エノテラ
5人は建物の入口の前にいる。
やはり作りから見て神殿のようだ。
しかし、魔族の都市に中央に竜の神殿があるのはおかしい。
しかも、神殿の中は黒い瘴気がなかった。
まるで何者かが浄化しているように。
警戒しながら入った。
「まずい。魔蜘蛛の索敵糸を踏んだ」
マガリが声を出す。
索敵糸は簡単に切れ獲物に引っ付き、魔蜘蛛に獲物の位置を教えるものだ。
ざわり。
建物の天井や壁の影から、無数の魔蜘蛛の気配を感じる。
「魔蜘蛛の巣だ」
全員が戦闘態勢に入るが、やはり防御服が邪魔になっている。
しかし、一向に襲って来ない。
「?」
その時、神殿の奥の暗がりから、白い神官服を着た女性が音もなく現れる。
5人はその姿を見て絶望する。
女性の下半身は、巨大な蜘蛛だった。
「お待ちしていました。聖女様。魔を封じる術を持つ人たち・・・」
目をつぶっている。
蜘蛛の複眼にも光がない。
「千年の時間の中で光を失いました」
「竜神官、”エノテラ”と申します」
蜘蛛の体が跪く。
「”竜の神子”様に守られていますので神殿内の”魔”は大丈夫です」
「千年の間にこのような体になってしまいましたが・・・」
元は人間だ。
5人がおっかなびっくり防護服とマスクを外す。
「・・・!」
「始まりの聖女”エノテラ”!?」
アマリリスが驚きの声を上げる。
「じゃあ。この都市は、魔王都”ガウラ”」
「「「「?」」」」
「竜の聖典に出てくる最も古い聖女の名前が”エノテラ”で、聖典では、ある人たちが魔界の都市そのものを召喚しようとしたらしい」
「その都市”ガウラ”の召還を阻止したのが聖女”エノテラ”だったはず・・・」
「”竜の神子”様のお友達だっただけです」
その時、マガリの左手の神式文字が輝いた。
「・・・はい。はい。ついにこの時が来たのですね。貴女様が予言されたように」
エノテラが涙を流す。
竜の女神と話しているようだ。
「こちらに来ていただけますか」
エノテラは、神殿の奥の中央にある、地下へと続く階段を指し示した。
索敵糸はエノテラのもの。




