第62話 正面突破
「でもどうする?正直に正門から入るか、どこかの壁を壊して入るか…」
「どうやら罠は本当に解除されてるみたいだからな…正面からでもいいと思うぜ。お前らはどう思うよ」
ブルに問いかけられ、ゼクスとレンはフン、と鼻息を漏らす。
「そんなもん、正面突破に決まってんだろ。罠が無ぇってんならまわり道なんてめんどくさい真似する必要ねーし。なぁ、レン」
「その通りネ。正面から突っ込んで邪魔する奴らは殺せばいいヨ」
そう言うと、レンは手をボキボキと鳴らし笑みを浮かべた。
「…ま、聞くまでもなかったね。ただし、気をつけるんだよ!罠が宮殿のどこに貼られてるか予想できないしいくつ設置できるか分からない。罠に掛かったら、死ぬと思っていた方がいい」
「そうね…気をつけましょう」
「あぁ、そうだな…」
「…っしゃあ!それじゃあ行くぜ!正面突破だ!!」
大きな掛け声と共に、ゼクスとレンは駆け足で宮殿へ駆け込んでいく。
「あ!ちょっと…!!」
「ったく…子供じゃないんだから…。ま、あの二人なら大丈夫でしょ」
「あぁ、心配いらねぇよ…。あいつらが派手に暴れてくれてる間に俺たちで王を探して殺しちまおうぜ…。もしかしたらこの動乱に紛れて逃げようとしてるかもしれねぇしな」
「そうだね…逃げられるとめんどくさいしちゃっちゃと探して殺しちゃおう。…ま、一応依頼主のヤン・リン率いる反乱軍が控えてくれてはいるみたいだし心配はしなくていいと思うけど…」
そんな会話をしながら三人が宮殿の正門を潜ろうとしている時だった。宮殿内エントランスの階段を駆け上がっていくゼクスの姿が、フッとその場から消え去った。
「え?」
突然の事に、三人は歩みを止める、
少し後ろにいたレンも、その場で動きを止めた。
「おい、あれって…」
「もしかして…」
「…いきなり罠に掛かってる!!?」
あまりの驚きに三人はポカンと口を開けたままその場に立ち尽くす。少し後ろでそれを見ていたレンはその場で転げながら笑い声を上げていた。
「おいおい…さっき罠に掛かったら死とか話してたよな…」
「ま、まさか入って数秒で罠に掛かるなんて…レン爆笑してるし」
「は、はぁ…だからあれほど気をつけてって言ったのに…。ま、まぁゼクスなら大丈夫だよ、きっと。さっき"血"も集めてたし…。うん」
そんな会話をする三人を横目に、レンは階段下正面ににあった扉を開け奥へと進んでいった。
「と、とりあえず俺たちも行こう。俺はいい感じで"化けられる"相手を探すから、二人は王を探して。内かあったら連絡よろしく!じゃ!」
エルはエントランスの左側にあった扉を開け奥へと進んでいった。
「…さ、俺たちは王を探すか」
「えぇ。私は上の階が怪しいと思うけど…」
「まぁ罠もあったしな」
「とりあえず、右の扉行きましょうか」
「あぁ、そうだな。上に行きたきゃ天井ぶっ壊せばいい話だしよ」
ブルとキャサリンの二人はエントランスの右側にある扉を開き歩を進めた。
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「いってぇ…んだよここ…」
ゼクスは腰を抑えながらゆっくりと立ち上がる。
あたりを見渡すと、そこはどうやら牢屋の中のようで薄暗い空間の中で蝋燭の火だけが怪しく揺れていた。
「いやー、いきなり獲物がかかるとは驚き驚き…」
そう言いながら牢屋へ近づいてきたのは先程の男、バオ・ランバイだった。バオ・ランバイの後ろには十名ほどの護衛軍兵士と、もう一人、紫色のチャイナドレスを身につけた派手な化粧の女性が立っていた。
「テメーはさっきの…おい、ここから出しやがれ!」
「ははは!そう言われて簡単に出すわけがないでしょう!それよりあなたに紹介したい方がいるのです。さ、こちらへ…」
バオ・ランバイに誘われ牢屋に立ったのは先ほどのチャイナドレスの女性だった。
