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聖女の力を隠して来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。  作者: 藍川みいな


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15、冒険者サンドラ



聞き覚えのある声……

振り返ると、そこにはジュードが立っていた。


「お前は? サンドラは僕の婚約者だが、何か文句でもあるのか?」


驚き過ぎて、声が出ない……

どうしてジュードがここに!?

そういえば、ジュードが現れる時はいつもこうして驚かされる。


「文句ね、ありますよ。サンドラは、我が国の冒険者です。この国の人間ではありません」


我が……国?


「冒険者だと!? 何をふざけた事を言っているのだ!? サンドラは、この国の聖女だ!」


オスカー様がこんなに取り乱した顔、初めて見た。ジュードは、相手を怒らせるのが上手い。

……冷静に分析しちゃってるけど、この状況はまずいのでは??


「これは、サンドラのアットウェル王国で発行されたギルドカードです」


そういえば、魔法の練習中はギルドカードを宿屋に置いていたんだっけ。だけど、それを見せたからといって、国王様もオスカー様も動じたりはしない。せっかくギルドカードを手に入れたのに、無駄になってしまった。

ジュードは、いったい何を考えているの?


「だから何だと言うのだ? 」


そうなるよね……


「だから、サンドラを連れて帰ります」


「何をふざけた事を!!」


オスカー様がブチ切れたところで……


「何を騒いでおるのだ!?」


国王様が騒ぎを聞きつけて、こちらに向かって歩いて来た。


「ジュード、私のことはもういいの。だから、逃げて!」


ジュードなら、ここから逃げるくらいは出来るはず!


「サンドラは心配するな。必ずあんたを、連れ帰る」


私だって、あの町に帰りたい。レニーやティアにも会いたいし、自由に暮らしたい! でも、私のせいで町の人達や、ジュードに迷惑をかけるわけにはいかない!


そうこうしているうちに、国王様がオスカー様の隣に立った。


「お久しぶりです、ロックダム王」


ジュードは笑顔を浮かべて胸に手を当て、国王様に頭を下げた。……知り合いなの!?


「そなたは、アットウェルの……」


「はい。アットウェル王国第二王子、ジュード・デリアスです」


……はい!?

ジュードが、王子様!?

な、な、何がどうなってるの!?


「オスカー王子では、話が通じないようでしたので助かりました。単刀直入に申します。サンドラは我が国の冒険者ですので、連れて帰ります」


「それは、どういうことだ!? サンドラは、我が国のオデット公爵……いや、オデット男爵家の令嬢。冒険者などではない!」


ジュードはもう一度、ギルドカードを取り出して国王様に見せた。


「先日、アットウェル国内の冒険者ギルドで、サンドラはギルドに登録し、正式に受理されました。ご存知の通り、冒険者として登録した者は、個人の身分を手に入れることが出来ます。サンドラは、我が国で登録したので、アットウェル王国の国民になりました」


ジュードの考えていることが分かった。


「しかし……」


国王様の顔が曇る。


「父上! サンドラを渡してはなりません! サンドラは聖女なのです!」


オスカー様は、必死で国王様を説得し始めた。


「サンドラを渡して下さらないのなら、我が国はこの国に攻め込むことになるでしょう。

そこに居られるオスカー様には、我が国の民を傷つけられましたし、情けをかけることは決してありません」


国王様相手に凄むジュードを見ていると、本当に王子様なのだと実感する。

この国は、聖女の力に頼って来た。魔物に攻め込まれることもなく、戦うこともあまりなく、平和に暮らして来た。兵士達は鍛錬を怠り、兵力は大幅に低下。

アットウェルは、魔物を警戒し、兵士の質を上げることに尽力して来た。ロックダムがアットウェルに攻め込まれたら、ひとたまりもないのだ。


「……分かった。連れて行くがよい」


「父上!?」


まさか、もう一度この国を出られるなんて、思ってもみなかった。オスカー様は、納得していないけど国王様の決定に逆らうことが出来るはずもない。


「サンドラ、行くぞ」


ジュードが差し出した手を、力強く握る。そのまま私達は、王城から出て行った。



*****



「父上、皆帰りました」


エヴァンは、サンドラ達が出て行ってすぐに、貴族達を帰らせた。サンドラとの婚約がなくなり、オスカーを王太子にする理由もなくなったことで、パーティーの目的自体がなくなったからだ。


「そうか……まさか、アットウェルの王子が、サンドラを連れ去るとはな」


国王は、アットウェルに聖女を取られたと思っていた。聖女でないサンドラに、何の価値もないと思っているからだ。


「父上、俺をこの国から追放してください」


エヴァンは国王に跪き、そう懇願した。


「お前は、何を言っておるのだ!?」


国王は、エヴァンを追放する気などない。王太子の座からは降ろしたが、それは仕方のないことだった。サンドラが居なくなった今、もう一度エヴァンを王太子に戻すつもりでいた。オスカーよりもエヴァンを愛していたからだ。


「俺に考えがあります。サンドラは、冒険者ギルドに登録しただけで、他の誰かと婚約したわけではありません。サンドラ自らが、俺と婚約したいと思えばよいのです。ですので、俺も冒険者となり、サンドラと共に冒険しようと思います」


「そうか。お前に、任せることにしよう」


こうして、エヴァンはロックダム王国を追放された。



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