第77話 レオンの修行、開始
「さ、中へ入ってくれ」
ゲンゾウに招かれ、アラン達は道場の中へと足を踏み入れる。するとそこにはとても広い空間が広がっていた。
「へー、中結構広いんだな…」
「外から見るより広く感じるね…」
床の木板には様々な傷やスレ跡がついており、かなり使い古されているであろう事が一目で分かった。
「ここがわしの道場だ。…まずはお祈りをしなくてはな」
そう言うと、ゲンゾウは道場の最奥にあった神棚の前に正座し手を合わせる。
「あれは一体何を?」
「東の国の道場では"武道の神様"っていうのが祀られてるらしくてね、修行する前や戦いに挑む前なんかに祈りを捧げるっていうのが礼儀らしい」
「へー…信仰って国によって全然違うんですね…」
「あぁ、ここアリア王国だけでも信仰の対象はいくつもあるみたいだからね。俺は詳しくないからなんとも言えないけど、なかなか奥深い物だと思うよ」
そんな事を話していると、ゲンゾウがこちらへ歩いてくる。
「レオン、わしは少し用事があるから出てくるぞ。道場は好きに使ってくれ。壊さなければ何をしても構わんからな!はっはっは!」
大きな笑いを浮かべると、ゲンゾウはレオンの横を歩いて行く。そしてすれ違う瞬間、レオンは口を開いた。
「お願いします、ゲンゾウさん。十分気をつけて」
囁くレオンの声を聞き、ゲンゾウはニコリと微笑んだ。
「分かっておるさ…」
ゲンゾウは左の腰に二本の東刀を差し、道場を出て行った。
「なんだ、ゲンゾウさん行っちゃうのか…」
「せっかくならお手合わせ願おうと思ってたが…しょうがないか」
「ごめんね、ゲンゾウさんこの後用事があるみたいでさ…。さ、それじゃあ早速修行を始めますかね。…っと、もう一人お客さんが来たみたいだ」
レオンが指さす方を見ると、そこには見覚えのある人影があった。道場の入り口に立ち深々と頭を下げているのは鎧を身につけたレベッカだった。
「レベッカさん!レベッカさんも一緒に修行を…?」
「どっちかと言うと教える方だけどね!通話の印は彼女に教えてもらえる事になってるから、まずはそれからだね…」
「あ、それなんですけど…」
「ん?どうしたの?」
「さっき話してたんですけど、通話の印を覚えるのはリサがいいかなと…リサは元々印術を使えるし、覚えも早いし、情報の聞き取りも得意だし…な、リサ!」
「えぇ、せっかくなら私が覚えたいってのもあってアランと相談してたんです!一人覚えれば大丈夫ですよね?」
「うん、一人でも使える人がいればとりあえずは大丈夫!…確かにリサちゃんはしっかり者って感じがするから合ってるかもね。よし、それじゃあリサちゃんはレベッカに任せて、他のみんなは俺が特別修行をしてあげよう!…レベッカ、頼めるかい?」
「あぁ、任せてくれ。リサちゃん、君はこっちで通話の印を覚えよう」
「はい、お願いします!」
レベッカに連れられ、リサは道場の隅へと歩いて行った。
「でも、特別修行って何を…?」
「レオンさんと戦うとか…?」
「まぁまぁ、順番にやるから…。とりあえず、まずは君たちの"今の実力"から見せてもらおう。紋章がある人は紋章の力を、無い人は得意技や得意戦術を…順番に披露してもらう」
それを聞き、アランは内心驚きと焦りを感じていた。
(紋章の力…!?まじかよ、俺まだ"自分で力を引き出す方法"が分かってないのに…!!)
冷や汗をかくアランを見て、レオンはニヤリと笑みを浮かべる。
(くそ…このままじゃレオンさんに失望されちゃうぞ…!と、とりあえずなんとかやってみよう…!気合いをこめれば今からだって力を引き出せるはずだ…!!)
アランはギュッと拳を握り、心の中で自らを奮い立たせていた。
続く。




