第49話 炎と氷
「いくぞ」
カルムは地面に手を当てる。
すると、氷の柱がジェリドの方へ勢いよく伸び始めた。
「またそれかよ!」
ジェリドは後ろに下がり氷の柱を避ける。
そして前を見ると、カルムが氷の柱の上を走り目の前まで迫って来ていた。
「…っ!」
カルムが右手を後ろに下げると、右手を覆う氷がまるで剣のように鋭く形を変えていく。
そのままカルムはジェリドに向け右手の氷の剣を振り翳した。
「おっと!」
ジェリドはひらりと体を動かし、氷の剣を避ける。
それに合わせ、カルムは何度も氷の剣をジェリドに向け振っていく。しかし、ジェリドは身軽な動きでカルムの攻撃を全てかわしきった。
「…流石に動けるようだな」
そう呟くとカルムは後ろへ下がる。
そして右手の氷の剣をバラバラと崩し、元の手に戻した。
「へっ、そんな攻撃当たるかよ」
ジェリドはニヤリと笑みを浮かべそう答える。
「…ならこれならどうかな」
そう言うと、カルムは右手のひらを上へ向ける。
「………」
その様子をジェリドは黙ったまま見つめている。
「お前にはとっておきをくれてやる…感謝するんだな…!」
上に向けられたカルムの手のひらに、白い風が集まっていく。
風は次第に氷の塊を作り、氷の塊はどんどんと大きくなっていく。
「氷の塊…?何する気だ…?」
ジェリドは動きを止めたまま、どんどんと大きくなっていく氷の塊を見つめる。
気がつけば氷の塊はカルムの体よりも大きくなっていた。
「ジェリド、果たしてお前に止められるか?この巨大な氷塊を」
「…確かにでけぇ。そんなのくらったらひとたまりもないだろうよ。だが、受ける手段ならあるぜ」
「ほう、なら見せてみろ。俺とお前…炎と氷。どちらが強いか試してみよう」
「へっ、どうなったって知らねぇぜ…!」
ニヤリと笑うと、ジェリドもカルムと同じように手のひらを上へ向ける。すると、ジェリドの手のひらに燃え盛る炎がどんどんと集まり始めた。
「…どうやら似た技のようだな」
「らしいな…ま、比べるにはちょうどいいってもんだ」
ジェリドの手のひらの炎もどんどんと大きくなっていく。
そして、二人の掌の氷と炎はほとんど同じ大きさまで巨大化した。
「無限の氷…」
「無限の炎…」
「全てを凍らせ!!」
「全部燃やし尽くせ!!」
その声と同時に、二人は腕を振る。
すると、巨大な氷の塊と炎の塊は両者の手から放たれ、勢いよくぶつかり合った。その瞬間、辺りに凄まじい衝撃が走る。
二人はお互いにニヤリと笑みを浮かべ、ぶつかり合う氷と炎を見つめている。
「いけ、永久の氷塊!!!」
「全て燃やせ!!無限の炎!!!」
ぶつかり合った氷と炎は巨大な爆発を起こし、二人は爆発に巻き込まれた。
「ドォォォォォン!!!!」
ジャカの村に大きな爆発音が響き渡る。
そして、あたりは真っ白な煙に包まれた。
ーーーーーーーー
少し経ち、煙が晴れていく。
氷と炎がぶつかり合った場所は、爆発の衝撃でまるでクレーターのように大きな穴ができていた。
「…ぶはっ!!」
晴れて行く煙の中、先に動き出したのはジェリドだった。
「ふぅー、死ぬかと思ったぜ…」
ジェリドはフラフラと立ち上がると、服についた砂埃を払う。
そしてカルムの方へ目を向けた。
「カルムは…」
目を凝らして見ると、煙の中で動く人の影が見えた。
「…ちっ、どうやら引き分けみてぇだな」
ジェリドは残念そうに大きくため息をつきその場に座り込んだ。
「ふぅ…」
カルムも同じようにフラフラと立ち上がると、ジェリドの方へ目をやる。
「…ふん、殺し損ねたか」
そう呟くと、カルムはジェリドの方へと歩いて行く。
「どうやら今のところはどちらも同じ力のようだな…」
「あぁ、納得いかねぇがな。…まだやるか?」
ジェリドはニヤリと笑うとその場から勢いよく立ち上がる。
その時だった。
カルムの右手の甲に白い印が浮かび上がる。
白い印は眩く光を放っては消え、放っては消えと繰り返している。
「通話…何かあったか…?」
そう言うと、カルムは右手の甲の印に触れた。
「なんだ、何かあったか?」
『た、大変だ!!大変だよカルムさん!!』
「落ち着け、何があった?」
『そ、そっちに…ジャカの村に、勇者団が向かってる!!』
「何…?勇者団…?」
『あぁ、村から少し離れた所で見張してたんだけど、馬でジャカの村の方へ走って行く勇者団の姿が見えたんだ!』
「本当なのか?」
『あぁ間違いねぇ!勇者団のマントつけてたし、二番隊のレオンの姿もあった!』
「レオンだと…!?それはかなり厄介だな…分かった、青龍団の連中を連れてすぐに村を出る。ジャカの村の反対側の入り口で合流だ。いいな」
『りょ、了解!勇者団の連中はすぐそこまで来てる!なるべく急いだ方がいいぜ!!』
「分かった」
「………」
そこで通話は途切れた。
「なんだ?仲間からの連絡か?」
「ジェリド…名残惜しいがお前との決着はお預けだ」
