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ドリームワールド ー夢の世界の勇者達ー  作者: はるく
青龍団と赤龍団編
56/89

第56話 エルザの師匠

「い、一番隊って…あ、あの!?」


アランは驚いた顔を浮かべ、セマフの顔を見る。


「あの、と言われてもよく分からないが…一応本物の一番隊隊長だ」


「す、すごい…本物の一番隊隊長が目の前にいるなんて…!!なぁ、リサ!!これ、夢じゃないよな!?」


「あんた興奮しすぎよ…ほら、これで夢じゃないって分かるでしょ」


そう言うと、リサは思い切りアランの頬をつねった。


「イテテテテ!!!い、痛い!!夢じゃないぞ!!!」


「あはは!アラン興奮しすぎだよ!」


「分かる…分かるよアラン!俺も今すっごい興奮してる!!」


アランと同じくベルも目を輝かせセマフの方を見ていた。


「…すいませんね、セマフさん。この子たち、勇者団に憧れてるみたいで」


「いや、いいんだ。憧れを持ってくれるなんて嬉しいじゃないか!今の時代、勇者団に憧れる若者など少なくなっているからな…」


「確かにそうですね…今回の募集も人が集まればいいんですけど…」


「そうだな…」


そんな事を話している時だった。


「セマフ隊長!レオンさん!!」


村の奥から勇者団の兵士達の声が聞こえてくる。


「ん?あれは一番隊の兵士達…何か見つけたのか?」


「こっちの建物の中で意識のある人を見つけました!!」


「意識のある人…?まだこの村に残ってる人がいたのか。よし、連れて来てくれ!!」


「はい!!さ、こちらへ…」


勇者団の兵士達に肩を支えられ広場へ歩いて来たのは白く長い髭をはやし、長い白髪を後ろで結んだ老人だった。


「す、すまんな…迷惑をかけてしまって…」


「いえ、いいんですよ。さ、ゆっくりでいいですからこちらへ…」


「あの人…この村の人か?」


「まだ残ってる人がいたのね…エルザ、知ってる人?…エルザ?」


エルザは歩いてくる老人の方を見て驚いた顔を浮かべる。

そして立ち上がり老人の方へと駆け寄っていった。


「だ、ダンパさん!!無事だったんだね!!」


エルザは老人の前に立つと、満面の笑みを浮かべ老人に話しかける。


「お主は…お主はまさか…エルザ、エルザか!?」


老人は勇者団の兵士達から離れるとエルザの顔に手を当てる。

そのままお互い見つめ合っていた時、老人の目から涙が零れ落ちた。


「エルザ…無事に生きていてくれたのだな…!!わしは…わしは嬉しいぞ…!!」


「ダンパさん…私も、ダンパさんが無事で嬉しいよ…!!」


涙を流す老人、ダンパの顔を見て、同じくエルザも涙をこぼす。

そしてエルザはダンパの胸に顔を埋めた。


「すまんな…わしらが無力なせいでお前たちに大変な思いをさせてしまって…」


「ううん…ダンパさん達は悪くないよ…!悪いのは全部暗黒騎士団の連中だよ…!」


「そうじゃ…暗黒騎士団の連中はどうなったのじゃ?姿が無いようじゃが…」


「勇者団の人達が倒してくれたよ…あと、私の仲間たちも一緒にね!」


「そうか…!!やっとこの村も奴らの手から解放されるのじゃな…」


「うん…長かったけど、やっと解放されたんだよ!」


「…そう言えば、ここにいるのはお主だけか?テラとヘナは一緒じゃないのか?」


