第39話 神獣の力
※ドクトールの設定を変更しました。
「………」
「……しろ」
遠くから誰かの声が聞こえてくる。
その声の主はどんどんと近づいて来て、アランの体をゆっくりと持ち上げる。
「でもよ、本当にこいつがお前の探してた紋章持ちなのか?」
「あぁ、間違いない。…今から分かる筈だ」
そんな会話を聞いているうち、アランはたったまま体を固定されたようだった。
重い瞼を何とか開き、アランは前を向く。
「ここは…」
アランのいた場所。
そこは、灰色の石壁に覆われた薄暗い地下のような場所だった。
蝋燭の灯りで何とか辺りは見えるものの、かなり暗く不気味な空間だった。
「お、カルム!起きたみたいだぜ」
「目が覚めたか」
「っ!?お前はカルム…!!ここはどこだ!!何するつもりだよ!!」
アランは体を動かそうとするが、うまく動かない。
ふと横を見ると、両手は十字架に固定されており頭の上には何かしらの機械のようなものが取り付けられていた。
「何だこれ…!?何で拘束されてんだ!?」
状況が掴めないまま、アランはカルムの方を見る。
「まずはお前の名前を聞こう。名前は?」
「………」
突然の問いかけに、アランは顔を背け黙り込む。
「名前はと聞いている」
「………」
再度問いかけられても、アランは黙ったまま何も答えない。
「ダン」
「はいよ」
カルムが名前を呼ぶと、アランの横に立っていた青いカンフー服を身につけた黒髪の糸目の男は思い切りアランの腹に蹴りを放つ。
「ぐあっ!?」
突然の蹴りにアランは驚き咳き込んだ。
「ゴホッゴホッ!何…すんだ!!」
「答えないからだよ。痛い目に遭いたくなきゃ答えな」
ダンはニヤリと不気味な笑顔でアランを睨みつける。
「…!!」
あまりの圧に、アランは顔を上げコクリとうなづいた。
「それでオーケー」
「それで、名前は?」
「アランだ」
「アラン…一応覚えておく。それで、なぜお前がここにいるかだが…今からお前の力を貰う」
「力を…貰う?」
「そう。お前の紋章…それはただの紋章ではなく"特別"なものだ。世界にたったの"六つ"しかない特別な…」
「世界に…六つ…?」
「そしてもう一つはここにある」
そう言うと、カルムは自分の手の甲をアランに見せる。
「お前も…その特別な紋章を…?一体特別な紋章って何なんだ!!」
「それはな…"神獣の力"だ」
「神獣の…力?」
「紋章の起源…"二百年前の戦争"の時"紋章を持つ者たちを束ね導いたとされるそれぞれの属性の王たち"…。その力を受け継いでいるものが持っている力…。それが"神獣の力"だ」
「二百年前の戦争…?王たちの力…?」
突然の壮大な話で、アランはカルムの話をあまり理解できなかった。しかし、カルムは話を続ける。
「この力を持つものは世界に"六人"。すなわち、各紋章の属性に一人ということだ。そしてこの能力を持つものは何かしらの条件を満たす事で"神獣"と呼ばれる"獣の様な姿"に変わり、最高の力を得られる。…お前には今ここで神獣になってもらう。そして、その力を頂く。俺が神獣になるために…!ベガッジ!」
カルムに呼ばれて歩いて来た男。
それは見覚えのある男だった。
「お前は…ベガッジ!?お前が何でここに…!!」
「ゲッヘッヘ!また会ったなアラン!ディオゲイン様がお前たちにやられてから俺はこの青龍団の一員として働いてるんだよ!!」
「青龍団の一員だって…?」
「"伝説の印術使い"と呼ばれる"ドクトール様"と働けるなんて最高だぜ…!ディオゲイン様には悪いがこっちの方が居心地いいしよ!ゲッヘッヘ!!」
「無駄話はそこまでだ。ベガッジ、スイッチを入れろ」
「はいはい、ったく手厳しいんだからよ…。さ、行くぜ!スイッチオンだ!!」
ベガッジはカルムの後ろにあった大きな機械のレバーを引く。
その瞬間だった。
アランの上にあった円盤状の機械から青白い光が出始め、アランの体に流れ込んでいく。
「っ!?うぁぁぁあ!!!?」
アランは突然の衝撃に声を上げる。
頭から体に流れてくるエネルギーがどんどんと体を熱く熱していく。
「それは暗黒騎士団の印術使いドクトールとそこのベガッジに作らせた機械でな…さまざまな生き物から"生体パワーを奪う印術"と、それを"強制的に流し込む印術"を両方使う事で神獣の力を引き出すことができる代物だ。そして、その力を奪うこともな」
「まぁ機械と言ってもドクトール様お得意の"設置型の印術"に俺がガワとギミックをつけただけの印術の派生型みたいなもんだがな!ゲッヘッヘ!!」
「…俺が試した時は神獣の力を発現させる事は出来なかったが、果たしてお前ならどうかな?」
カルム達が話している間も、アランの体にはエネルギーが流れ込んでくる。
(ぐぅ…!!体が熱い…!!このままじゃ…体が焼けて…死んじまう…!!!)
