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マガリ

 真っ昼間からマガリは、ギルドの食堂で煙草を吹かしながらスピリタス領の地酒を水割で飲んでいた。

 傍らには2メートル近いハルバート。

 全身黒ずくめの軽装備。身長170センチくらい。

 華奢な体格だが出るところは出てスタイルは良い。

 腰まで伸びたつややかな黒髪。抜けるような白い肌。

 眼帯をしていない目は黒色である。


 魔性じみた美しさがあった。


 それ以上に目を引くのは、右目の眼帯と右腕の長手袋である。

 黒地に、鋼鉄蜘蛛の糸で術式文字が縫われている。

 見るものが見れば、高度な魔封じの術式文字だとわかるだろう。 


「昼間っから飲んでるってことはやったのか?」

近くにいた冒険者の男が言った。


「おうよ。前々から狙ってた魔蜘蛛3匹。昨日森から帰ってきたぜ」

マガリが酒を煽りながら言う。


 ハナゾノ帝国の南に広がる”魔じわりの森”。森の向こうには魔族の国があった。

 ここは南方辺境伯領の森の近くの地方都市。魔族との戦いの最前線である。

 

「また一人で森に入りやがったんだよ」

ギルド職員のドワーフ、ウルベが大きな声で言った。


「はっ大きなお世話だ。誰が俺とパーティーなんか組むんだよ」

水割とはいえ、もとが90度近い酒を飲んでいるので酔いが回ってきている。


「まあまあ。心配していってくれてるんだぜ」


「ふんっ」マガリは、酒を飲み続けた。


 その時、後ろから「魔じり(魔族と人のハーフのこと)がいるぜ」「きれいじゃねーか。こっちきて夜の相手してくれよ」 

 下卑た声が聞こえる。いつの間に入ってきていた冒険者のパーティーだ。


「ひえっ」冒険者の男が言う。


 マガリは既にハルバートを、言った男の首筋に当てていた。

 手袋をした右手で重量級のハルバートを持っている。

 左手には酒のグラス。ふらつきながら左手で酒を煽るがハルバートはこゆるぎともしない。

 言った相手を興味なさそうに見ている。


「そこまでです」

 若い娘の声がした。ギルドの職員メアリーである。


 マガリがハルバートを下げた。


 パーティーの男たちは腰を抜かして食堂から出て行った。


「マガリさん」


「なんだよ」腰まで伸びた黒髪を指でいじった。


「また酒を飲んで。煙草を吸って。まだ16歳でしょう」

 メアリーは”状態異常治癒の術式”をマガリにかけた。

マガリ登場。

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