第53話 救世主
ダンテはニヤリと不敵な笑みを浮かべると、勢いよく地面を蹴りアラン達の方へと向かっていく。
「早い…!!」
「さっきよりスピードが増してる…!!」
二人はその場から離れようと体を動かす。
しかし、すでにダンテは目の前まで迫ってきており二人は能力の範囲内に入ってしまった。
「くそ!体が!!」
「重い…!!」
「くらえ!!」
ダンテは動きを止めるアランに拳を放つ。
放たれた拳はアランの顔面にぶつかり、アランは後ろの建物の壁にぶつかった。
「アラン!!」
「てめぇも吹き飛べ!!」
そのまま体制を整え、ダンテはエルザに向けて蹴りを放った。
ダンテの足はエルザの腹部にぶつかり、エルザもそのまま後ろへ蹴り飛ばされてしまった。
「うあっ!!」
エルザは何度か地面にぶつかり、うつ伏せに倒れ込んだ。
「先にジャカの生き残りを動けねぇ様にしようと思ってたが順番変更だ!カルムの野郎には悪いが…テメェはいずれ俺たち暗黒騎士団の邪魔になる…。邪魔な芽は早めに取り除いとかねぇとなぁ…!」
ダンテはそう話しながらアランの方へと歩いていく。
「アラン!くっ…俺も手を貸さないと…!!」
ベルはごくりと唾を飲み、背中に挿した剣に手を当てた。
「さぁ、お前から殺してやろう…!!」
ダンテがそう呟いた時だった。
「やれるもんなら…やってみろ…!!」
その声と同時に、家の瓦礫の中からアランが勢いよく飛び出してきた。アランは拳を上げダンテの方へ走り込む。しかしアランの体はダンテの前で動きを止めてしまった。
「くそ…さっきみたいに動いてくれよ…!!」
「ははは!!そいつは無理だろうな!!いいか?今の俺はさっきまでの俺とは一味も二味も違う…!!本気になった俺の能力範囲で動けるやつなんかいやしねぇのさ!!!」
ダンテは再びアランに拳を放つ。
拳はアランの顔を捉え、殴られたアランはふらりとよろける。
「まだまだ行くぜ!!!」
ダンテはふらふらとよろけるアランに向け、何度も何度も拳を放っていく。倒れる暇も与えられないまま、アランはただただダンテの拳を顔に受け続けた。
「あ、アラン…!!」
倒れ込むエルザは顔を上げ地面を握りしめる。
(くそ…くそっ!何でこんな時に体が動かないの!?仲間が…仲間がやられてるのに…!!)
エルザは涙を流し地面に顔をぶつける。
(くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!!!)
再び体に力を込めるが、やはり体は上手く動かない。
悔し涙を浮かべ再びアランの方へ顔を向けた時だった。
エルザの視界に、剣を抜きダンテの元へ駆け込んでいくベルの姿が入り込んだ。
「ベル…!?」
ベルが剣を地面に突き刺すと、地面から太い植物の蔓が飛び出しダンテの方へと向かっていく。
蔓はダンテの後ろへ辿り着くと一度上へ上がり、そのままダンテの方へと突っ込んでいく。
「…ちっ、邪魔な奴だ」
ダンテはその場からジャンプし蔓を軽々と避けた。
目標を失った蔓は勢いよく地面にぶつかり辺りに砂煙が舞い上がる。ふらふとよろめいていたアランはばたりと仰向けに倒れ込んだ。
(今だ…!)
地面にぶつかった蔓はそのまま地中へと潜っていく。
そしてアランの真下から地上へと飛び出し、アランの体へと巻き付いた。
「リサ!頼んだよ!!」
「えっ!?ちょ…!!」
リサは突然の声に慌てて立ち上がる。
アランの体に巻き付いた蔓はそのまま上に伸びると、勢いよくアランを投げ飛ばした。
「う、嘘でしょ!?ベル!!やり過ぎよ!!」
投げ飛ばされたアランはそのままリサの方へと向かっていく。
リサは何とかアランの下に入り込むと、アランを受け止める姿勢に入った。
「全く…荒技すぎよ…!!きゃあ!!?」
そのままアランはリサにぶつかり、アランとリサはその場に倒れ込んだ。
「うひゃー…凄いことするな…」
エルザは少し引きながらその様子を伺っていた。
「いててて…アラン、大丈夫…?」
リサは慌ててアランの顔を覗き込む。
すると、どうやらアランは気を失っている様だった。
「…とりあえず生きてはいるわね…って…いったぁ!?治ったと思ってたのに今ので怪我悪化したじゃない!!どうしてくれんのよベル!!いたたた…!」
リサはお腹を押さえその場にしゃがみ込む。
「ごめん!リサ!でも、ナイスキャッチ!!」
「全く…あんたも無理はしちゃダメよ!!」
「うん、分かってる!!」
「すご…しっかりキャッチした…怪我悪化してるけど…」
一連の流れを、エルザはただ呆然と眺めていた。
