第68話 ゼクスvsクロウス
「行くぞ…天魔流!」
そう言うと、クロウスは両腕を前に突き出す。
その瞬間クロウスの腕に無数の白い紋章が現れ、そこから大量のカラスが飛び出して来た。
「あれがヤオの言ってたカラスか…へっ!」
召喚されたカラス達は一直線にゼクスの元へと向かっていく。
ゼクスはニヤリと笑みを浮かべると攻撃の姿勢をとり、鎌を後ろへ引いた。
「ガァー!ガァー!」
カラス達は大きな声を上げゼクスに向かい急降下する。
ゼクスはそれを軽々とかわし、次々と向かってくるカラス達を鎌で切り落としていった。
「ほう…やはり普通の人間とは違うな…。舐めていては危険そうだ」
「へっ、只のカラスごときじゃ俺は殺れねぇぜ。…次はこっちの番だ!」
そう声を上げるとゼクスは勢いよくクロウスの元へと走り出す。
そしてクロウスに向け、素早く鎌を振り翳した。
「…っ!」
突然の事に動揺しつつも、クロウスは冷静に鎌の動きを見極めゼクスの攻撃を避けていく。
「やれ」
クロウスがそう呟いた瞬間、ゼクスの後ろにいた五羽のカラスが急降下を始めた。
「またそれかよ!」
ゼクスは一度攻撃をやめ後ろのカラスに視線をやる。
そして、目の前までカラスが迫って来たその時だった。
「…!」
カラスの体に白い紋章が浮かび上がっているのが見え、ゼクスは咄嗟に身構える。
「クロウスボム…!」
クロウスの声と同時に一羽のカラスがゼクスの元へ突っ込み、そのまま大きな爆発を起こした。
「ちっ…爆破の印か…!!」
そのまま続けて他のカラス達も爆発を起こしゼクスは爆煙に包まれてしまった。
「このカラス達は俺の言う事には全て従う…。突っ込めと言えば突っ込み、敵を探せと言えば探し出し、死ねと言えば…自ら死ぬ。言わば俺の従順なる兵…。いや、もはや手足と言っても過言では無い。全て俺の意思に沿って動く。そして…俺達は心で通じ合っている…!!」
モヤモヤと立ち込める爆煙の中で何かが素早く動く。
クロウスはそれを見逃す、右手を横へ突き出した。
その瞬間、クロウスの腕から黒い羽根が生え始め、右手はまるでカラスの翼のように形を変えた。
「俺とカラスは一心同体…カラス達は俺に力を与えてくれる!いくぞ、クロウスナイフ!!」
クロウスが翼に変化させた腕を横に振ると、翼から黒い羽が数枚放たれ勢いよく爆煙の中へと向かっていく。
羽の向かう先にはゼクスの姿があり、ゼクスは鎌を振り羽を弾き飛ばした。ゼクスに弾かれた羽はまるで鋭いナイフのような形状をしており、地面にぶすりと突き刺さっていた。
「んだこの羽…まるでナイフみてぇだな…。それにあの翼…ヤオの言ってた事は嘘じゃねぇみたいだな」
「これは"キリガラス"と言うカラスの羽でな…羽一枚一枚の左右から先端までがまるでナイフのように鋭く、固くなっていてこの羽で狩りをする事が知られている…。だが、それだけじゃない。見せてやろう、キリガラスの恐ろしさ…!!」
クロウスは素早くその場から動き出すと、ゼクスの目の前まで距離を詰める。
「へっ、飛んで火に入るなんとやらってやつだ。お前も切り落としてやるよ!!」
ゼクスはクロウスの動きに合わせ鎌を振る。
次の瞬間、ゼクスの鎌はクロウスの右腕の翼とぶつかり、ガキン!!と大きな金属音が響き渡った。
「ほぉ…鎌を受け止めるほど硬くなってやがるのか…!おもしれぇ!」
ゼクスはニヤリと笑みを浮かべるとクロウスに向け次々と鎌を振り翳していく。
クロウスは右手の翼でゼクスの鎌を受け流し、様子を伺っていた。
(チッ、思ったよりやるようだな…。このまま攻撃してるだけじゃ埒があかねぇ…。まだ血は残ってるな、っしゃあ…!)
ゼクスは一度攻撃をやめると後ろに飛び下がる。
クロウスも同じく後ろに下がると、二人はギロリと睨み合った。
「クロウス、お前が強いのは十分分かった…。だが、お前じゃ俺には勝てねぇ。…終わらせてやるよ」
そう呟くゼクスの表情は今までとはどこか違い、まるで獲物を狩る獣のように鋭く、どこか不気味なものへと変わっていた。
(今までとは雰囲気が違う…。これからが本番と言う訳か…!)
あまりの威圧に、クロウスの額からひんやりと冷たい汗がこぼれ落ちる。
「ふん、天魔流に本気を出してもらえるなんて光栄だ。是非味わってみたい物だ…!」
「いいぜ、味あわせてやるよ…!俺の本気と、闇の紋章の恐ろしさをな…!!」
ゼクスは鎌を前に突き出すと、ギロリとクロウスを睨みつけた。
続く。




