神様のミス、そして異世界転移
夢野空は平凡な日本の男子高校生だ。勉強、スポーツ、友達関係……どれを取っても平凡だと言われる彼だが、他人には秘密の楽しみがある。
MMORPG《混沌と平穏》をプレイすることだ。
もちろん学業に支障が無いくらいに抑えてはいるが、その気になれば一日中プレイしていられるほど熱中しているのだ。
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「ふわぁ〜……昨日はちょっとプレイし過ぎたか……」
そう呟きながら俺は家を出る。昨日も《混沌と平穏》をプレイしていたのだが、普段よりも遅くまでプレイしていた気がする。お陰で起きてしばらく経っても眠いままだ。
「まぁ今日も頑張るか……」
今度はそう呟いた矢先、後ろから物凄い衝撃が襲ってきた。驚愕の表情をしたトラックの運転手と、曲がってはいけない方向に曲がっている自分の手足を見たのを最後に、俺の意識は闇に沈んでいった。
目が覚めると真っ白な世界にいた。上を見ても白、下を見ても白。一周ぐるりと回転してみても白しか無い世界だ。
「ほんっっとうに、ごめんよ」
後ろからそんな声がしたので、慌てて振り返る。白い衣を纏って杖をついた、白髪と長い髭をたくわえた老人が立っていた。
「いや、そのな……私は神であり、この世界を司っているのだが、うっかりしていてな……君を死なせてしまったようなんじゃ」
やっとこの老人が謝った意味がわかった気がする。もともと僕は死ぬ予定ではなかった。が、ミスってトラックを僕にぶつけてしまい、そして殺してしまったということらしい。
「そこでだ。お詫びとして魔法やスキルが存在する世界へ転移させてあげようと思うんじゃが……どう?」
「……!!」
《混沌と平穏》のような、魔法やスキルが存在する世界に一度は行ってみたいと思っていたところにこの提案、願ったり叶ったりだ。
「気に入ってくれたようじゃな。それでは転移させるのじゃが……それだけでもまだ申し訳ないな……」
なんだったらチート能力とか欲しいです、神様。
「よし、じゃあ『虚無空間』を進ぜよう! これで異世界ライフを楽しんできてくれ! ではまた今度な〜」
その声を最後に神様の姿は掻き消え、代わりに青空が見えてきた。体を見ると、前世とほとんど変わっていない。どうやら本当に転移させてもらえたようだ。神様、ありがとう。
こうして俺の異世界ライフは、始まりを告げた。
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