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聖女の力を隠して来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。  作者: 藍川みいな


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14、婚約発表パーティー



「王太子が、真の聖女であるサンドラとの婚約を破棄し、偽物と婚約するとはな……」


国王様はため息をつき、エヴァン様の顔を見た。


「エヴァンよ、分かっておるな」


「……はい、父上」


泣いているフリをしているアンナに、何を聞いても無駄だと悟ったのか、エヴァン様は観念したようだ。


「お待ちください! 私は悪くありません! お姉様が私をそそのかしたのです!

エヴァン様、私達はお似合いです! 聖女でなくても、エヴァン様の為に尽くしますから、婚約を解消しないでください!」


この状況で、そんな事を言えるアンナを尊敬する。もし本当に、私がアンナをそそのかしていたとしても関係ない。聖女は絶対的存在だからだ。

アンナは王族を騙したのだから、婚約どころではない。この場で出来ることは、ただ謝って許しをこうことだけ。


「状況が理解出来ないようだな。お前の父であるオデット公爵は、男爵へと降爵する。剥奪したいところだが、サンドラの実の父だからな。お前は、この国から追放とする!」


国王様はこぶしを握りしめながら、そう言い放った。ようやく事の重大さに気付いたのか、アンナの顔が真っ青になっている。


追放……か。アンナが羨ましい。


「陛下、お許しください! お姉様、助けて! 」


兵が、アンナを拘束し連れ出す。このまま、アンナは国の国境まで連れて行かれ、国から追放される。

私に罪をなすりつけようとしたくせに、助けを求めてくるアンナ。先程までの涙は偽物だったけど、今は本当に涙を流している。


アンナが国外追放され、エヴァン様は王太子の座を追われ、オスカー様が王太子になることになった。1週間後、オスカー様が王太子になることと、私との婚約を発表するパーティーを開くようだ。1週間では、王都付近に住んでいる貴族しか出席出来ない。急ぐ理由は、一刻も早く、王室の失態をなかったことにしたいのだろう。


また逃げられたら困るからか、私は王城の一室に軟禁されている。

あれから3日が経った。私が連れ戻されたことを知っているはずの父は、一度も会いに来ていない。私が聖女でも、そうでなくても、父にはただの道具だった。


そして、パーティーの日が訪れた。


急な招待にも関わらず、王都の貴族はほとんど参加していた。急だからこそ、大切な発表があると思ったようだ。


「サンドラ、僕達を祝福する為に、こんなに沢山の貴族達が集まってくれたよ」


王城へと、出席者が続々と集まって来る所を窓から見下ろしながら、オスカー様は私の腰を抱いた。


「…………」


何も話すことなんてない。


「浮かない顔だね。君は、このロックダムの王妃になれるのに、嬉しくはないのかい?」


この人は、何を言っているの?

王妃になんかなりたくなかったから、この国を出たことを忘れているの?


「君の嫌いな兄上は、もういない。僕と幸せになろう!」


オスカー様は、私がエヴァン様を嫌いだから逃げたと思っているの?

確かに、エヴァン様は嫌いだったけど、何よりこの国が嫌い。それに、私が逃げた時は既にエヴァン様には婚約を破棄されていたのに……


「この国にいる限り、私の幸せなんてありません」


私の腰を抱いているオスカー様の手に、力がこもった。


「君は僕のものだ。僕と一緒に居たら、絶対に幸せになる!」


どうしてそんなに拘るの? まさか、オスカー様は私を好きだとでも言うつもり!?


「そろそろ時間だ。みんな、僕達を待っている。行こうか」


オスカー様に促され、パーティーが行われる会場へと向かう。会場の前に着くと、入口のドアを開いて中に入る。


「まあ! オスカー様と、サンドラ様よ!」

「サンドラ様、とてもお美しいです!」

「やっぱり、サンドラ様は素晴らしい方だと思っていました!」


次々に声をかけてる貴族達。どうやら、私が聖女だということを、既に知られているようだ。

国を出る前は散々私を無視して来たのに、聖女だと分かると手のひらを返す。都合がよすぎるとは思わないのか……


声をかけてくる貴族達を、私は無視し続けた。こんな人達に、どう思われようとどうでもいい。


「サンドラ様? 体調がお悪いのですか?」

「一言もお話しにならないのは、ご気分が優れないからでは?」


無視されているとは思わないところがすごい。


「そうですね。あなた達の声がうるさくて、気分が悪くなったのかも。それ以上、口を開くのはやめていただけます? 悪臭がします」


「「「なっ!?」」」


腹が立っても、言い返すことなんて出来るはずがない。こんな腐った貴族達の相手をするつもりはない。思ってもいないお世辞など言って、恥ずかしくはないのか……


「あははははっ! さすが、僕の婚約者だ!」


大声で笑い出すオスカー様。オスカー様も、エヴァン様と比べられて、貴族達には散々バカにされて来た。


「誰が、あなたの婚約者だと言うのですか?」



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