アランは体を拗らせ何とか熱さから逃れようとする。
その時だった。
アランの紋章、そして体が黄色く光り始める。
「グガァァァァア!!!!」
そしてアランは白目を剥き、まるで獣のような雄叫びを上げ始める。
「なぁカルム、これ大丈夫?」
「まぁ見ておけ」
「グガァァァァア!!グガガァァァァ!!!」
アランはさらに大きな雄叫びを上げる。
その時だった。
アランから、眩い光が放たれる。
「うぉ!?」
「これは…!!」
あまりの眩しさに、カルムとダンは目を背ける。
光が落ち着きアランの方を見ると、アランの顔はまるで獣のように恐ろしく、そして腰の辺りからは黄色い毛の生えた、ぐるりと巻いた悪魔のような尻尾が生えていた。
「尻尾生えたぞ!?」
「これが神獣…!噂には聞いてたが初めて見たな…。だがしかし、同じ空間にいるだけで感じるこの禍々しいエネルギー…。やはり直接神獣のエネルギーを頂くのが一番早そうだ…!」
「ゲッヘッヘ!これもドクトール様のおかげだなぁ!」
アランはグルルルル…と獣のような声を上げながらただひたすら下を向いている。
「ベガッジ、パワー吸収装置のスイッチを入れろ」
「はいよ!」
ベガッジは先ほどのレバーの横にあったレバーを同じように引く。
すると、今度は円盤状の機械に向かい青白いエネルギーがアランから流れ出し始める。
「グルァァァア!!グルァァァア!!!!」
アランは大声をあげガダガタと体を激しく揺らし始める。
その時だった。
アランは両手に力を込め始める。
「…今度こそヤバそうじゃないか?」
「その時は頼むぞ」
「え?俺!?」
「グルァァァア!!!!」
アランは勢いよく腕を動かし、手に繋がれていた鎖を思い切り引きちぎった。
「うわ!?本当に引きちぎっちゃったよ!!」
「ダン、頼んだ」
「はぁ、しょうがねぇなぁ…」
「グガァァァァア!!!」
アランは十字架から離れると、ギロリとダンの方を睨みつける。
「おー、こわー…」
そして、素早くダンの懐に潜り込んだ。
「はやっ!?」
アランは大きく振りかぶり、ダンの腹部に向け拳を放つ。
「守護の印!」
ダンは素早く守護の印を出し、アランの攻撃を防いだ。
しかし、とてつもない衝撃を受けたダンは後ろに飛ばされ壁にぶつかった。
「いってぇ…すごい威力だな…。しょうがない」
ダンはその場に立つと、右手を握り左の掌に合わせる。
「我がサイの国の武術…。龍神の舞、見せてやるよ」
ダンはニヤリと笑い力を込める。
すると、ダンの体はまるで炎に包まれているかのように赤いオーラに包まれ始める。
「衝龍波!!」
ダンが両手を前に出すと、まるで赤い龍のような衝撃波がアランの方へ向かっていく。
そして、一瞬のうちに衝撃波はアランにぶつかった。
「グルァァア!!!」
アランは体に強い衝撃を受け、後ろの壁にぶつかり倒れ込む。
すると、アランの体から光は消え尻尾も無くなってしまった。
「ふぅ…びっくりしたぜ…」
「お前に龍神の舞を使わせるとは…なかなかの力を待ってるみたいだな」
「なかなかの威圧だったぜ。久しぶりに驚いちまったよ…」
「ふん、面白くなりそうだ。ベガッジ、固定具の補強と修理を頼む。少し時間を置いてやり直す」
「はいよ…ったく人使いの荒い…」
(神獣の力…思っているよりも更に強力なものかもしれないな…。そして、この力があれば…)
カルムはニヤリと笑いアランを見つめていた。
続く。
投稿は不定期で行います。




