第65話 レンvsゴウ
「いくぞ…龍神の舞!!」
ゴウ・リンは右手の拳を左の掌に合わせ目を閉じる。
すると、ゴウ・リンの体は凄まじい量の赤いオーラに包まれはじめた。
「天魔流…俺がここで全滅させてやる…!!いけ、衝龍波!!」
そう叫ぶと、ゴウは両手のひらを前に突き出す。
その瞬間、ゴウの手から赤い龍の形をした衝撃波が勢いよく放たれた。
「龍神の舞…懐かしいネ」
レンはどこか余裕そうな表情を浮かべ、向かってくる衝龍波を見つめている。
そして、衝龍波が目の前まで迫ってきたその時だった。
レンは一瞬にしてその場から消え去る。
「ほう…速いな…」
目標を失った衝龍波はそのまま後ろの瓦礫へとぶつかり、大きな爆発を起こした。
「隙ありネ…」
次にレンが現れたのは立ち尽くすゴウの真後ろだった。
レンは手に持ったナイフを素早くゴウの首筋に振り下ろす。そして、ナイフがゴウの首筋に当たったその瞬間だった。
辺りにガキン!と大きな金属音が響き渡り、レンのナイフはポキっと根本から折れてしまった。
「…!」
予想外の硬さに、レンは少し驚いた顔を浮かべ後ろに下がる。
「ハハハ…!オーラを纏った俺の体は鉄よりも硬い。そんなナイフ如きじゃ俺の体には傷はつけられんぞ!!」
ゴウはレンの方へ振り返ると、素早い動きでレンの目の前へと踏み込む。そして、レンに向けオーラを纏った薙刀を振り翳した。
「少し硬くて驚いたヨ…アンタの事ちょっとナメてたネ」
そう呟きながら、レンはゴウの薙刀を軽やかな動きでかわした。
「随分と余裕そうだが…いつまでその余裕が持つか、試させてもらうぞ…!!」
そう言うと、ゴウは何度もレンにむけ薙刀を振りかざしていく。
レンはひらひらと薙刀を避け、様子を伺っていた。
「まだまだ余裕そうだが…これはどうかな…!!」
ゴウは一度後ろに下がると、薙刀の先にオーラを集め始めた。
「いくぞ…!衝龍斬!!」
ゴウは力を込め、勢いよく薙刀を振る。
その瞬間、薙刀から赤い斬撃がとてつもないスピードで放たれた。
「…!」
あまりの速さに、レンはギリギリの所で斬撃を避ける。
体勢を立て直しふと前を見ると、目の前までゴウの拳が迫ってきていた。
「捉えたぞ…ネズミめ…!!」
レンは咄嗟に腕をクロスする。
その瞬間、レンの腕に重い鉄球のような拳が勢いよくぶつかった。
「っ…!!」
そのままレンは後ろに吹き飛ばされ、先程ゴウと遭遇した廊下の壁に再び叩きつけられた。
あまりの勢いに、レンはそのまま廊下の反対側の壁さえも突き破り、少し転がった所でうつ伏せに倒れた。
「ハハハ!!どうだ?俺の拳の威力は…!!流石のお前も余裕は無くなってきただろう!?」
ゴウは高笑いを浮かべ廊下に開いた穴を通り抜けていく。
廊下の反対側の壁の向こうには、全く同じ構造の中庭が広がっており、その中央にレンは倒れていた。
「今のは…なかなか…効いたヨ…」
そう言いながら、レンはゆっくりと体を起こす。
ニヤリと笑みを浮かべるレンの頭部からは赤い鮮血がポタポタと滴っていた。レンは左腕を押さえながら立ち上がると、顔の鮮血を右腕で拭き取った。
「今のを喰らってまだ立ち上がれるとは…恐ろしい男だ。やはりお前らはここで殺しておかねばならん…!!次こそは仕留めてやるぞ!!」
そう言うと、ゴウは攻撃の姿勢を取る。
「俺も…あんたの事ナメすぎてたネ…ちょっと本気でいくヨ…!!」
そう言うとレンは右手のひらを上に向け、ギロリとゴウの方を睨みつけた。
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「なー、ヤン兄、俺たちずっとここで待機かよー?流石に暇だぜ…」
そう言い、大きく伸びをするのは黒いカンフー服に身を包んだ短い赤髪の若い男だった。
「まぁ落ち着け、チャンよ。今頃天魔流の連中が中で大暴れしてくれているはずだ。帝王は間違い無く奴らが殺してくれるだろうよ。それに…今回の目的は"帝王を殺す事だけじゃない"。分かってるな?」
赤髪の男の隣に立つ、同じカンフー服に身を包んだ少し長めの黒髪の男は手に持つリンゴをムシャムシャと食べながら問いに答える。
「"天魔流の実力を図る"…だっけ?ま、確かに奴ら相当強いみたいだし、"あの人"が警戒するのも分からなくは無いけどさ…」
「"あの人"は相当警戒心高いみたいだからな…"邪魔になりそうな連中"の実力は知っておきたいんだとよ」
「ふーん…ま、計画が計画だからな…そりゃ神経質にもなるか」
「あぁ…。俺たちはあの人の"計画の果て"が見たくて"国や家族まで捨てる"んだ…今はまだ下手な事はせずあの人の言葉に身を委ねるべきだろう」
「そっか…それもそうだな。はぁ…それにしても暇だぜ…」
チャンと呼ばれる男は大きくため息をつき肩を落とす。
「まぁ、確かに暇だ。奴ら、早く帝王を殺してくれるといいんだが…」
リン家二男、ヤン・リンはその場に座ると下に見える帝王の宮殿を静かに見下ろした。
続く。
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