第50話 エルザの過去
今から5年前…。
エルザはここ、ジャカの村で仲間たちと静かに暮らしていた。
「ヘナ、テラ、遊びに行こう!」
黒髪の少年、テラと茶髪の三つ編みの少女ヘナはエルザに続き村を駆けていく。
その日、エルザは二人の友達と村の外へと遊びに出て行った。
そして数時間後村に戻ると、村は跡形もなく破壊されていた。
「村が…私たちの村が…!!」
エルザ達は村の中を駆け抜けていく。
そしてエルザの家の前に辿り着いた時だった。
「ほぉ…まだ生き残りがいやがったか…」
そこにいたのは鎧を見に纏った男、ダンテだった。
「あ、あんたら誰だよ!この村に何した!!」
「この村に"あるもの"を取りに来たんだが…どうやら既に持ち出された後みてぇだな…。ちっ、無駄な時間と労力割いちまったぜ」
ダンテはふぅ、とため息を吐き首を横に振る。
そんな時、エルザの家の中から農具を持った男が飛び出して来た。
「エルザ、ヘナ、テラ!ここは私に任せてお前たちは逃げなさい!奴らは暗黒騎士団…極悪非道の犯罪者集団だ!!」
「あ、暗黒…騎士団…?」
「早く行きなさい!エルザ、父さんも必ず追いつく。その間、ヘナとテラを任せたぞ…!」
「………」
エルザ達は状況が掴めないまま、駆け足でその場を離れていく。
「へっ、これが親の愛ってもんか?おもしれぇ」
「ダンテ…!貴様らに"アレ"は渡さん!たとえこの命を失ってもな!!」
そう声を荒げると、男はダンテの方へ走っていく。
「ふん、そうかよ。じゃあここで死ね…!」
ダンテのそばに近づいた時、男の足が止まる。
「体が…!!」
「じゃあな、俺に立ち向かって来た勇気だけは認めてやるよ」
そう呟くと、ダンテは腰にかけた剣を抜き男の首にあてる。
「ダンテ…いずれ貴様らには相応の罰が下るだろう…!!」
「そうかよ…ま、どうでもいいぜ…!!」
ダンテは剣を思い切り横に振る。
斬られた男の頭は体と切り離され、ボトリと地面に落ちる。
そして体も、まるで糸の切れたマリオネットのようにその場に倒れた。
「父さん…?」
エルザは振り返り足を止める。
「エルザ、足を止めちゃダメだ!お前のお父さんが逃げろって言ってただろ!?」
テラは立ち止まるエルザの手を掴みそう声を上げる。
「そうだよ、早く逃げないと私たちまで…」
ヘナがそう言いかけた時だった。
「許さない…」
「エルザ…?」
「許さない…!絶対に…!!」
エルザは怒りに満ちた顔でダンテを睨みつける。
そんなエルザの目から、涙が零れ落ちた。
「エルザ、今は逃げるんだ!お前のお父さんの犠牲を無駄にしちゃ行けない!」
「そうだよ!エルザのお父さんはあなたを守るために犠牲になった…その気持ちを無駄にしちゃダメだよ!!」
テラとヘナはエルザにそう声をかける。
「………」
その声を聞き、エルザは黙って走り始めた。
「エルザ…」
「………」
二人はエルザの後を追いかけた。
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「エルザ、テラ、ヘナ!!」
村の出口付近に着いた時、瓦礫の影から声が聞こえて来る。
「そ、村長!無事だったんですね!」
三人は駆け足で村長の元へと駆け寄っていく。
「エルザ、テラ、ヘナ…この村はもうダメじゃ…村人のほとんどは奴ら暗黒騎士団に殺された…。勇者団にも連絡はしたが、もう間に合わんじゃろう…。お前たちは村から逃げて"城塞都市アルハリア"に向かうのじゃ…!そこならお前たちを匿ってくれる人間もおるじゃろう…」
「村長、村長も一緒に…!」
「ワシはもうダメじゃ…足を瓦礫で潰されとる…。テラ、お前にこれを託そう…」
そう言うと、村長は一冊の古びた本をテラへと手渡す。
「これは…?」
「一番のしっかり者のお前に重要な役を与える…村から出て時間が経ったら、この本を村の図書館へ戻してほしいのじゃ…」
「図書館へ…?」
「あぁ…奴らの狙いにはこの本も含まれておる…。一度この本を持ち出し、誰かが持ち去ったと思い込ませればまさかここに本が戻ってくるとはそうそう思わないじゃろう…。それに、"この本がジャカにある事がとても重要"なのじゃ…」
「この本には何が…?」
