第60話 帝王の宮殿へ
天魔流の五人は宮殿の前に立つと、大きく聳える入り口の門に目をやる。
「なかなかでかい宮殿だな…」
「まぁ帝王が住んでる場所だからね」
「出迎えはなしか…?てっきり大勢に待ち構えられてるかと思ったが…」
「きっと何か企んでるヨ…姑息な奴らネ」
「ん…あれ見て!」
キャサリンは何かに気づき指を指す。
キャサリンの指の先には宮殿の入り口があり、その奥にニコリと笑みを浮かべる男の姿があった。
「やぁやぁ、ようこそおいで下さいました天魔流の皆さん!私帝王護衛隊の"副隊長"をしております"バオ・ランバイ"と申します。以後お見知り置きを…」
黒い長髪を後ろで結び、ニコリと爽やかな笑顔を浮かべている糸目の男は深々と頭を下げる。
「ほぉ、副隊長さんがわざわざお目見えってか?」
「みたいネ…」
ゼクスとレンはその男を見ると、腕を回し準備運動を始めた。
「ちょっと、むやみやたらに突っ込まないでよ!?」
「そうだよ、二人とも…。奴らが何を考えているかわからないから慎重にね…」
「分かってるって…で、副隊長さんがわざわざ何のようだ?」
「いえね…実は我が帝国の王、ヒョウ・リン様があなた方にお会いしたいと申しておりまして…」
思っていたのと違う返答に、ゼクスは思わずはぁ?と声を上げた。
「なんで帝王側が俺らに会いたがってんだ?意味わかんねぇな…」
「落ち着くネ、ゼクス。多分何か"罠"への誘導ヨ」
「俺もそう思うぜ…おそらく帝王は俺たちが自身を殺しに来たことを分かっている…。それなのにわざわざ招き入れるって事は…何か俺たちを"対処できる策"があるんだろうよ」
「………」
バオはゼクス達の会話をニコニコと不気味な笑顔のまま聞いている。
「…ねぇ、一つ試してみてもいいかな?」
「ん?なんだ?」
「まぁ見てなって」
エルはそう言うと、ブルにコソコソっと何かを耳打ちする。
「ほぉ、そりゃ面白い…任せとけ」
そう言うと、ブルは辺りを見渡す。そして、たまたま歩いていた通行人の男を見つけるとどんどんと近づいていく。
「な、何だお前…お、おい!やめろ!!」
すると、ブルは男の首を思い切り掴みゼクス達の方へ戻ってきた。
「おいおい、何するつもりだ?そいつどうすんだよ」
「こうすんだよ…!」
ブルは体に力を込める。
次の瞬間、ブルは手に握っていた男を思い切りバオのいる宮殿の入り口へと放り投げた。
「うわぁぁぁあ!!?あんた!!助けて…!!」
男の体が宮殿の入り口に差し掛かった時だった。
突然男の体は跡形もなくその場から消え去った。
「な…あいつ消えたぞ!?」
「何?どうなったの!?」
「なるほど…そういう事だったネ…」
「レンは分かってくれたみたいだね…。これが奴らの張ってた罠さ」
「罠?」
「そう。奴…もしくは奴等は"宮殿の入り口"にトラップを張ってたんだよ。"触れた瞬間強制的に移動させられる"ね…。それが能力なのかなんなのかは分からないけど」
「はー、なるほどな…上手い事嘘ついて俺たちを宮殿に誘い込み強制的に場所を移動させて殺すか捕まえるかしようってのが狙いだった訳だ…。ってかエル、お前よく分かったな」
「だって普通、自分たちを殺しにきた奴を招き入れないでしょ?ま、相当自分の腕に自信があるなら別だけど…。それに、前に"設置型の能力"があるって聞いた事あったから…」
「でも本当に設置型の能力だとしたら面倒ネ…見ただけじゃ設置されてるか全く分からないヨ」
「確かにな…。だがまぁとりあえずこれで入り口から入るのは無理ってのが分かったからな。どっか適当にぶっ壊して別から入ろうぜ」
そう話している時、今まで沈黙したままゼクス達を見つめていたバオが突然手を叩き始めた。
「お見事!私のトラップがこんなにすぐに見破られたのは初めてだ…賞賛に値しますよ!」
そう言うとバオは右手を上に上げパチン、と指を鳴らす。
その瞬間、宮殿の入り口は黒いオーラに包まれ、オーラは煙のように消えていった。
「私のトラップを見破ったご褒美に入り口のトラップは解除して差し上げましょう。それと…私からのプレゼントです」
バオは両手を上にあげると、パン!と手を叩く。
その瞬間だった。宮殿の屋根から黒い人影が大量に降りてきた。
「…!!」
ゼクス達は戦闘の体勢を取り辺りを見渡す。
すると、先程と同じ黒いカンフー服に白い仮面をつけた者達がゼクス達を取り囲み薙刀を構えていた。
「さ、楽しんで下さいね。もし生きていたらまたお会いしましょう。…あ、そうそう。私のトラップは"一つだけとは限らない"のでお気をつけて。では…」
そう言い残し、バオは宮殿の中へと消えていった。
「へへ、囲まれちまったな…」
「ま、準備運動にはちょうどいいネ」
「そうね…。私も久しぶりに能力使おうかしら…」
「キャサリンの能力なんて久しく見てねぇなぁ…。ま、俺のもだけどよ」
「ゼクス、レン、キャサリン、ブル、戦闘は頼んだよ!俺はサポートするからさ」
「おうよ、任せとけって。…さぁ、行くぜ!!」
続く。
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