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「何だ?お前が一番先に死にてぇか?植物野郎」
「俺が変わりの相手だ!!お前なんか…俺一人で十分だよ!!…きっと…」
ベルはブルブルと震える手で剣を握る。
それを見たダンテはニヤリと笑みを浮かべた。
「へっ…お前の威勢だけは認めてやる…だか、お前みてぇなのと遊んでる暇は無ぇ。今俺は…光の神獣を殺したくて仕方がねぇんだ!!」
ダンテは素早くベルの方へと走り込んでいく。
「…っ!!」
ベルは咄嗟に地面に剣を刺す。
「無駄無駄!!」
ダンテは一瞬のうちにベルの前まで駆け込み拳を振り上げる。
「死ね、植物野郎!!」
ダンテがそう声を上げた時だった。
ベルの前の地面から太い植物の根が飛び出してきた。
「根…!?」
ダンテの拳は植物の根にぶつかり、ベルは何とか攻撃を防いだ。
「ちっ…!!」
「ダンテ…どうやらお前が止められるの"動物"だけみたいだな…!!植物や無生物なんかは止められないんだろ!!」
ベルの前から飛び出した根はそのままぐるりとねじれ、勢いよくダンテの方へと向かっていく。
「…っ!!」
ダンテは咄嗟に腕をクロスし攻撃を防ぐ。
木の根にぶつかり、ダンテの体はそのまま後ろへと飛ばされた。
「すごい…!ダンテの能力は植物には効果が無いんだ…!!」
「止められるのは動いてる動物だけなのね…!!」
「どうだ!!」
ベルは地面から剣を抜き、構え直す。
「ふん…確かに動きを止められるのは生きてる"動物"だけだ、それも"ネズミ程度の小ささまで"のな。植物は止められねぇ。だが…それでもお前なんぞ俺の足元にも及ばねぇよ!!」
ダンテは再びベルの方へと駆け込んでいく。
ベルは駆け込んでくるダンテに向け、勢いよく剣を振った。
するとベルの剣は植物の蔓に変化し、ダンテの方へ向かっていく。
「無駄無駄!!」
ダンテは向かってくる蔓を腕で弾き飛ばすと、一気にベルの懐へ入り込み拳を振り上げた。
(くそ、止められない…!!)
そのままダンテの拳はベルの顔面にぶつかり、ベルは後ろへと吹き飛ばされた。
「ぐはっ…!!」
「無駄に時間掛けさせやがって…今楽にしてやるよ…!!」
ダンテはベルに歩み寄るとベルの首を掴み上に持ち上げる。
「くっ…!!」
「ベル!!」
「ベル!!!」
村の中に、リサとエルザの声が響き渡る。
ダンテに首を掴まれたベルはバタバタと体を動かし、何とかその場から逃げようと抵抗を続ける。
しかし、ダンテの手からは逃れることができなかった。
「このまま首を潰し切ってやるよ…すぐになぁ!!」
ダンテの指がギシギシとベルの首に突き刺さっていく。
「ぐぅ…!!ぐぅぅ…!!!!」
ベルは声にならない唸り声を上げ、体をバタつかせ続ける。
「ベル…ベル!!!」
エルザは何とか体を動かそうとする。
しかし、やはり体は動かない。
リサも剣に手をかけ立ちあがろうと体に力を込める。
しかし、腹部の怪我で上手く動けず、ただダンテ達の方を見つめることしか出来なかった。
「さぁ、死ね!!!」
ダンテが指に力を込め、ベルの首から血が滴ったその瞬間だった。
突然、ダンテの顔が横へと弾け飛ぶ。
ベルを握っていた手は緩み、ベルはその場に座り込んだ。
「ゲホッゲホッ!!…な、なんだ!?」
突然の事にベルは辺りを見渡す。
吹き飛んだダンテは少し離れた所で倒れ込み、驚いた顔を浮かべていた。
「な、なんだぁ…!?」
ダンテは地面に手をつきゆっくりと体を起こす。
その瞬間だった。
再び、ダンテの顔が横に吹き飛ぶ。
そして今度は、その場で上下左右に何度も何度も顔が弾かれて行く。
「な、何…!?何が起こってるの!?」
「ダンテの顔が…勝手に…!?」
突然の事に、リサとエルザも呆然とその光景を見つめる。
顔から大量の血を流し、ダンテはふらふらとその場でふらつき始める。
次の瞬間、ダンテの顔面が後ろへと弾け飛びダンテはそのまま仰向けに倒れ込んだ。
(な、なんだ…?俺は一体…何を…されてる…?)
ダンテ本人も状況が掴めず、ゆっくりと顔を上げる。
するとダンテの目の前には堂々と立ち尽くす人影があった。
「お…お前…は…!!」
その人影を見て、ダンテは驚きの表情を浮かべる。
「俺たちが忙しい間に随分好き勝手やってくれたみたいじゃないか、ダンテ…。今回は逃がさないぜ」
そうニコリと微笑んだのは勇者団二番隊隊長、レオンだった。
続く。
投稿は毎週火曜日と土曜日を中心に行います。