「…お主なら読めばある程度察しがつくじゃろう。しかし本の内容は他言無用じゃ…この本は"世界を動かしかねない恐ろしい物"じゃからな…!」
「世界を動かしかねない恐ろしい物…?」
「頼んだぞ…テラ」
「…分かりました、必ずこの村に本を戻しに来ます」
「それでよい…エルザ、ヘナ、テラ!どんな事があっても、決してあきらめてはいけない。諦めなければきっと幸せが訪れるはずじゃ…」
村長がそう言った時、どこからかズシン…ズシン…と重い足音が聞こえてくる。
「なんだ…あれ…!?」
村長の後ろを見て、三人は驚いた顔を浮かべる。
「おぉ、まだ生き残りが居ましたか…うーん、どうやら奴らの中に"ダンパ"とか言う男はいないらしい…ならばやってしまいなさい、タイタン!!」
瓦礫の向こうから現れたのは巨大な石の巨人とヒゲの男、ベントスだった。ベントスの声に反応し、タイタンは村長へと手を伸ばす。
「村長!!」
テラは村長の方へ駆け寄ろうとする。
「テラ!二人を連れて逃げなさい!!」
「でも…!村長!!」
「ワシはいい…!この村のこと、本のこと…お前たちに託したぞ…!!」
「ごちゃごちゃうるさいですね…タイタン」
「グォォォォ!!」
ベントスの声と同時に、タイタンは村長の体を持ち上げる。
そして、思い切り手に力を込めた。
「バキバキッ!!」
村に、無残な音が響き渡る。
目に涙を浮かべながら、三人は村を飛び出していった。
「小ネズミ達を逃しましたか…ま、いいでしょう。ガキなど生きていても死んでいても何も変わらないでしょうからね…」
ベントスはニヤリと不敵な笑みを浮かべ逃げていく三人の背中を見つめていた。
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「…テラ、村長と何話してたの?」
ヘナは涙を拭いながらテラに問いかけるを
「…この本を時間が経ったら村に戻しに来いって…言われて…」
「何の本なの…?」
「分からない…でも、凄く大事な本みたいだよ…」
「そっか…。ねぇ、これからどうしようか。家族も家も仲間も…全部無くなっちゃったね…」
星空を見上げ、ヘナはそう呟く。
「…とりあえず、城塞都市アルハリアに向かおう。そこで面倒見てくれる人を探すしかない」
「うん…そうだね…。エルザは…エルザはどうするの?」
ヘナは黙り込むエルザに声をかける。
するとエルザは顔を上げ、小さな声で返事をした。
「旅に出る…」
「え?」
「旅…?」
「うん、旅。私ね、一度ブラウンリバーの向こう、行ってみたかったんだ…だから、この機会に行ってみようかなって」
「ブラウンリバーの向こう…か…。あんまり人は多くないって聞いたけど、行ってみるのもありかもな…」
「エルザ、行っちゃうの…?」
「…うん、ブラウンリバーの向こうで修行して…もっともっと印術を使えるようになって…奴らに復讐する」
「奴ら…?暗黒騎士団にか?」
「うん…この手で…この手で絶対に奴らを捕まえる…!絶対に…!!」
エルザは星空を見上げギュッと拳を握る。
その言葉を聞き、テラとヘナは顔を見合わせた。
「…そっか、俺たちは止めはしないよ。ただし、絶対無理はしないこと。そして…いずれまた、ジャカの村に集合すること!これは守ってくれよ!」
そう言うと、テラはニコッと笑顔を浮かべる。
「うん…でも、無理は絶対ダメだよ!!」
それに続き、ヘナも声を上げる。
「テラ、ヘナ…うん、絶対無理はしない。そして、絶対、この村に戻ってくる!もっと強くなって…!!」
「あぁ、約束だ!」
三人は手を重ね合わせ、ニコリと笑みを浮かべた。
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(父さん…村長…テラ…ヘナ…みんな…)
エルザは過去の記憶を思い出し、涙をこぼす。
(そうだ…私はあの日誓ったんだ…暗黒騎士団を捕まえるって…ダンテ達に復讐するって…!)
真っ暗な意識の中、エルザはテラとヘナの顔を思い浮かべる。
(テラ、ヘナ…私が…必ず…ジャカの村を取り戻すよ…!!)
倒れていたエルザの目が、ゆっくりと開いた。
続く。
投稿は不定期で行います。




