第81話 組み手
ふぅ、と息を吐きアランは目を閉じる。
すると、体の光はスゥー…と消えていった。
「すごいよアラン!ダンテと戦った時みたいに体光ってた!」
「あ、あぁ…。なんか、自分の能力を呼び起こす感覚みたいなのが分かってきた気がする…。レオンさん、ありがとうございます!」
アランはレオンの前に立つと深々と頭を下げる。
「うんうん!その感覚を忘れずにトレーニングを続ければきっと能力は君のものにできる。頑張っていこう!」
「はい!」
(あれが神獣の力…どんな能力かは詳しく分からなかったが、上手く扱えていない段階であのオーラとは…カルムが目覚めたがっていたのも頷ける末恐ろし力だぜ…)
そんなアランの姿を、ジェリドは冷や汗を垂らしながら見ていた。
「いやー、みんな素晴らしい!"能力を発揮する力"は申し分無いね!それじゃあ次は…"君たちの素の実力"を見せてもらおうかな」
「素の実力…?」
「あぁ。今度君たちにやってもらうのは…能力を封じ素の力だけで行う"組み手"だ!」
「素の力だけで行う…」
「組み手?」
アランとベルは頭の上にはてなを浮かべ首を傾げる。
「そう。君たちの能力は大体把握できたけど、君たちが能力の無い状態でどれほどまで戦闘できるか…それを見ておきたい。それによって君たちの戦闘でのスタイルや役割なんかを決めやすくなる。それに、仲間として親睦を深めるのにもってこいでしょ?組み手って」
ニコニコとそう言うレオンを見て、アラン達はさらに首を傾げる。
「そ、そうか?」
「い、いや…わかんない…」
そんなアラン達とは対照的に、ジェリド達はこくりこくりと大きく頷いていた。
「確かに、今後仲間として活動するなら手合わせした方がもっと仲を深められるよな」
「うんうん、組み手大賛成だ」
「能力無しか…最近は能力に頼りがちだったからな…久しぶりに楽しめそうだ」
「えー…なんかすげぇやる気だよジェリド達…」
「ほんと…俺、能力無しで戦える自信無いな…」
「まぁまぁ。ただの組み手だし、お互いの実力を把握しておく事は仲間として連携を取る上でとても大事な事だからね。それも含めての修行さ。じゃ、とりあえず中に戻ろうか。…そろそろリサちゃんも特訓終わってるかな」
レオン達は再び道場の中へと戻った。
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道場に戻ると、そこには坐禅を組み目を閉じるリサの姿があった。
「ん?あれは一体何を…」
「さっきの君と一緒さ。印術を覚えるのにはイメージトレーニングがとても大事だからね。…何なら紋章の力よりもイメージに直結してると言っても過言じゃない」
「そうなんですか…俺、印術使えないから知らなかった…」
「…ま、勇者団に入ればいずれ最低限の印術は覚えられる。その時もイメージトレーニングが主になるから覚えておきなよ」
「はい!」
そんなことを話していると、リサの体が白いオーラに包まれ始めていく。
「リサの体にオーラが…!」
「すごい…何が起きてるんだ…?」
それを見たリサの隣にいたレベッカは優しい声でリサに話しかける。
「いいぞ、上手く生体エネルギーを捻出できている…そのままイメージを続けて…!」
それから少し経ち、リサの体からオーラがゆっくりと消えていく。そして、リサの右手には白く輝く印が浮かび上がっていた。
「よし、もう目を開けていい。右手、見てごらん」
「あ、これは…」
リサの右手には、丸い円から白い線が右斜め上、右一直線、右斜め下にそれぞれ伸びているマークの描かれた円状の印が刻まれていた。
「これが通話の印だ。まずは"君の番号"を決める。試しに好きな数字三桁を紋章に書き込んで見てくれ」
「は、はい…それじゃあ」
リサはレベッカに言われた通り、「777」と数字を書き込んでみる。すると、紋章に指でなぞった通りの線が刻まれ777と光る数字が浮かび上がった。
「すごい、数字が…!」
しかし少しして、数字は煙のように消えてしまった。
「あれ?数字が消えちゃった…」
「うむ…どうやら先にその数字を使っている人がいたようだな。どういう原理か、"他の者と同じ数字"は刻めないようになっている。私の師匠が言うには、"人から発せられる生体エネルギー由来の電波"が関係しているとかいないとか…」
「…なんだか難しいですね」
「はは、そうだな…私にもさっぱり分からない。一時は気になってしょうがなかったが…便利に使えればそれでいいかと最近は割り切った」
(レベッカさんて、意外と大雑把な人なのかも…)
そんな事を思いながら、リサは改めて別の数字を書き込む。
「変えるにしても覚えやすくて…それにラッキー7は入れたいわよね…」
リサは一人ぶつぶつと呟きながら考え込む。
「ま、それじゃこれしかないか…頼む…誰も使ってないで…!!」
リサは手の甲に「077」と数字を書き込む。
すると、数字は光だし印に吸い込まれるように消えていった。
「おぉ、成功したようだな…!これで君の番号は077に決まった。通話の印が使える者にその番号を教えればお互い連絡を取り合えるようになるはずだ。最初のうちはあまり離れていると繋がらないからそこは気をつけてくれよ」
「はい、分かりました!」
「…そうだ、一応私の番号も教えておこう。私の番号は122。何かあればそこへ連絡してくれ。君のもメモしておくよ」
「ありがとうございます!私もメモしなくちゃ…!」
リサとエルザはお互いに番号をメモする。
「さ、これで通話の印は完璧だ。…レオン、この後は?」
「この後はもうちょっと修行するよ。…リサちゃんも付き合ってくれるかい?」
「は、はい!もちろんです!」
「よし、いい返事だ!…レベッカ、君は?」
「私は例の店へ戻っていよう。天魔流を尾行している面々から連絡があるかもしれないからな」
「わかった、何かあったら俺にも連絡をくれよ」
「もちろんだ。…それでは皆頑張ってくれ」
ぺこりとお辞儀をすると、レベッカは道場を後にした。
「…さぁて、修行続き始めますか!」
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アルハリア城下町のとある路地…。
「ちぇ…あんだけ派手にやったんだ、てっきり勇者団の連中騒ぎ出すと思ったんだけどな…つまんねぇぜ」
「逆に考えてみろ、あれだけの事をして全くと言っていい程町に動きがない。…連中、何かを企んでいる可能性が高いな」
「何か…?」
「あぁ…これだけ"わざと痕跡を残していれば"俺たちがいる事はそろそろ気づかれているだろう。となれば…奴らは"俺たちを捕まえる計画"でも立てているかもしれんな」
「俺たちを捕まえる…か。ふん、想定してる通りだな」
「あぁ、奴らは俺たちが上手く網にかかったと思っているかもしれんが…逆だ。ここまで俺たちの思惑通り。いや…"レギスの"と言うべきか」
「へっ…面白くなってきたな…。だが、奴らがまだ来ないならこっちとしてもありがたい。俺たちもそろそろ、"目的"に会いに行くか」
「…そうだな、自由に動ける間に行くべきだろう」
「くー、早く会いたいぜ…!最近、刺激が足りてなかったからよ…!」
「"奴"ならかなり楽しめそうだ。…行くぞ」
「おうよ」
デオラとウェルパスは路地を歩き出した。
続く。




