第42話 ダンとハオ
ロックスにクジャナを任せ、ジェリド達はジャカの村の中を走っていた。
「よし、一旦止まるぞ」
ジェリド達はその場で止まり近くに集まる。
「ここからはなるべく纏って行動する。第一目的はまずお前達の仲間の救出。そして、俺はカルムを見つけ次第戦うつもりだ。お前達は仲間を見つけたら村を出てガベラ村に戻っててくれ。…ここはかなり激しい戦場になるだろうからな」
ジェリドにそう言われ、3人はコクリと頷く。
「よし、それじゃあとりあえず村を回りながらまだ残ってそうな建物の中を探していくぞ。その間離れないようにな」
「はい!」
ジェリドは頷き村を歩き出す。
その時だった。ジェリドは目の前にきらりと光る糸のようなものに気がついた。
「…!これは…!おい!お前達!ちょっと待て…!!」
ジェリドがそう声を上げた時、すでにエルザが糸に触れてしまっていた。
「まずい…!」
ジェリドは素早くエルザの元に駆け寄りエルザを押し倒す。
「うわっ!?ちょっと!!」
その瞬間、半壊した建物の中から鋭いナイフが二本飛び出して来た。
「ナイフ!?」
目標を失ったナイフは反対側の建物の壁に当たり地面に落ちた。
「二人とも!」
リサとベルは2人の元に駆け寄っていく。
「ジェリド、今のは…?」
「おそらくトラップだ…。この建前の間に糸が張ってあった。それに触れた瞬間ナイフが飛び出す仕組みだったんだろうな…。くそ、トラップまであるとはな…」
「あ、あのー…」
ジェリドの下に押し倒されたエルザが声を上げる。
「は、恥ずかしいから…もういいかな?」
「おっとすまねぇ」
ジェリドはエルザに手を貸しエルザを引っ張り起こした。
「ふぅ…ありがと…。まさかトラップがあるなんて…」
「あぁ、俺も予想外だぜ…。だがこのトラップ…おそらくベガッジの野郎だな…」
「え?ベガッジ!?」
聞き覚えのある名前に、リサとエルザは顔を見合わせる。
「ん?ベガッジって誰だ?」
ベルは不思議そうな顔でリサに問いかける。
「そっか、あの時ベルはいなかったわね…。ベガッジっていうのは、傀儡職人の悪党よ。ミネラバって村で酷いことしてたやつなの…!」
「なんだ、お前達ベガッジのこと知ってるのか?」
「えぇ、ミネラバって村で一度…」
「そうか…。奴は傀儡職人ってだけじゃなく罠の名手でもあってな…なかなか巧妙な罠を仕掛けてきやがる。…ここから先、さらに慎重に行かないと行けねぇぜ…!」
「そうね…でもベガッジはなんでこんなところに罠を…?」
「たしかに…青龍団と関わりがあるのかな?」
「奴は暗黒騎士団とも深い繋がりがあってな…。奴がここにいるとなると本格的に暗黒騎士団と青龍団に関わりがあるかもしれねぇってことになるぞ…」
4人は前向くと、周囲を警戒しながら歩き始めた。
ーーーーーーー
拳がぶつかり合った瞬間、ダンはニヤリと笑みを浮かべる。
そして、2人は後ろに下がり体制を立て直した。
「ふん、なかなか動けるようになったみたいじゃねぇか…」
「当たり前だろ。僕はあの日からあんたを殺す事だけを思って必死に修行してきたんだからな…!」
「へー、そりゃご苦労なこって。ま、どちらにせよお前じゃ俺には勝てねぇよ。…それを今から教えてやるぜ」
「…やってみなきゃ分からないだろ。鍛え上げた龍神の舞…見せてやる…!!」
そう言うと、ハオは左掌に握った右手を合わせる。
すると、ハオの体が赤いオーラで包まれ始めた。
「ほう…見せてもらおうじゃないか。お前の龍神の舞を」
ダンはその場で戦闘の構えをとる。
「行くぞ!!」
ハオはその場から素早く動き、ダンの前へと移動した。そして、ダンに向け思い切り蹴りを放つ。
「おー、早い早い」
そう言いながらもダンは軽々とハオの蹴りを避ける。
「うるさい!!」
そこからハオは何度も掌底や蹴りを放って行く。
しかし、全ての攻撃は軽々と避けられてしまった。
「くそっ…!」
「おいおい、そんなもんか?そんなのんびりしてると…こっちからも攻撃しちゃうぜ!」
そう言った瞬間、ダンはハオの一瞬の隙を見つけ素早く蹴りを放った。
「ぐっ…!?」
ダンの蹴りはハオの腹部に直撃し、ハオは後ろへと蹴り飛ばされる。ハオはなんとか持ち堪え、倒れずにその場に止まった。
「はぁはぁ…」
(くそ…!僕の攻撃を全て軽々避けてくる…。しかも僕の隙を狙って攻撃を入れてくる余裕もある…。このままじゃ同じ事の繰り返しでやられる…道具も使って逆に奴の隙を狙わないと…!)
