第63話 リン家長男、ゴウ・リン
レンは他のメンバーを後ろ目に、エントランス正面右下の扉を開ける。その扉の先には長い廊下が広がっており、廊下の奥には大きな鉄の扉が見えた。
「………」
レンは少しあたりを見渡すと、鉄の扉へ向けて駆け出す。
その時だった。レンの目の前に、人影が二つ飛び出してくる。
「ここから先へは通さん…!!」
突如現れた護衛軍の兵士達はレンに向け薙刀を振りかざす。
レンは冷静に兵士達の動きを観察し、その場で飛び上がり薙刀を軽々とかわした。
「なっ…!!」
レンはニヤリと不気味な笑みを浮かべ、背中につけたナイフを取り出す。その瞬間だった。
「衝龍波!!」
赤い龍の形をした波動がレンの元へと向かってくる。
「ちっ…!」
空中にいたレンは避けきれないことを悟り、腕をクロスさせる。
そこに勢いよく衝龍波がぶつかった。
「ドォン!!」
大きな衝撃音と共に、レンは廊下の右側の壁にぶつかる。
その衝撃で廊下の壁は崩れ、レンは廊下の外へと弾き出されてしまった。
「全く、舐められたもんだ…。たったの五人で我がサイの国の宮殿へ乗り込んでくるとは」
砂煙の中、一人の男が廊下の壁に開いた穴を潜りレンの元へと近づいてくる。どうやら廊下の壁の向こうは外に通じていたようで、そこは広く、足下には芝生の生えた真四角の中庭だった。
「それに…まさか護衛軍がここまで使えない連中ばかりだったとは…なぁ、貴様ら」
長い髪を後ろで結び、左目に大きな傷痕を携えた赤いカンフー服の大男は咥えていたタバコを足下に捨てると勢いよく踏み潰す。
すると、男が足を下ろした地面はドォン!と大きな音を立て勢いよく陥没してしまった。
「ゴウ様…!!」
大男にギロリと睨まれ、護衛軍の兵士達はその場に膝をつく。
「ここはいい…貴様らは他のネズミどもを殺しに行け。親父にもしもの事があってみろ…。貴様らとその家族皆命は無いと思え…!!」
あまりの凄みに、護衛軍の兵士達は言葉を失う。
こくりと頭を下げると、兵士達は素早く宮殿の中へと戻っていった。
「さて…我々にも威厳というものがあってな…このまま貴様らに好き勝手させるわけには行かないのだよ。それに…"裏切り者の弟達"に兄としてきっちりと"教育"を施さなければならんしな…」
ゴウは首をボキボキと鳴らしながらレンの方を見つめる。
その時、瓦礫の下からレンが勢いよく飛び出してきた。
「お前、誰ヨ。お前も護衛軍の兵士カ?」
「ほう、その訛り…お前もサイの国出身か。…我が国の生まれであるならば覚えておけ。我こそは次期帝王となる男であり、誇り高きリン家の長男…ゴウ・リンだ!!」
ーーーーーーーー
その頃、サイの国宮殿前…。
「どうした、何の騒ぎだ…?」
「どうやら宮殿に天魔流の連中が乗り込んだらしい…!!こりゃ大事件だぞ!!」
宮殿の前には騒ぎを聞きつけた街の人々が集まりガヤガヤと様々な会話が飛び交っていた。
「天魔流が!?流石の天魔流でもリン家に喧嘩売るのは無謀じゃ無いのか…?」
「あぁ、特に長男のゴウがいる限りリン家を落とすのは不可能だろうな…」
「でも、現に宮殿に入られてる訳だろ?もしかしたら、天魔流なら落とせるかもしれないぜ!!」
「そうなったら大事だ!…だが、殆どの民衆はそれを望んでるだろうな…」
「あぁ…そうだな。ありゃ十年以上前か…。前王家のヤン家が突如何者かに"皆殺し"にされ王家が親族のリン家に移された…。その日から独裁的な政治が始まり、"華の国"と呼ばれていたこの国は華やかさを失い貧富の差が激しくなっちまった…」
「あぁ、それに護衛軍の奴らも好き勝手やり放題…。リン家に恨みのある奴も多いだろうな」
「噂じゃヤン家を皆殺しにしたのはリン家って話だぜ…」
「きっと天魔流に依頼したのも恨みを持つ国民の誰かヨ!天魔流は金さえ払えば何でもしてくれるって噂ネ!」
「そうらしいな。こりゃあ面白いことになったぞ…!!」
ーーーーーーー
「ガハッ…は、離せ…」
「ほらよ」
ブルはそう言うと、右手に掴んでいた護衛軍の兵士を思い切り廊下の壁へと投げ飛ばした。
「か、壁…!!」
兵士は勢いよく壁にぶつかり、その場に倒れ込んだ。
「ったく、こんな狭い廊下で襲ってくるなんて、めんどくさいわね…」
「あぁ…戦い辛ぇったらありゃしねぇ」
「こっちの廊下は部屋が沢山あるみたいね…一つ一つ探す?」
「一応な…どこかに隠れてるかもしれねぇしよ。…まぁ一番可能性があるのはレンが向かった廊下の先かエントランス二階の正面扉の先だろうがな…」
「そうね…。でも、もしかしたらもう宮殿から逃げ出してるかも」
「ま、そん時はそん時だ。探しゃあいいし、一応ヤン・リン達が控えてるみてぇだからな」
「そうね…とりあえずレンとゼクスに任せて私たちはゆっくり探しましょ」
「だな」
そう言うと、二人は廊下に並んだ部屋の扉を開けた。
続く。
投稿は不定期で行います。