「はぁ?何言ってやがる!俺はまだまだ納得してねぇぞ!!」
「またいずれお前との決着はつける。それまでに腕を上げておくんだな」
そう言うと、カルムはピーッ!と指笛を吹く。
すると、村の奥から白い馬がカルムの方へ走って来た。
「行くぞ!」
カルムは馬に乗ると、そのまま村の奥へと駆けて行ってしまった。
「あっ!おい!待ちやがれ!!」
ジェリドはそう叫ぶが、カルムはそのまま走り去ってしまった。
「ちっ、追いかけるか…?」
そう思った時、ジェリドはふらっと体を揺らし尻餅をつく。
「…今ので体力使い切っちまったな。追うのは無理か、くそ…!」
ジェリドは勢いよく地面を殴りつけた。
ーーーーーーーー
(ふぅ、さっきの技で体力をかなり使ったな…やりすぎたか…)
カルムは白馬に乗り大きく息を吐く。
「ダンとクジャナに連絡するか…」
カルムは右手の甲に浮かび上がった白い印に触れた。
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「ん?通話か…?」
座り込み傷を癒すダンは光る右手の甲の印に触れる。
「はいはい、こちらダン…」
『ダン、そっちは平気か?』
「あぁ、まぁな。結構酷くやられちまったけどさ」
『動けるか?』
「あぁ、動けるくらいには回復したぜ」
『なら今すぐジャカの村の反対側の入り口に来い』
「あぁ?何かあったのか?」
『勇者団がジャカの村に向かって来てるらしい。さっき見張番から連絡があった』
「勇者団…?何で勇者団が…」
『恐らくだが、ガベラ村の奴らが連絡でもしたんだろう。ここ最近は獣人族との戦争で国内に回す人材が不足してたらしくてな、対処せずにいたんだろうが…戦争に区切りでもついて余裕が出来たんだろう』
「なるほどね…分かった、すぐ向かう」
『あぁ、急げよ。クジャナには連絡しておく』
「了解。…あそうだ、ダンテ達には連絡しなくていいのか?」
『奴らは放っておけ、どちらにせよ暗黒騎士団の連中とは今回だけの関係だ。奴らはいずれ邪魔になる。ここで捕まってくれるならそれが最善だ』
「まぁそうだな…アランは?」
『流石に回収する時間は無いだろう、今回は諦めるしか無い。いずれまたチャンスは来る』
「ま、勇者団が来るなら流石のダンテでも守り切るのはきついだろ。奴らに"アランの力"を独り占めされるってことも多分無いだろうな」
『あぁ、レオンがいるという情報もあるしな』
「はー、レオンか…そりゃやばいね…」
『お前も急げよ、それじゃあ』
『……………』
そこで通話は途切れた。
「ふぅ、回復しといて良かったぜ。さ、とっととズラかるかなー…」
ダンは立ち上がりその場を離れようとする。
その時だった。
「んん…」
倒れていたハオが目を開いた。
「おっ、ハオ、起きたか」
ダンはニヤリと笑いハオの方を見る。
「ダン…まだ…立っていられたのか…」
「ちげーよ、回復したんだ。こっちも死にかけだったんだよ。…まさかお前が血龍神の舞を使えるとは驚いた。強くなったもんだぜ、少し合わないうちに」
「ダン…まだ…決着は…着いてない…ぞ!!」
「その体じゃ無理だろ。それに俺は今急いでんだ、お前みたいな死にかけに付き合ってる暇はない。…ま、お前が強くなったのは認めてやる。次会った時は今度こそどちらか死ぬまでやろう。そんじゃ、バイバーイ」
「あっ…!ま、まて…イテテ…!!」
ダンはニコリと笑い手を振ると、そのまま走り去ってしまった。
「くそ…また…僕の負けだ…やっぱり僕は…ダンを超えられないのか…!?」
ハオは涙を流し、地面に拳を叩きつけた。
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「…!」
クジャナの右手の甲が眩く光始める。
「通話…珍しいな、何かあったのかな…」
クジャナはロックスの方へ向かう足を止め自らの右手に触れる。
「はい、こちらクジャナ。どうしたの?」
『クジャナか?カルムだ。急ぎ連絡する、すぐに村の反対側の入り口に来てくれ。今すぐだ』
「今すぐ…?何かあったの?」
『どうやらこの村に勇者団が向かって来てるらしい。二番隊のレオンもいるそうだ。もし鉢合えばかなり厄介なことになる。その前にこの村を出るぞ』
「勇者団…それは厄介だね…。分かった、すぐに行くよ」
『あぁ、奴らはすぐそこまで来ているらしい。急げよ』
『ザザッ…サー…」
そこで通話は途切れた。
「…良かったね、君は見逃してあげるよ」
「はぁ…?どういう風の吹き回しだ…」
「勇者団が来てるみたいでね…時間が無いんだ。本当は最後までちゃんとやりたいけど…また今度、どこかで会ったらその時はしっかり仕留めてあげるよ。それじゃあね」
そう言うと、クジャナは村の奥へと走り去って行った。
「…なんなんだ?あいつは」
ロックスはため息をつき、痺れる体を休ませるためその場に座り込んだ。
続く。
投稿は不定期で行います。




