第51話 アランとエルザ
「………」
ダンテは体を反らしたまま動きを止める。
そして、少ししてからゆっくりと体を戻した。
「…!」
よく見ると、ダンテの顔を覆う兜には大きくヒビが入っている。
(今の攻撃はダメージ入ったみたいだな…。みなぎる力のおかげだ…)
そう思いながら、アランは自分の右手を見る。
アランの右手の甲はズタズタに傷つき、赤い血が滴っていた。
(ただ今ので右手は大分ボロボロになった…攻撃できてもあと2〜3回だな…)
アランはズキズキと痛む拳をギュッと握りしめダンテの方へ目を戻す。
「…効いたぜ。今のパンチはよ…!」
ダンテはアランの方へ歩きながらそう呟く。
「………」
アランは様子を見ながらダンテとの距離を保つため後ろへと下がる。
「俺にダメージを与えたやつは久しぶりだ…楽しくなってきたぜ!!」
そう声を荒げると、ダンテは素早くアランの方へと近づいていく。
「くっ…!!」
アランは距離を保つため素早く後ろにジャンプし建物の屋根の上に乗った。
「ちっ、ちょこまかと…!」
(厄介な事に俺みたいな近距離タイプは奴の能力範囲内に入らないと攻撃できない…。でも、能力範囲内でもなんとか体を動かせることは分かった…なんとか隙を作った上で奴に近づいて攻撃する…これしかないな…!)
アランはふぅ、と息を整えダンテの方を見下ろす。
(闇と光は表裏一体…闇は光に強く光に弱い。逆も然りだ…。それだけでもやり辛ぇのに奴は神獣の力を持ってやがる…流石に舐めてたらやばいかもな…)
ダンテはアランの方を見上げため息をついた。
「来いよアラン…お前の神獣の力、もっと見せてみろ…!」
「…あぁ、行くぜ!」
アランは屋根から飛び降りるとダンテの前に立つ。
そして、ダンテの方へ顔を向けた時だった。
ダンテの後ろに倒れるエルザの目がゆっくりと開くのが見えた。
(エルザ…!?意識が戻ったのか…!!)
エルザはゆっくりと顔を上げると、アランの顔を見る。
(アラン…助かったんだ…!二人が上手くやってくれたんだね…)
エルザは安堵したのか、ニコッと笑顔を浮かべる。
そしてダンテの方を見てすぐに真顔に戻った。
(ダンテ…そうだ、ダンテ…!私が…奴を倒さないと…!!)
エルザは地面に手をつきゆっくりと体を起こす。
(イテテ…さっきの傷が大分痛むな…)
エルザはなんとか立ち上がると、ダンテの方をギロリと睨みつけた。その気配に気づきダンテは後ろへ振り返る。
「ほう、まだ動けたか…ジャカの生き残り…!」
「ダンテ…お前は私が倒す…!!」
「やれるもんならやってみろ、ま、その体じゃ何もできねぇだろうがよ!」
「うるさい!行くよ…!!」
エルザは先程同様、石を手に持つと思い切りダンテの方へ投げつける。
「爆破の印!!」
エルザがそう叫ぶと、石は爆発を起こし、ダンテは爆発に巻き込まれた。巻き上がる砂煙の中、アランは素早く動きエルザの方へ近づいていく。
「エルザ、意識が戻ったんだな…!」
「アラン、助かったんだね…!!」
「あぁ、リサとベルが助けてくれたよ。エルザも来てくれてありがとうな…」
「いいんだよ、仲間なんだから助けにくるのは当たり前!…それよりダンテ…どうやって倒す?」
「それなんだけど…エルザにはダンテに隙ができるように攻撃してほしい」
「隙?」
「あぁ、今なんでだか力が湧いてきて…ダンテの能力範囲内でも多少は動けるみたいなんだ。さっきそれで一撃は与えられたんだけど…」
「一撃…だからダンテの兜にヒビが入ってるんだ…!アラン、凄いね!!なんかオーラ纏ってるし!!」
「あぁ…エルザが隙を作ってくれたらすぐにダンテに近づいて攻撃する。…頼めるかな?」
「…本当は私が直接ダンテを倒したいけど…無理だって言うのは分かってる。だから、ダンテを倒すのはアランに任せるよ。私は全力でサポートするから!」
「エルザ…頼んだよ!一瞬隙が出来ればそれでいいから!」
「分かった、任せてよ!」
そんな事を話しているうちに煙が晴れていく。
煙の中でダンテは腕をクロスし、爆発を防いでいた。
「へっ、そんなショボい爆発は効かねぇぜ…!!」
「流石に効いてないか…アラン、行くよ!!」
「あぁ、頼むぞ、エルザ!!」
二人はニヤリと笑うと戦闘の体勢とった。
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「はぁはぁ…あれは…アランとエルザ!」
「二人でダンテと戦ってるみたいだ…」
「いっ…!」
図書館から出てきたリサは一息つくと、腹部を抑えてその場にしゃがみ込む。
「リサ!大丈夫?」
「さっきナックルに殴られた時に骨をやられたみたい…落ち着いたら痛みが…!」
「少し休もう…アラン達は戦ってる途中みたいだし様子見しながらさ…」
「…そうね、今から自分に回復の印使うからその間護衛よろしく…」
「あぁ、わかった」
二人は瓦礫の影に移動し、アラン達の様子を見つめていた。
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ジャカの村の出入り口。そこにカルム率いる青龍団の面々が集まっていた。
「よし、皆揃ったな…」
「カルムよ、この後どうする?」
ダンの問いに、カルムは少し考えこむ。
そしてすぐ口を開いた。
「とりあえず、どこか拠点にできる場所を探そう。この辺りなら廃村やら何やら沢山あるはずだからな。神獣の力をどうするかはその後考えればいいだろう」
「そうだな…とりあえず落ち着ける場所でしっかり回復してぇ」
「ダンがそんなにやられるなんて珍しいね…」
「まぁな…俺も想定外だ」
ダンはそう言うと、やれやれと頭を掻く。
「もうじき勇者団が来る。まずはここを離れるぞ」
カルムを先頭に、青龍団達を乗せた馬は平原を走り始めた。
続く。
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