「うん…実は村から逃げた後、すぐに二人と別れたんだ…。二人は王都の方へ行くって言ってた…。それ以来会ってないから今何してるかは分からない…」


「そうだったのか…二人も無事ならいいんじゃが…」


「あ、あの…」


二人が話をしている時、横にいた兵士達が申し訳なさそうに二人に声をかける。


「このお方は、君ののお知り合いで?」


「うん、この村の村人だよ!」


「そうだったのか!お話の途中で申し訳ないが、とりあえず広場の方へ移動しよう。どうやら怪我もしてるようだし…」


「そうだね…行こう、ダンパさん!」


「あぁ」


ーーーーーーーー


「って事で、この人はここジャカの村の村人で私の印術の師匠、ダンパさん!」


「へー、エルザの師匠さんなんだ!って事は相当凄い印術の使い手って事だよな?」


「うん、凄いよ…!なんてったって"超爆破の印"を生み出したのはこのダンパさんなんだから!」


「超爆破の印…そうだったのね…!」


「うん!ね、ダンパさん!」


「ま、まぁな…なんだか照れるのぉ…」


ダンパは恥ずかしそうに頬を赤らめ頭に手を当てた。


「ダンパさん、体力の回復はできそうですが…"失われた指"までは治す事はできないかもしれません」


ダンパの前にしゃがみ込む勇者団の兵士は俯きながらそう呟く。


「指…?」


エルザは不思議に思い、ダンパの手に目を向ける。


「っ!?ダンパさん、その手…!!」


エルザはダンパの指を見て驚きの顔を浮かべる。

ダンパの両手はそれぞれ人差し指と薬指が切り取られ、傷口には赤黒く変色した包帯が巻かれていた。


「あぁ、これか…。暗黒騎士団の連中に超爆破の印を教えろと脅されてな…抵抗したらこのザマじゃ。…わしは痛みに耐えきれず超爆破の印を奴らに教えてしまった…すまぬ…」


ダンパはそう言うと手のひらをぎゅっと握りしめ下を向く。


「暗黒騎士団…なんて下衆な奴らなの…!!許せない…!!」


「まぁまぁ落ち着け、もう終わった事じゃ。兵士さん、指は治らんくてもいい。もうわしも老いぼれじゃ、指など使うことももう少ないじゃろうからな」


「…そうですか。では回復の印を」


兵士はダンパに手を翳し、回復の印を発動する。


「………」


エルザは悔しそうに手を握ったまま、アラン達の横に座り込んだ。


「………」


「………」


「…あ、ごめんね、なんか暗い感じになっちゃって…せっかくダンテ達を倒して一安心って時に…」


「いや、いいんだ。…でも良かったな、師匠と再開できて!」


「…うん!まだ気持ちが晴れない所もあるけど…とりあえず村も解放できたし師匠とも会えたし…よかった!ありがとね、みんな!」


エルザはニコッと笑みを浮かべ三人にむけ頭を下げた。


ーーーーーーーー


「なるほど…君達は青龍団を倒すために仲間三人で対抗組織を作ったと…」


「まぁ…そんな所だな…」


「そうか…いやー、なかなか勇気のある人達もいたもんだ。君達も是非勇者団に欲しい人材だね!もしよかったら勇者団に来なよ。勇者団に入れば青龍団と出会える確率もバーンと増えるだろうし」


「勇者団か…ま、考えとくよ。それにしてもダンテを一瞬で倒しちまうなんて、相当強いんだな…」


「いやー、たまたま能力の相性が良かっただけだよ。…さ、聞き取りはこれでおしまい!怪我してる所ごめん、ありがとね!」


「あぁ」


(赤龍団か…是非勇者団に入って欲しいメンツだな…)


