束されて身動きが取れないキマイラの方に向かって振り下ろすと、キマイラは炎に包まれ、一気に焼け落ちた!
かなり手加減したつもりだったけど、キマイラが跡形もなく焼けてしまった。魔物相手じゃなかったら、使わない方がいいかも……(使ったのは、ファイヤーボール)
「「「わあああぁぁぁぁ!!!」」」
冒険者達が喜びの歓声をあげた。
「お嬢ちゃん、つえーな!」
「回復魔法まで使えて、あんな化け物まで倒せるとか……何者なんだ!?」
「もう諦めてた……本当にありがとう……」
みんな、生きてる事に感謝している。
Aランク冒険者の3人は、口を開けたまま固まっていた。
歓声を聞きつけ、村の人達が続々と地下室から出て来た。村人には、被害が出ていないとの事だ。
亡くなった冒険者達の亡骸は、この村に埋葬することになった。冒険者の多くは、家族が居ない。
この村で、英雄として祀られることになり、仲間だった者達は感謝していた。
「女神様~! 女神様どちらですか~?」
来る途中に助けた男性が、私を追って村まで戻って来たようだ。
「……女神様は、やめてもらえます?」
私を見つけた男性は、飛びっきりの笑顔を見せた。
「ご無事で良かったーー!!」
両手を広げて抱きついて来た彼を押し退ける。
「ギルドに戻るように言ったはずです」
「女神様がこの村に向かって行ったのを見て、いてもたってもいられず、せめて盾くらいにはなろうと追って来たのですが……終わってしまったようですね」
男性は走って来たのか、汗だくになっている。私の為に、わざわざ来てくれたことには感謝するけど……
「気持ちは嬉しいけど、せっかく助けた命を無駄にされたら悲しいわ。私は、サンドラよ。女神様はやめて」
「サンドラ様! お名前までお美しい! 僕は、ダンカンです!」
ダンカンはドーグ村の隣の町出身で、Cランク冒険者だそうだ。
「ダンカンさん、せっかく追ってきてくれたのに悪いけど、私はもう行くわ」
早くセリアさんを安心させてあげたいし、何より今戻ればレニーとティアと一緒に、夕飯が食べられる!
「え、まっ……」
何か話そうとしていたダンカンさんの言葉を聞くことなく、私は猛スピードでギルドに向かった。
行きよりは、少しだけ早くギルドに到着した。この移動魔法、使う度に早くなってる気がする。
セリアさんに報告すると、涙を流しながら喜んでいた。報酬は、あの自称Aランク冒険者の3人を除いた冒険者全員で分けて欲しいと頼み、ナージルダルへと帰る。
結局、タダ働きをしてしまった。
だけど私よりも、命をかけて戦ったあの人達の方が、報酬を受け取る資格があると思った。
明日からは、報酬の高い依頼を受ければいいだけの事。
ギルドからナージルダルに帰宅して宿屋に向かって歩いていると、町の人達みんなが振り返って、おかえりと言ってくれる。この町に帰ってくると、凄く幸せだと実感する。
幸せな気持ちで宿屋に戻ると、ティアとレニーがちょうど食事をするところだった。
「レニー、ティア、ただいまー!」
レニーとティアの姿を見つけて嬉しくなった私は、笑顔で駆け寄った。
「お姉ちゃん、おかえりー!」
「サンドラ様、お疲れ様です!」
「そんな笑顔、初めて見たな」
2人しか目に入っていなかった私の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。
な、な、な、なんで、この人がここにいるの!?
頭が混乱し過ぎて、言葉が出てこない。
「久しぶりだな、サンドラ」
久しぶり……でもない気がするけど……
「……何故ここに、エヴァン様がいらっしゃるのですか?」




