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聖女の力を隠して来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。  作者: 藍川みいな


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18、ナージルダルの町



「ティア、レニーをお願いね」


ティアの背にレニーを乗せ、私とジュードは魔法で移動する。ティアの姿を見られないように、森の中を進む。


この国に連れ戻された時と違って、凄く楽しい! 国境で足止めされているフーリン伯爵には申し訳ないけど、ずっとこのままみんなと旅をしていたいと思ってしまう。


楽しい時間は、あっという間に過ぎて行く。お金があるしティアもいるからか、宿屋では二部屋とっていたけど、ジュードは何も言わなかった。


「もうすぐ、国境が見えて来る」


前にこの国を出た時と同じ道を進んでいるから、国境が近い事も分かる。この国との、二度目のお別れ。もう二度と、この国に戻ることはない。


ロックダムの国境を抜けると、国境近くの草原に馬車が三台止まっていた。フーリン伯爵の馬車なのは明らかだったので、そのまま近付いて行った。


「サンドラ様!?」


私の姿を見たフーリン伯爵が、目を見開いて驚いている。


「お久しぶりです、フーリン伯爵」


フーリン伯爵は凄い勢いで近付いてきて、私の手を握った。


「無事で何よりです! サンドラ様が、ロックダムの王子に攫われたと聞き、どれほど心配したことか……」


泣きそうな顔をして、私の目を真っ直ぐ見つめるフーリン伯爵に、とても申し訳ない気持ちになる。


「ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした。私の為に、こんな所まで来ていただき、感謝いたします」


「私は、何も出来ませんでした……」


「そんな事はありません。私は、本当に幸せ者です」


フーリン伯爵の馬車で、アットウェルへ帰ることになった。既にロックダムからは出たし、ゆっくり馬車に揺られるのも悪くなかった。

検問所を通る時、私達の姿が見えたのか、ラルフまで迎えに来てくれた。ラルフもずっと心配してくれていたみたい。


そして、ナージルダルの町へと帰って来た。


「サンドラ様よ!」

「おかえりなさい! サンドラ様!」

「サンドラ様、ご無事で何よりです!」


馬車から降りると、町の人達に囲まれた。あんな状況で去って行った私を、みんな歓迎してくれている。


「皆さん、私のせいで酷い目に合わせてしまい、申し訳ありませんでした!」


怪我が治ったとはいえ、痛みを感じなかったわけじゃない。凄く怖い思いをさせてしまったし、痛い思いもさせてしまった。


「何を仰るのですか!? サンドラ様が、私達を守ってくださいました!」

「サンドラ様をお助けする事が出来ず、申し訳ありませんでした!」

「サンドラ様、あの変態王子に何かされていませんか?」


自分達が酷い目にあったのに、私の心配ばかりしている。私は、この国が……この町が大好き。この町の人達を守りたい。


町の人達は、私が帰って来たお祝いだと、町をあげて広場の真ん中で盛大なパーティーを開いてくれた。貴族のパーティーは大嫌いだったけど、このパーティーはすごく楽しかった。


フーリン伯爵は夜が明けてすぐに、邸へと戻って行った。ロックダムの国境で足止めされている間に、仕事がたまってしまったようだ。

ラルフも国境の警備に戻って行き、町もいつも通りに戻っていった。


宿屋の部屋に戻ると、出て行く前のままにしてくれていた。また私が帰って来ると、信じていてくれたのだろう。

ベッドに横になると、どっと疲れが出たのか、凄く眠い……

何も言わずに私の隣に寝転がるレニーと、枕元で丸くなるティア。幸せな気持ちのまま、眠りについた。



*****



目を覚ますと、隣で可愛い顔をしたレニーが、ぐっすり眠っていた。枕元を見ると、ティアも気持ち良さそうに眠っている。


ベッドから起き上がり、顔を洗ってソファーに座る。こんな風に、ぼーっとするのもいいかもしれない。


そういえば、ジュードはどうしたんだろう? パーティーの時も、私達から離れていた。出来れば一緒に、笑い合いたかった。

そんな事を考えていると、ドアをノックする音が聞こえて来た。

ドアを開けると、そこにはジュードが立っていた。


「少し、いいか?」


私は頷き、部屋の中に招き入れた。


ジュードにはソファーに座ってもらい、私はテーブルを挟んだ向かい側のイスに座った。


「なんだか、いつものジュードじゃないみたい」


「今日は、真面目な話をしに来たからな」


真面目な話って、まさか居なくなったりしないよね……


「俺は明日、王都に戻る事にした。父上に、ロックダムとの事を話さなければならないからな」


それって、私のせいだよね……


「私も一緒に行って説明する!」


「必要ない。あんたは、この町で待っていてくれ」


待っていてくれってことは、戻って来てくれるのね。


「分かった。ちゃっちゃと行って、ちゃっちゃと帰って来てね!」


「俺が帰って来るまで、またホイホイ他の男について行くなよな」


なんかその言い方、自分の女扱いみたい。そう思った瞬間、ボッと顔が一気に熱くなった。


「何で顔赤くなってんだよ!?」


自分だって、真っ赤になってることに気付いてないのね……




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