そんな事を考えながらレオンはアラン達の方へと向かった。


ーーーーーーーー


「さ、これである程度聞き取りは終わったね…アラン君、君達この後どうするんだい?」


「この後は…どうする?皆んな」


「うーん…とりあえず勇者団本部のある城塞都市アルハリアに向かうって事になるのかしら…」


「そうか…それなら君達に一つ頼みたいことがあるんだけど…聞いてくれるかな?」


「頼み…ですか?」


「あぁ、断ってくれても構わない。少し"危険な頼み事"だからね」


「危険な…」


「頼み事…」


その言葉を聞き、四人は不安気な顔を浮かべる。


「レオン、本当に彼らに頼むのか?まだ勇者団でもない子供達だぞ…?」


「確かにそうですが…アラン君は神獣の力を継いでいる将来性のある子…それに彼の仲間達も相当な力を有してる。そこら一般の兵士達よりも強力なね」


「まぁ確かにそうだが…」


「それにこれは勇者団の入団試験も兼ねているんですよ。彼らがどれくらいやれるのか…実際この目で見ておきたいですからね」


「…分かった。だが、絶対に彼らに危険が及ばないよう注意してくれ。もし何があればお前の責任問題になるからな」


「分かってますって…」


ニコッと笑みを浮かべると、レオンはアラン達のほうへ顔を向ける。


「さ…頼み事の内容だけど…君達、"天魔流(てんまりゅう)"って組織を知ってるかい?」


天魔流(てんまりゅう)…?」


「いえ…知らないと思います…」


「そうか…天魔流と言うのは最近巷を騒がせてる犯罪組織でね…殺人、強盗、誘拐…金を積まれれば何でもやる凶悪な組織だ。元は田舎の武道流派の集まりだったらしいんだけど…」


「そんな組織があるのか…」


「なんだか怖いな…」


「うん…。それで、頼み事なんだけど…どうやらアルハリアの入り口にあるアルハリア城下の町に天魔流のメンバーがいるって情報が入ってきたみたいなんだ」


「アルハリアの城下に天魔流が…?」


「一体なんの目的なんですか?」


「それがいまいちこちらでもわからなくてね…君達にはそれを調べるのを手伝って欲しいんだ」


「え!?俺たちに…ですか!?」


「勇者団でも無いのに…いいんですか!?」


「そこがミソなんだよ!君達は勇者団じゃない…だからこそ諜報やら尾行なんかは最適な存在なんだ!実力もかなりあるだろうしね」


「ま、まぁ…そう言われれば…」


「そうなのかしら…?」


「頼む!君達の力が必要なんだ!もちろん、君達には危害が加わらないようにするし、他にも協力してくれる人達を探しておくから!」


レオンは両手を合わせアラン達に頭を下げる。


「あ、ちょっと!頭なんて下げないで下さい!もちろん引き受けます!さっき助けて頂いたし、それに…憧れの勇者団の隊長さんから直々にされた頼み事なんて断れるわけないですよ!なぁ!」


「…えぇ、そうね!断る理由は一つも無いわ!」


「だな!」


「…うん」


「みんな…ありがとう!とりあえず今日は皆んなガベラ村まで送り届けるよ。詳しい話はまたアルハリア城下に着いた時に。さ、今日はもう疲れたでしょ。今から馬車を寄越すから待っててくれ」


