第80話 アランの力
「さぁアラン君、君の力を見せてくれ」
レオンはニコニコと笑みを浮かべながらアランの方を見ている。
(レオンさん、なんかすっごいニコニコしてるよ…そんなに期待しないでくれ…緊張するから…!!)
アランはそんな事を心で思いながらギュッと拳を握りしめる。
「は、はい」
「君も外でいいかな?」
「はい、どっちでも大丈夫です」
「それじゃあ…」
レオンはせっせと藁人形を運びアランの前に置く。
「君には期待しているんだ。君の凄さ、みんなにも見せてやってくれよ」
「は、はぁ…」
(レオンさん…期待しまくってるよ…!どうしよう…。いや、どうしようじゃない、やらなきゃだめだ!ここで能力を出せないようじゃ俺は作戦の足手纏いになる。それに…そんなんじゃ勇者団になんて入れない…!やってやる…やってやるぞ!!)
アランはパチン!と自分の頬を叩くと、ギロっと目の前に置かれた藁人形を睨みつける。
そして両掌を握り締め、全身に力を込め始めた。
「うぉぉぉぉお…!!!」
あまりに気合いの入った声に、ジェリド達はおぉ…!と声を漏らしアランの方を見入る。
「すげぇ気合いだ…ありゃとんでもない力が出るぞ…!」
「だね…きっとすごい能力に違いない…!」
「ふん、大トリなんだ、楽しませてくれよ」
「いけー!アラーン!!」
「………」
そんなアランの様子を、レオンだけは静かにじっと見つめていた。
(くそ…皆んな好き勝手言って…!落ち着いて、体の奥底から力を呼び起こすように…!!)
「うぉぉぉぉお!!!!!!」
アランはさらに力をこめ、顔を真っ赤にする。
「出るぞ…!アランの本気…!!」
「一体どんな力なんだ…!?」
「…………」
それから数十秒程立ったが、一向にアランに変化は起きない。
「…何も起きねぇな」
「何か…溜めが必要な能力…とか?」
「アラン…?一体どうしたんだろう…」
「………」
「くそっ…おらぁぁぁあ!!!」
ひたすら力を込め続けるアランの元へ、レオンが近づいて行く。
「アラン君、ただ力を込めるだけでは駄目だ。そうだな…例えば今まで君が能力を使えた時は"どんな時"だった?"どんな感情"だった?"どんな事を思って"いた?…思い出してごらん」
「どんな時…どんな感情…どんな思い…」
アランは体から力を抜き、目を閉じる。
そして、今までの戦いを思い出した。
(俺が今まで力を発揮できたのは…そうだ、人を助けるために戦った時…。その時に思ってた事は…困っている人は助けたい。できるだけ多くの人の力になりたい。そして、その為にも絶対勇者団に入らなきゃって…。そうか、それだ…!俺は今、ただただ力を出さなきゃ、レオンさんに失望されたくない、ってそれだけを考えてた…だから力が出せなかったんだ。なんで力を出したいのか、なぜレオンさんに失望されたくないのか…その先にある"本当の目的"を忘れていたから力が出せなかったんだ…!!)
「…気付いたようだね、アラン君。焦ってただただ力を込めても自分の力はうまく引き出せない。自分の持つ力を何に、誰に、どのように使いたいか冷静に思い返して"イメージ"を広げると自ずと能力は君に答えてくれる。そうなれば、能力をコントロールする事も出来るようになるはずだ。さ、もう一度やってみてくれ」
「は、はい!」
アランは再び藁人形の前に立つと、今度は深呼吸しゆっくりと目を閉じる。
(今まで自分の意思で能力を使えなかったのはきっと能力と真剣に向き合えていなかったからだ…。焦らず、ゆっくりと能力と向き合い"イメージ"を広げる…)
アランはふぅ、と深呼吸し、能力を使う自分の姿をイメージしていく。
「ん?ありゃ何してんだ?」
「…"イメージ"をしているのさ。能力を使う自分の姿を」
「イメージ?」
「…いいかい?自分の能力を最大限引き出すには"イメージ"がとても重要だ。まず自分が持つ能力を使っている所をざっくりとイメージする。そしてその能力を何に、誰に、どういうふうに使いたいかをさらに具体的にイメージしていくと…自然と能力は体に馴染み真の力を引き出せる。…って俺の"師匠"が言ってた事の受け売りだけどね」
「イメージ…ね。確かに能力に慣れてない時は自分が能力を使いこなしてる姿ばっかり妄想してたっけな…」
「確かに…能力を使う目的を具体的に考える事で力を出しやすくなったり、技を考えやすくなるかもな…」
「その通り。それが、俺が今回君たちに伝えたかった事さ。目的を持ちイメージを広げながら能力を使う…。それを繰り返していけば君たちはもっと強くなれるはずだ」
そんな話をしていると、アランの体に変化が現れ始める。
「あ、見てよ!アランの体が…!!」
目を閉じるアランの体はどんどんと黄色い光に包まれていく。
「黄色い光…!それにこのオーラは…!!」
「すごいオーラだ…!力強い…だけど、どこか温かさを感じる…」
「光の紋章…噂には聞いていたがすごいオーラだ…!」
「アラン…やっぱり凄いや…!!」
アランの体の光はどんどんと輝きを増していく。
そしてアランが目を開くと、光はブォッと辺りに飛び散りアランの体は黄色く光るオーラに包まれていた。
「これは…ダンテと戦った時と同じ…!よし…!!」
アランは拳をギュッと握りしめると、再び藁人形を睨みつける。
「俺は…俺は…この力で沢山の人を救ってみせる!!!」
アランは素早い動きで藁人形の前へと移動し、勢いよく藁人形を殴りつける。
アランの拳を受けた藁人形は粉々に砕け散り、バラバラと地面に崩れ落ちた。
(アラン君…やはり君は素晴らしい…!君ならまだまだ強くなれるだろう…あの人のように…!!)
レオンはにこりと笑みを浮かべ、天を仰いだ。
続く。




