第67話 闇の紋章の力
「俺もちょっとだけ本気で行くヨ…!」
そう言うと、レンは手のひらを上に向ける。
すると、レンの掌はブチブチと音を立てながら裂け、ギザギザとした歯が生えた不気味口が現れた。
「掌に口…?貴様、まさか能力者か…!」
「ハッ、能力なんて久しぶりに使うネ…。俺に能力使わせる事、誇りに思っていいヨ」
「ふん、舐めた口を…ん…?」
そんな事を話している時、レンの掌の口が大きく開き中から暗く禍々しい煙のような物がモヤモヤと溢れ出してきた。
「なんと禍々しいオーラ…!闇の紋章か、面白い!貴様の能力見せてみろ…!!」
ゴウはニヤリと笑みを浮かべると、構えを解きレンの様子を伺っている。
「そんな余裕こいてるとすぐ死ぬヨ…。ま、どっちでもいいけどネ…」
手のひらの口から湧き出る煙は次第にレンの体全体を覆い尽くす。そして、レンの体が完全に隠れたその時だった。
「キシャァァァァア!!!!!」
黒い煙の中から、人間のものとは思えない不気味な叫び声が聞こえてくる。
「叫び声…?」
オーラの中を探ろうとゴウが目を細めたその時だった。
叫び声と共に黒い煙は吹き飛び、中には黒く、とても禍々しい不気味なオーラに包まれたレンが立っていた。
「"魂二人分"って所カ…。ハハッ、久しぶりに使うと楽しいネ…。"リハビリ"には持ってこいの相手ヨ、お前」
レンはそう言うと、ポキポキと拳を鳴らしゴウの方を見る。
(あの黒いオーラ、なんと禍々しいのだ…!殺意や悪意に満ちた…これぞ正に闇…!!オーラだけでここまで恐怖を感じたのは初めてだ…。だが!)
「先程までとは見違えるほど強力なオーラ…!!どう変わったか見せてみろ!!天魔流!!」
そう言うと、ゴウは薙刀を構え戦闘の姿勢を取る。
「行くヨ…」
そう呟いた瞬間、レンの姿が一瞬にして消えさった。
ゴウは目を閉じ、気配を探る。
(左か…!?)
気配を察知し、左に目を向けたその時だった。
ゴウの顔面にレンの拳が勢いよくぶつかる。
「さっきのお返しヨ」
「ぐはぁ…!俺の体に…ダメージを…!?」
ゴウは後ろに吹き飛び、廊下の壁に勢いよくぶつかった。
「驚いた…龍神の舞を纏った俺に…ダメージを…与える奴がいるとは…!!」
ゴウは瓦礫を押し除けフラフラと立ち上がる。
そして、口から溢れる血を右手の拳につけると、そのまま左の掌に拳を叩きつけた。
「舐めている場合では無さそうだ…。こちらも本気で行こう…!血龍神の舞!!」
ゴウがそう声をあげた瞬間、赤く燃え上がる炎のようなオーラがゴウの体を包み込む。
「うぉぉぉぉぉぉ…!!!」
唸り声と共にゴウのオーラはどんどんと増していき、気がつくとゴウは白目を剥き、鬼のような形相を浮かべていた。
「天魔流は俺が殺す…!!誇り高きリン家の名にかけて!!!」
そう声をあげた瞬間、ゴウはオーラに包まれた両手を勢いよく前に突き出した。
「サイの国秘技…!九頭龍波!!!」
ゴウの両手の先からオーラが放たれる。
そのオーラは龍のように形を変え、さらにそこから九体の龍へと分裂した。
「さぁ行け…!!九頭龍達よ!!天魔流など一瞬で消し去るのだ!!!」
分裂した衝龍波はレンめがけて勢いよく飛んでいく。
そして、一つの衝龍波がレンの目の前に迫ってきたその瞬間だった。
「遅いネ」
レンはひらりと衝龍波をかわし、辺りを見渡す。
そして次々と迫ってくる衝龍波を余裕を浮かべながら軽々と避けていく。
「何をしている…!!早く捉えろ!!」
ゴウの声に従い、レンに避けられた衝龍波は軌道を変え、再びレンの元へと向かっていく。
「オーラを自在に操る…龍神の舞も久しぶりに見るとなかなか面白いネ。いい物見せてもらったヨ」
レンは何度も向かって来る衝龍波を避けながらそう呟く。そして、タイミングを見計り再びその場から姿を消した。
目標を失った衝龍波は地面や壁にぶつかり大きな爆発と共に消え去って行く。
「奴は…!?」
ゴウはレンを見失い辺りを見渡す。その時だった。
「今日は"沢山食べた"からネ…質の良いヤツをあげるヨ」
ゴウの真上から声が聞こえて来る。
ゴウが咄嗟に上を見上げると、そこには腕を掲げるレンの姿があった。よく見ると、レンの掌の口の上には黒いバスケットボール程の球体が浮かんでおり、それはレンの体と同じく禍々しいオーラを放っていた。
「あれは…クソ…!!」
オーラを放つ球に気付きゴウはその場を離れようとする。
しかし、その動きも虚しく、移動する直前にレンの掌の上に浮かぶ球状のオーラ弾がゴウの背中に勢いよくぶつかった。
「がはぁ…!!!」
ゴウはそのまま地面に叩きつけられ、オーラ弾はその場で大きく爆発した。
「ドォォォォォン!!!!」
あまりの威力に、辺り一面が煙に覆われる。
少し時間が経ち、煙が晴れていくとそこには立ち尽くすレンの姿があった。
「ハハッ、なかなか威力が出たネ…。いいリハビリができたヨ。感謝するネ」
あまりの爆発の威力に、中庭は大きく陥没しその中心には血を吐きうつ伏せに倒れるゴウの姿があった。
「魂結構使っちゃったし、アンタのも貰うネ。なかなかうまそうヨ」
そう言うとレンは掌をゴウに向け突き出す。
そして、掌の口は透明な魂に噛み付くとムシャムシャと音を立てながら魂を喰らい尽くしてしまった。
「これはなかなかうまいネ…満足したヨ。それじゃネ」
レンはそう言うと、陥没した地面を登り壊れた廊下の中へと戻って行った。
続く。
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