そう言うとレオンは村の奥へと歩いて行った。


「…すまないな、急に頼んでしまって」


アラン達に話しかけてきたのはセマフだった。


「セマフさん!…いえ、全然大丈夫です!むしろ嬉しいくらいですよ!」


「そうか…それならいいんだが…。レオンはかなり自由奔放なやつでな…全てその場のノリと感情で決めてしまう悪い癖があるんだ。ま、それが奴のいい所でもあるんだがな…」


「…セマフさん達はこの後どこへ?」


「俺は一度自分の故郷に戻ろうと思ってる。一応そこでは村長も兼任しているからな。それに…たまには一人娘に顔を見せてやりたい」


「へー、セマフさん娘さんいらっしゃるんですね…」


「あぁ、ブラウンリバーの向こう…レインズと言う村にな」


「え…?」


「レインズ…!?」


その言葉を聞き、アランとリサは顔を見合わせる。


「どうしたんだ?二人とも…」


そんな二人をベルは不思議そうに見つめる。


「レインズにいる娘さん…」


「村長の娘さんって…もしかして…」


「あの…セマフさんの娘さんってもしかして…"ユリーナ"って名前じゃないですか?」


「おぉ、そうだ!私の娘を知っているのか?」


「知ってるも何も、旅を始めて一番最初に寄ったのがレインズだったんです!そこでユリーナと出会って、一緒に山賊を追い払って…」


「ユリーナに会っていたのか!それは奇遇だったな!村に帰ったら君達の事をユリーナに伝えておこう」


「えぇ、元気にやってるって伝えて下さい!」


「分かった、伝えておこう。…そうか、まさか君達がユリーナの知り合いだったとは驚いた…」


セマフは顎に手を当て改めてアラン達の方へと目をやる。


「よし、それじゃあ私はそろそろ行かせてもらう。ユリーナには一言伝えておく。…勇者になれるよう頑張ってくれ。では」


そう言うと、セマフも同じく村の奥へと歩いて行った。


「へー、アラン達セマフさんの娘さんに会ったことあるんだな…」


「えぇ、旅を始めて一番最初の村でね!」


「まさかユリーナが一番隊隊長の娘さんだったとは…驚いた…」


「本当ね…凄い偶然もあったもんだわ…」


そんな話をしている時、アランはふとエルザの方へ目を向ける。

エルザはずっと俯いたまま会話に入る様子はない。


「…エルザ、さっきから思い詰めたような顔してるけど大丈夫か?…やっぱり心が晴れない所があるのか?」


「いや…実はさ…私…この村に残ろうと思ってるんだ」


「え?」


「この村に…残る?」


アランは少し驚いた顔を浮かべ、エルザの方を見た。


ーーーーーーーーー


「レオンさん、この図書館の地下にナックルが…!」


村を歩くレオンに駆け寄ってきたのは、二番隊の兵士だった。


「ナックル?第四支部のか?」


「えぇ。しかも誰かにやられたようで、気絶している状態でして…」


「…アラン君達か赤龍団の誰かが倒したのか。よし、とりあえず連行しよう。彼にも聞きたいことはいくつかあるからな」


「了解致しました…あ、それともう一つ。村の周辺を捜索していた時に暗黒騎士団の下っ端達を見つけて捕らえました。おそらく見張り役として村の周辺に配置されていたんでしょう」


「そうか、それじゃあ下っ端達も連行よろしく」


「はい、それでは!」


そう返事をすると、兵士は村の奥へと駆けて行った。


ーーーーーーーー


『ブラウンハーバー、勇者団第四支部』


「ガルドアさん、奴隷を所有していた金持ち達の拿捕と奴隷達の保護完了致しました」


三番隊の兵士はそう言うとガルドアに向け敬礼する。


「そうか、奴隷を所有してた金持ち共はどれくらいいやがったんだ?」


「大体、あそこに住む金持ち達の三分の一ほどですね…奴隷として保護された人達も百人以上います。奴ら"裏ルート"から奴隷を買って働かせてたみたいで…第四支部もそれに"気付かぬふり"だったようです」


「ひでぇ話だぜ…今まで気づかなかった俺たちにも責任はあるが…」


「まぁ、あそこは上層階級の人達ばかりが集まってる所で勇者団でも許可が無いと踏み入れられないですし…」


「ったく、それもどうかと思うぜ…。ま、とりあえず拿捕と保護御苦労さん。さっき連絡があってセマフさんがレインズに帰る前にここに寄ってくれるみたいだ。そしたらこの第四支部にいる犯罪者達の移送も始める予定だ。忙しくなるぜ?」


「は、はい!頑張りましょう!」


「おう、気合い入れてけ!」


「あ、それともう一つ…」


「ん?どうした?」


「保護した奴隷の中にガルドアさんと話がしたいと言う人がいたものでお連れしたんですが…今お時間大丈夫でしょうか?」


「俺と話…?まぁいい、入れてくれ」


「はい、どうぞ!お入り下さい!!」


兵士がそう声をかけると、第四支部司令室の扉がゆっくりと開く。

入ってきたのは黒いローブを見に纏い、フードで顔を隠した怪しげな男だった。


「ん…?なんでローブなんて着てるんだ?」


「何やら顔を隠したいとおっしゃられまして…」


男はガルドアの前に立つと、フードに手をかける。


「久しぶりだな…ガルドア。立派になったもんだ…」


男はそう呟くと、フードを外しガルドアに微笑みかける。


「…!!ま、まさか…!!あんたは…!!!」


「まだ出るつもりじゃなかったんだがな…ま、いいだろう」


ガルドアは驚いた顔を浮かべ、その男の顔を見つめていた。


続く



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