第73話 協力者達
「さ、ここだよ」
先ほどのバーから路地を進んでいるうちに、すっかり日は暮れあたりは薄暗くなっていた。
「ここ…ですか?」
「な、なんか…」
「ボロボロで…」
「怖いですね…」
レオンが指さす建物は周囲の建物と比べかなり年季が入っており、蜘蛛の巣が大量に張られた言わば"廃屋"のような場所だった。
「しばらく使われてなかったところだからね…。ま、見た目はアレだけど、中は綺麗にしてあるから!さ、入ろうか」
レオンを先頭に、アラン達は恐る恐る建物の中へ入った。
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「いやー、みんなお待たせ。アラン君達連れてきたよ。…さ、紹介しよう。彼らが君達以外の協力者だ!」
蝋燭の火で照らされる建物の中には、古びた大きなテーブルを取り囲む様に"八人の人影"があった。
よく見ると、その中にはアラン達が知っている顔ぶれもあった。
「あ、君たちは…!」
「よー、また会ったな!」
そう言い笑顔で手を挙げたのは"赤龍団"のジェリドだった。
「ジェリド!それにハオとロックスまで…!」
「な、なんで君たちがここに…!?」
「いやな?そこのレオンさんにどうしても手伝って欲しいって頼まれてよ…。ま、俺たちも青龍団を見失って途方に暮れてたし、勇者団の人達には助けて貰った恩もあるしって事で協力する事にしたんだ。…あんたらもいるって聞いたしよ」
「え?」
「ジェリド、君たちの事が気になってるらしいよ」
「仲間の為にあそこまで行動できるあんたらが気に入ったんだとさ」
ハオとロックスはニヤニヤと笑みを浮かべながらそう呟く。
「おいおい、余計な事言わなくていいんだよ!…ま、確かにあんたらの事気になってるってのも少しはあったがな」
「そ、そっか…なんか嬉しいな」
「そうね…でも、赤龍団の人達がいるならなかなか心強いわね!彼ら相当強そうだし…」
「うんうん、大分心強いよ!」
「だよね、俺もそう思って誘ったのさ。彼らは戦闘にも慣れててかなり頼りになる。能力もそれぞれ優秀そうだし…」
「そう言われると照れるが…まぁ、できる事はやるよ。よろしくな」
そう言うと、ジェリドは軽く手を振る。
「…さ、続いては僕の知り合いの"傭兵"レベッカとその仲間たちだ」
レオンが手を指す方を見ると、そこには緑髪のポニーテールに銀色の鎧を身につけたそばかすの女性と、若い男女が二人立っていた。
「やぁ、私はレベッカ。レオン君から話は聞いているよ。あのバーガーやディオゲインを倒したらしいな!素晴らしいよ!是非とも勇者団に欲しい人材だな、レオン」
「あぁ、そうだね。是非とも勇者団に欲しい人材だ。…このレベッカは元々俺と勇者団の同期でね。レベッカは先に退団して"個人事業的"に今は傭兵をやってる。勇者団にも色々と力を貸して貰ってるんだよ」
「わざわざ勇者団を辞めて傭兵を?」
「あぁ、そうだ。勇者団に属しているとどうしても法やら世間体やらに縛られて仕事の幅が限られてしまう…。そう思い、傭兵として個人的に仕事を受けて勇者団や市民達に力を貸そうとそう決めた訳だ」
「なるほど…そう言う選択もあるんですね…」
「あぁ、勇者団としてもやりづらい仕事を頼めるからとても助かっているんだ。契約費もまけてくれるしね」
「勇者団にはお世話になったからな…当たり前だ。…っと、私の自己紹介はこのままにして、私の部下二人を紹介しよう。こっちのオレンジのヘアバンドがテラで三つ編みがヘナだ!」
レベッカの後ろに立っていたのは、オレンジ色のヘアバンドをつけ袖を捲った白い長袖シャツに黒いズボンを履いた爽やかな青年と、茶色い三つ編みで同じく白い長袖シャツと黒いズボンを履いた女性だった。
「やぁ、俺はテラ!…君たち、エルザの友達なんだろ?ジャカの村を取り返してくれたのも君たちだってレオンさんから聞いてるよ!」
突然そう話しかられ、アランは驚きの顔を浮かべる。
「エルザを知ってるんですか!?」
「知ってるも何も、俺たちはエルザの"幼馴染"でジャカの村の出身さ!…5年前にエルザと別れてからは一度も会ってないんだけど…」
そう呟くテラはどこか寂しげな表情を浮かべる。
「君たちには本当に感謝してるのよ!エルザと友達になってくれた事も、ジャカの村を助けてくれた事も!ありがと!」
三つ編みの女性、ヘナはニコッと笑顔を浮かべる。
その顔を見て、アランも同じくニコッと笑顔を浮かべた。
「エルザは俺たちの大事な仲間です!仲間が困ってたら助けるのは当然ですよ!それに、結局ジャカを助けてくれたのはレオンさん達ですし…。でもまさかエルザの幼馴染にここで出会うなんて驚いた…ジャカの村には戻らないんですか?」
「…この仕事が終わったら一度戻ろうと思ってるよ。エルザとも久しぶりに会いたいしね。ま、でも今はこの仕事の事優先!エルザの友達と仕事が出来るなんて嬉しいよ。よろしくね」
「はい!」
アランとテラはお互いの手をギュッと強く握った。
「…よし、それじゃあ最後!最後は俺の優秀な同僚達、ニールとクラネだ!」
レベッカ達の横から歩いて来たのは、全体がツンツンと針の様に尖った銀髪の男と茶色いツインテールの小柄な女性だった。二人とも、勇者団のコートを身につけている。
「あれは勇者団のコート…!」
「って事は…!」
「そう、僕ぁ"勇者団五番隊隊長"、ニール!それでこのちっこいのが"副隊長"のクラネ!よろしくね!」
「だーれがちっこいのですか!…私は"五番隊副隊長"のクラネです!よろしくお願いします!」
そう言うと!クラネはコクリと頭を下げる。
「す、すごい!二番隊隊長だけじゃなく五番隊の隊長と副隊長まで…!」
「なんだかすごい事になって来たわね…!」
「せっかくあの天魔流を捕まえられるかもしれないチャンスだ、しっかり人員を確保しようと思ってね。俺の後輩の五番隊の二人にも協力してもらえる事になった」
「君たちの話は聞いてるよ。すごいね!僕ぁ驚いたよ!是非勇者団に入ったら五番隊に来て欲しいね!」
「だめだめ、彼らは二番隊に誘おうと思ってるんだから!」
「えー?ずるいですよ!五番隊は特に人材不足で困ってるんですから、譲ってください!」
「だーめ。彼らは僕の部下になってもらう予定!」
「な、なんか俺たちを取り合ってるよ…!!」
「す、すごい…これ夢じゃないよな…!」
「ほら、現実よ」
リサはアランの頬を思い切り引っ張る。
「い、いてて!!痛い、夢じゃないぞ!!」
「ったく、愉快な人たちだねぇ…」
ガヤガヤと騒ぐアラン達の様子を、ジェリドはあくびを漏らしながら眺めていた。
続く。




