第36話 新たな仕事
リバーサイドタウンを出たアラン達は、ひたすら北を目指して歩き続けていた。
「もうそろそろ森に入るはずよ…ほら!」
リサが指さす方を見ると、そこには鬱蒼としげる森が広がっていた。
「あの森の中にガベラ村があるのか?」
「えぇ、この地図ではそうなってるわ」
「よし、それじゃあ森の中へ入ろう!」
アラン達は森の中へ続く道を進んでいった。
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「結構深い森だね…」
森の中は木々に覆われ、日中だと言うのに薄暗く少し不気味な雰囲気だった。
「そうだな…まだ昼間だってのに薄暗い…。本当にこの道であってんだよね?リサ」
ベルは少し不安そうにリサに聞く。
「えぇ、人工的に作られたような道もあるし…このまままっすぐであってると思うわ」
「ま、考えても仕方ない!とりあえず進めば大丈夫だろ!」
「全く、アランはポジティブだねぇ…」
エルザは呆れながら笑顔を浮かべた。
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「そろそろ着くはずよ…」
「ん…?あれ見ろよ!」
「あれは…村の門か?」
森を歩き始めて20分ほど経った頃、森の中の開けた空間に木製の古びた門が見えてきた。
「えーっと…あ!ガベラ村って書いてあるよ!」
「おっ!やっと着いたか!」
アラン達は駆け足で門の方へ近づいていく。
「へー…森の中にこんな広々とした村があったのか…」
門の奥は切り開かれ、広々とした空間が広がっていた。
その空間には木造の家がいくつも経っており、普通に人が生活しているようだった。
「とりあえず人を探しましょう!泊めてもらえるかどうか聞かないと…」
「そうだな…あっ、みんな!あそこに人がいるぞ!」
アランの指の先を見ると、そこには畑で作業をする老人の姿があった。
「あの人に話を聞いてみましょう!」
「あぁ!」
アラン達は老人のいる畑へと向かった。
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「あのー」
アランは畑で作業をしていた老人に声をかける。
「なっ!?お主はだれじゃ!?まさか…"青龍団"の手先か!?もうわしらは出すものなどないぞ!!」
老人はアランを見るや否や怯えたような表情を浮かべ後退り始めた。
「え?ちょ、ちょっと違います!俺たちは旅をしていて、この村に泊めていただけないかなーと…」
「た、旅の人か!?せ、青龍団じゃないんじゃな!?」
「ち、違います!その青…なんちゃらじゃありません!」
「そ、そうか…すまんかった、旅のお方。気分を悪くさせてしまったの…」
「い、いいえ!全然平気です…」
「お詫びと言ってはなんじゃが、わしの家を使ってくれ!この村はよく旅人が来られるのでな…大きな家を宿代わりにお貸ししておるのじゃ。どうか疑ったことを許してくれ…」
老人はそう言うと深々と頭を下げる。
「そ、そんな頭なんて下げないで下さい…!それよりありがとうございます!お言葉に甘えて泊まらさせていただきます!」
「あぁ、是非泊まって行って下され!」
「村長!」
会話が聞こえたのか、村の奥から若い女性が近づいてくる。
女性は短い黒髪で、茶色い半袖にピチッとした黒いズボンを身につけていた。
「あなた達旅のお方ね!家に案内するわ!…あ、私はこの村に住んでるカナ!よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします。俺はアランです!で、赤い髪がリサで、青い髪がエルザ…緑髪がベル、その横の娘がレオナです。…多いですけど平気ですか?」
「えぇ、大丈夫よ!男部屋と女部屋も用意できるわ。さ、とりあえず着いてきて!家に案内するわ!」
カナに導かれ、アラン達は村の奥へ向かった。
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「ここが旅人さんに泊まってもらってる村長の家よ!ま、村長の家とは言ってるけど、ほとんど宿みたいなもんだけどね」
連れられてきた場所にあったのは2階建ての大きな木造の建物だった。
「うわぁ、結構でかいな…」
「本当にお宿って感じです…」
「さ、中へどうぞ!」
カナに誘導され、アラン達は建物の中に入った。
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「さ、ここが男部屋、こっちが女部屋!泊まってる間は好きに使っていいから!」
「あ、ありがとうございます!」
「いいのよ!私たちが好きでやってる事だから!」
「あ、そうだ!カナさん、少し話を聞いてもいいですか?」
「ん?話?いいけど…」
アラン達は村長の家のエントランスにあったテーブルに座り、話を始めた。
「あの…さっき村長さんに話しかけたら青…青…」