「ふーん…こいつが天魔流のゼクス…なかなか可愛い顔してるネ…」
その女性は牢屋に顔を近づけると、まじまじとゼクスの顔を見つめる。
「なんだ?この化粧の濃いおばさんは…」
ゼクスは後退りながら明らかに嫌な顔を浮かべる。
「お、おば…!失礼ネ!!私はまだ30ヨ!!全く、失礼な奴…!!」
「おやおや、言葉には気をつけた方が良いですよ。彼女は気が短いですから…」
「だから、コイツ誰なんだ?つーかここどこだよ!!」
「…まぁいいでしょう。彼女はエイ・リン。帝王一族、リン一家の長女様です」
「長女…?ってことはヤン・リンの姉貴ってことか…」
「わかったカ?私はリン一族の長女…下手な事を言うと…」
エイは牢屋の前に近づくと、ガン!と思い切り牢屋の檻に手を当てる。
「殺すぞ」
鋭い眼光でエイはゼクスを睨みつけた。
そんなエイを見て、ゼクスはニヤリと不適な笑みを浮かべる。
「…それで?そんなお偉い様が何のようだ?」
「彼女は天魔流に興味がおありのようでな…お前らを"ペット"にしたいそうだ」
バオのその言葉を聞き、ゼクスははぁ?と声をあげる。
「ペット?何だそりゃ」
「彼女は気に入った人間を"ペットにして痛ぶる"のがお好きな方でしてね…老若男女関係なく気に入れば誰でも"ペット"として飼育し捨ててしまう…。それが彼女の趣味なのですよ」
「そう言うことヨ…私は気に入った人間は絶対に手に入れペットにする…。だからお前も私のペットになるネ…!!」
「………」
その言葉を聞き、ゼクスは黙り込む。
「おや、どうしました?ペットにしていただけるのがそんなに嬉しいのですか?」
バオのその言葉に、周囲の兵士たちは笑いを浮かべる。
その時だった。
「あーはっはっは!!お前それ本気で言ってんのか!?馬鹿にも程があるぜ!!」
ゼクスは誰よりも大きな笑い声をあげエイの方を指差す。
「なっ…!何を…!!」
「俺がペットになれって言われてはいそうですかなんて言うわけねぇだろ!!よりにもよってこんなおばさんの!!」
「誰がおばさんヨ!!!」
「あはは…。…いいか?宣言してやる。お前は今、ここで死ぬ」
ゼクスは突然真顔になると、鋭い眼光でエイを睨みつけ鎌を突き出す。
「はぁ?何言ってるカ。お前はまずその牢屋から出られない…負け犬の遠吠えにしか聞こえないネ」
「ふん、何とでも言ってろ。…血は足りるな。さぁ、行くぜ…"血界・斬血"!!」
ゼクスの声と同時に、ゼクスの体は赤黒い不気味なオーラに包まれ始めた。
「な、何だ!?あのオーラは…!!」
「な、何をする気ヨ…!!」
あまりの邪悪なオーラに、エイは数歩後ずさる。
(ほぅ…これはヤバそうだ…!)
バオは何かを察知し、素早くその場を離れ地下牢を出て行った。
そんな中、オーラに包まれているゼクスはその場で鎌を構える。
その瞬間、赤いドーム状の結界が地下牢からエイの後ろにいる兵士たちまでの範囲を覆い尽くした。
「赤いドーム…!まさか…!!お前たち、離れるネ!!」
何かに気づいたエイは咄嗟に振り返り声をあげる。
「もうおせーよ。お前達はすでに俺の必殺領域の中だ」
ゼクスはその場で鎌を振り切る。
その瞬間だった。
ドームに入っていた地下牢の鉄格子や壁に大きな切れ込みが入り、また、同じくドームの中にいたエイ達の首に一筋の線が切り込まれた。
「あばよ」
ゼクスがそう呟いた瞬間、エイと兵士たちの頭部は体から切り離され頭部を失った体たちは次々と倒れていく。
それと同時に、ゼクスの前を塞いでいた鉄格子は切れ落ち壁には大きな斬撃の跡が刻み込まれた。
「ふぅ、いきなり血を使う事になるとはな…って、バオ・ランバイがいねぇ!?あいつ、逃げやがったな…!!待ちやがれ、バオ・ランバイ!!」
ゼクスはそう声を荒げながら地下の廊下を駆け出して行った。
続く。
投稿は不定期で行います。




