表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祖龍の目覚め  作者: 春山 隼也
2/3

出会い

「さわっちゃダメッ!」

 その声を聞き、慌てて無限燃石に近づけた手を引いた。

 声のした方を見ると銀髪の少女が座っていた。体は俺より少し小さい位だ。歳はそれほど離れていないのだろう。服は茶色いぼろ布で出来たものを、申し訳程度に羽織っているだけだ。

 そして頭部には黒い角が左右に一本づつ生えている。


 まさか炎龍かっ?!


 急いでその場から1メートル程後ろに跳び下がり、背負っている剣を抜き構える。

 暫くの間体制を崩さずに少女に剣を向けていると、少女は怯えた声色で言った

「あ、あなたもっ!私を追い払いにきたんですか!?」

 追い払う? 何を言いたいのは分からないが攻撃される心配は、なさそうだな。

「そんなつもりはない」

 剣を鞘に納めながらそう言うと少女は「ふぅ」と一息つき、少し落ち着いた様子で

「そう……でしたか。ごめんなさい」

 と申し訳なさそうに言った。

「こっちこそ勝手に持っていこうとして悪かったな」

 若干申し訳なさの混じった声で言うと少女は小声で「……がぅ」と何か呟いた。

「なんだって?」

 聞き返すと何か吹っ切れた様子で「ちがうのっ!」と叫ばれた。

「なにが?」

 再び聞くと少女はまだ少し震えた声で答えた。

「あ、あの石は私のじゃ、ない」

「ならなんで触っちゃだめなんて言ったんだ?」

「そのままさわれば、手、が焼けこげてしまうので……」

「そうなのか。ありがとう。教えてくれて」

 そうお礼を言うと少女は、はにかんだ笑顔で言った。

「あ、いえ。どういたしまして?」

「なんでちょっと()()()混じりなんだよ」

「あの、その、もう長い間人と話していなくって……」

 そう言った少女の表情はまた元のくらさのある顔に戻った。

「お前、炎龍なのか?」

「あ、はい。多分、きっと、おそらく、そうだと思います。炎龍の能力という能力は一つも持っていないんですけどね。はははは……」

 少女はそう言い乾いた笑いを浮かべた。

「そうなのか。龍でも色々大変なことがあるんだな。もっと悩みなく生きているんだと思ってた」

「あはは。他の炎龍族の人たちはみんなそんな感じですよ……。私だけです。こんな悩みを抱えているのは」

「そうなのか? ならお前は何なんだ?」

「分かりません。私自身にも。恐らく他の人たちも……」

 そんな暗い顔するなよ……。

「だからこんなところにいるのか?」

「まぁそんなところです。ありがとうございます。私なんかとこんなにおしゃべりしてもらってしまって……。私の事はいいですから行ってください。あなたはあなたのやるべきことをやってください」

 だから、そんな顔をするなって……。お願いだからそんなに悲しそうな顔で見送らないでくれよ。助けて、連れ出してほしいなら言ってくれ。見ていられなくなるから……。

「そうだよな。俺は俺のやるべき事を……」

 俺のやるべき事。もう、間違いたくない。

「そうです。あなたのやるべきことはこの石をもって行く事なんですよね。だから……」

 少女の声を遮り「違うな」と一言言うと

「何がですか?」と少女は聞く。

「俺の()()やるべき事は、その石をもって帰ることなんかじゃない。お前をここから連れ出すことだ」

 そう答えると少女は目を潤ませながら言った。

「何をいって……いるんですか?」

「お前をここから連れ出すと、そう言っているんだ」

 再びその言葉を口に出すと、少女はその場で泣き出した。

 色々な言葉を投げかけたが手が付けられなかったので、無限燃石を専用の箱に入れ、少女を背負い、洞窟を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