ハオは息を整えると、背中からナイフを3本取り出す。
「ほぉ…ナイフか。果たしてそんな物が意味をなすか?」
「…やってみなくちゃ分からないだろ」
ハオはダンを睨みつけると勢いよく走り出す。
そして、ダンに向けナイフを投げ飛ばした。
「ふん、お前の作戦…見せてもらうぜ」
ダンはあえてと言わんばかりの余裕な表情を浮かべ左側に体をそらしナイフを避ける。
そこに、ハオはさらにナイフを投げ込む。
ダンは体制を立て直し後ろにジャンプしナイフを避けた。
「はは!ナイフを投げてるだけじゃ何も始まらないぜ!」
ダンがそう声を上げた時だった。
「よく見てみな…!ただのナイフじゃないぞ…!!」
ハオにそう言われ、ダンはナイフの方に目をやる。
その瞬間、バンッ!!と大きな破裂音と共に、ナイフから眩い閃光が放たれた。
「な…!?これは閃光玉…!!」
あまりの眩しさに、ダンは目を背ける。
そして、少し体制を崩したその時だった。
「衝龍落とし!!」
ダンの真上からハオの声が聞こえてくる。
「上か…!?」
ダンは咄嗟に避けようとするが、体勢を立て直すのに少し時間がかかってしまった。
ハオはダンの真上でオーラを溜めた足を思い切り振り下ろす。
すると足から龍の形をしたオーラが勢いよく飛び出し、上を向くダンを勢いよく地面に叩きつけた。
「ぐふぅっ…!?」
オーラが直撃したダンは仰向けの状態で地面に叩きつけられ、ダンの周りの地面はまるでクレーターのように陥没した。
あまりの衝撃で辺りに砂煙が舞う。
「はぁ、はぁ…どうだ…?」
ハオは少し離れた場所に着地し砂煙の中へ目を向ける。
「…っ!?」
すると、砂煙の中で人影が動くのが見えた。
次の瞬間、顔が血まみれになったダンが砂煙の中から勢いよく飛び出してきた。
「へへへ…今のは効いたぜ…ハオ」
「くそ…しぶとい奴め…!」
(ハオの作戦…最初のナイフで体勢が崩れたところに閃光玉付きのナイフを投げ俺の目を確実にくらませる…。そして目をくらませ隙が出来たところを上から攻撃…。やっつけの作戦だったが引っ掛かっちまった…。少しはやるようだな…なら…)
ダンはニヤリと笑みを浮かべると、ハオと同じように左の掌に握った右手を合わせた。
「お前もなかなか実力を上げたようだな…。ならば見せてやる。俺の龍神の舞を…!!」
「…あぁ、見せてみな!」
ダンの周りにハオと同じ赤いオーラが纏われ始める。
二人は睨み合い、攻撃の姿勢をとった。
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ブランハーバー、第四支部拠点内。
「入るぜ、勇者団三番隊だ」
そう言うと、ガルドアは第四支部の支部長室に入る。
支部長室にいたのは、短い茶髪にちょび髭を生やした中年の男だった。
「…!?なぜ三番隊が…!!」
「一番隊のセマフさんからの命でな、今日からここは俺たち三番隊が管理させてもらうぜ。そんで…あんたには今日限りで勇者団を辞めてもらう」
「な、何を勝手に…!そんなことが…!!」
支部長がそう言いかけた時、ガルドアはバンッと机を叩く。
「…お前みてぇなクズはいらねぇって言ってんだよ。分かるか?分かるよな?…早く出ていけ、俺にこの場で殺されたくなきゃな」
突然の落ち着いたトーンに支部長は恐怖の顔を浮かべ、俯きながら部屋を出て行った。
「…ブフッ!あっはっは!!ちょっとキレたふりしただけで出てっちまったぜ!!こりゃ傑作だ!!よくあんな小心で裏切りなんて出来たもんだぜ!!」
怯えていた支部長の姿を見て、ガルドアは大きな声を上げ笑い転げる。
「ったく、性格悪いんだからガルドアさんは…」
三番隊の兵士達はやれやれと呆れた顔を浮かべ顔を振った。
続く。
投稿は不定期で行います。




