第45話 血龍神の舞
「行くぜ…ハオ!」
赤いオーラに包まれたダンはハオを睨みつける。
その瞬間、ダンはふとその場から姿を消した。
「なっ…!?」
あまりの速さに、ハオはダンを見失い辺りを見渡す。
(くそ…なんて速さだ…!)
ハオは全方位を警戒しながら目を動かしダンを探し続ける。
その時だった。
「ここだぜ、ハオ」
声が聞こえたのはハオの真後ろからだった。
「なっ、後ろ…!?」
ハオが振り返ると、そこにはニヤリと笑みを浮かべるダンの姿があった。
「さっきのお返しだ」
そう呟くとダンはハオの顔目がけ拳を放つ。
ハオはなんとか避けようとするが避けきれず、顔に思い切り拳がぶつかった。
「ハハハ!どんどん行くぜ!」
攻撃を受け耐性が崩れたところにさらに拳が飛んでくる。
ダンの拳は何度も何度もハオを殴りつけ、ハオの顔は赤い地に染まっていた。
「さっきまでの威勢はどうした?ハオよぉ!」
ふらふらとその場に立つハオに向け、ダンは両手のひらを向ける。
「衝龍波!」
龍の形をした衝撃波はハオの体を包み込む。
「ぐふぅ…!!」
あまりの衝撃にハオは血を吐き、そのまま後ろの木に叩きつけられた。
(なんて…威力…だ…。あんなの…もう一回受けたら…確実に死ぬな…。クソ…僕はやっぱり…ダンには勝てないのか…?)
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10年前…。
「やめろよ!!」
一人の少年、ダンは路地裏へ駆け込んでいく。
「おい、ダンが来やがったぞ!逃げろ!!」
ダンの姿を見るやいなや、路地裏にいた少年三人はその場から逃げ出していった。
「大丈夫か!?ハオ!!」
先程まで少年達がいた場所を見ると、傷だらけの少年がうずくまっていた。
「うぅ…兄ちゃん…」
「今病院に連れてってやるからな!」
ダンはハオを背負うと駆け足で病院へと向かい出した。
(僕は…僕はまた…何も出来ずにやられて…兄ちゃんに…)
何も出来なかった自分に悔しさを覚え、ハオは涙をこぼした。
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それから、ハオは何度もダンに助けられた。
ハオはその事をとても気にしていたが、ダンは全く気にしていなかったようだった。
「兄ちゃん…兄ちゃんはなんで毎回僕を助けてくれるの…?」
「そりゃあお前が弱いからさ。弱いやつは強いやつが守ってやらなきゃな!」
ダンはニコッと笑顔を浮かべそう言う。
その言葉は純粋で、悪意などこれっぽっちも無いと言う事はハオにも分かっていた。
しかし、その言葉はハオの心に深く突き刺さった。
(僕が弱いから…。弱いから毎回兄ちゃんに迷惑をかけてる…。弱いから…!)
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(そうだ…僕が弱いから…家族も失った…。父さんも母さんも、そして兄貴も…。全部僕が弱いから…!!)
木に寄りかかるハオの目から涙が溢れる。
(でも…もう何も失わないように…修行したじゃないか…!頑張って頑張って、強くなれるように…!兄貴を超えられるように…!!)
ハオはゆっくりと体を動かし、その場で立ち上がる。
「ほう…まだ立つか!」
その様子をダンは少し離れた場所から見つめていた。
「僕は…僕は…!ダンを…超える…!!強くなって…大切な物を守れるようになる…!!」
ハオは力を振り絞り体を動かす。
そして、顔の血を右手のひらに擦り付けた。
「…!」
それを見たダンの顔から笑みが消える。
ハオは勢いよく右手のひらに握った左手をぶつけた。
「血龍神の舞…!!」
そう言った瞬間、ハオの体に纏われている赤いオーラがさらに勢いを増していく。
「あれは…龍神の舞のその上…血龍神の舞…!!まさかハオが使えるとはな…!!」
ダンはどんどんと勢いを増していくハオのオーラを見て苦笑いを浮かべる。
「………」
勢いを増したオーラの中、ハオは白目を剥く。
どうやら既に意識は失われ、ダンを倒すという本能だけで動いているようだった。
「これが血龍神の舞…!とんでもねぇ力を得ちまったようだな…ハオ!!」
ダンがそう呟いた瞬間、ハオは先程のダンと同じように姿を消す。
そしてダンが気づいた時には、ハオは既にダンの目の前まで迫ってきていた。
「くっ…!!」
ハオはダンに向け赤いオーラに包まれた拳を放つ。
ダンは咄嗟に腕をクロスしガードするが、拳はダンの腕を砕きダンは後ろへと殴り飛ばされた。
「がはぁ…!!」
ダンはうつ伏せに倒れ込み血を吐き出す。
(両腕の骨を持ってかれたか…何つー威力…!!あれが本当にハオなのか…!?)
まるで悪魔のような顔を浮かべるハオを見て、ダンは少しではあるが恐怖心を抱いていた。
「………」
ハオはゆっくりとダンの方へ歩いてくる。
そしてダンの胸元を掴み、上に持ち上げた。
「衝龍波…」
ハオの右手から衝龍波が放たれる。
衝龍波はダンの腹を貫き、ダンはさらに血を吐きながら後ろへ倒れ込んだ。
「ぐはぁ…!!」
(まさか…ハオがここまで強くなるとは…驚いた…!)
朦朧とする意識の中、ダンはハオの方へ顔を向ける。
すると、突然ハオのオーラは消え去りハオはふらふらとよろめいてからその場に倒れ込んだ。
「あ…?体力を…使い果たしたのか…」
ハオはまるで眠るように目を閉じ、気絶してしまった。
「ふぅ…間一髪ってとこか…イテテ!!」
落ち着いたところで、全身の痛みがダンを襲う。
「と、とりあえず…休憩…しながら…回復しなきゃな…!」
ダンは木に寄りかかると、自分に向け癒の印を使い始めた。
倒れるハオを見つめ、ダンはニヤリと笑みをこぼした。
続く。
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