「青龍団でしょ!」
「あ、そうそう!青龍団っていうのに間違えられたんですけど…青龍団って一体なんなんですか?」
「…本当は旅人さんに話すような事じゃないんだけど、気になるなら教えてあげるわ。青龍団っていうのはね、ここら辺一帯をナワバリにしてる盗賊集団よ」
「盗賊集団…?」
「えぇ、そう。青い龍の描かれたローブを身に纏っているから青龍団って呼ばれてるの」
「青龍団か…聞いたことはないな…。それで、なんで村長さんはあんなに怯えて?」
「…奴らに何度も襲われてるからよ」
「え!?」
「この村が…ですか?」
「そう。奴らは定期的にナワバリの村を襲っては物を盗んでいく…。抵抗すれば力づくでもね」
「力づくで…なんて最低な奴らなんだ…!」
「この村も何度も襲われてね…もう殆どの金品は奪われてしまった。最近は来てないけど…次に来た時はもう出す物もない。その時が来たらこの村は終わりね」
「この村が終わり?」
「えぇ、これは聞いた噂だけど…奴ら青龍団は物を盗むだけ盗んで用が無くなれば村を凍らせてしまう…」
「村を凍らせる!?」
「えぇ、青龍団のリーダー…カルムって男なんだけど、氷を操る能力者なの。その氷の能力で、用のなくなった村を氷漬けにしてるって噂」
「くっ…青龍団…許せないな…!」
「ねぇ、アラン。ここは私たちの出番じゃない?」
リサはアランの耳元に顔を寄せるとニコッと笑みを浮かべそう囁く。
「そうだな…。カナさん、話は分かりました!青龍団退治、俺たちが引き受けます!」
「え?」
突然の提案に、カナは驚きの表情を浮かべる。
「で、でも…この村に関係ない旅人さんにそんなこと頼むなんて…」
「いいんです!実は俺たち、勇者団に入団するために旅をしてて…。困ってる人がいると、放っておけないんです!」
「勇者団に…そうだったの…!でも、青龍団は能力者だらけの集団…。あまりにも危険すぎるわ!」
「大丈夫です!私たち、今までもいろんな奴らと戦ってきましたから!」
「………」
カナは少し考え込む。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「旅人さんにこんなこと頼んでしまって申し訳ないけど…お願いします…!この村を青龍団から守るのを手伝って!」
改めてそう言うと、カナは頭を下げる。
「はい、もちろんです!な、みんな!」
「あぁ、困ってる人はを助けられないようじゃあ勇者団にはなれないしな!」
「ま、いつも通りって感じだね」
「私も、何かできる事があれば手伝います…!」
「そう言う事みたいです、カナさん。私たち、困ってる人をそのままにしておけない性格で…。お節介かもしれないですけど…」
「いいえ、そんな事ないわよ!むしろ、とてもありがたいわ!そんな事言ってくれる人達なんて初めてだから…。村のみんなにあなた達のこと伝えておくわ!どうか青龍団が来たら…よろしくお願いします!それまでの宿と食事はこっちで持つから!」
「え?いいんですか!?」
「当たり前よ!さ、私は村の人達に伝えてくるわ!皆さんはどうぞくつろいでいて!この村なかなかいい所だから!」
そう言うと、カナは村長の家を出て行った。
「…流れで引き受けちゃったけど、大丈夫か?みんな」
「ま、青龍団の話題が出た時点でこうなるなって思ってたし…」
「うん、俺もなんとなくそんな気がした」
「優しいですからね、アランさんは」
「ははは…みんな察しのいい事で…」
「さぁ、また一仕事始まるわよ!それまでにしっかり休んどかないと!」
「そうだな!」
こうして、アラン達は新たな依頼を受けるのだった。
これが、大きな戦いの始まりになるとは知らずに…。
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"城塞都市アルハリア・勇者団本拠地内"
「…ということで、ガルドア率いる三番隊、君たちに第四支部の代わりをやってもらうことになった。…戦争途中で大変だろうが、駐留隊の立て直しが終わるまでどうかよろしく頼む」
「任せてくれよ、セマフさん。あんたの頼みじゃ断れねぇからな!はっはっは!!」
顎に無精髭を生やした長髪で大柄の男は大きな笑い声をあげる。
「あ、ガルドア!ついでにブラウンハーバーの金持ち共の調査もやってくれないか?あいつら…というか、あの街全体が奴隷を容認してるみたいでさ…」
「奴隷を?…分かった。調査もやっといてやるよ。そんじゃな、クリス」
髭の男は軽く手を振ると、建物を出て行った。
「…暗黒騎士団の手が勇者団内部まで伸びているとは驚いた。そろそろ暗黒騎士団の方も手を打たないとまずい事になりそうだな」
「えぇ…。獣人族との戦争も早く片をつけて暗黒騎士団の方へ手を回さないと…ですね」
「この暗黒騎士団の暗躍が何か大きな災厄の前触れでなければいいのだが…」
セマフと呼ばれる男は、窓の外を眺めながら大きくため息をついた。
続く。
投稿は不定期で行います。




